ようやくラトヴィア城につきました★
何日かの箱馬車の旅の後、俺たちはついにラトヴィア家の居城についた。
エリヤナが馬車から抜け出した後、俺も凝り固まった腰を叩きながら、箱の中からひょいっと大地に飛び降りた。
すっと視線を上げると、目の前の石橋の先がラトヴィア城の大門につづいている。視線を上にあげる。
なんとも、独特な形をしたふるい石造りの城が空をバックにそそりたつ。
血塗りの”赤色城”と揶揄されるだけの事はある。
赤石の城は、太陽の陽を浴びて濃淡に輝いている。中央のひと際高い四角い建物を囲むようにいくつもの円柱の塔がまわりに伸びている。
この城はもともとこの地の先住民族の根城だったそうだ。そこにラトヴィア家の先祖が訪れて、先住民族を追い出した末、この城を奪い取ったらしい。
エリヤナは俺を先導するように、先を歩き始めた。俺も続く。つい言葉が出た。
「なんとも、妙な形をしている城だな」
「ええ。この城はあとから何度もなんども増築を繰り返しているので、いびつなのです」
「へぇ、なるほどね」
俺がふと橋の向こうを見たときに人の姿が目に入った。
薄茶のケープローブを羽織った男たちが数人。一人は大馬に乗っている。いや、まて、あの姿は見たことがある。
間違いない。”あいつ”だ。エリヤナを追いかけていた宮廷魔術騎士団。
俺は慌ててエリヤナの背中に身を隠して、小さく声をかける。
「お、おいエリヤナ。あそこにいるのはお前を追っかけてきた宮廷魔術騎士団員だろ? 大丈夫なのか?」
「私が無事戻ってきたのですから、何の問題もないと思います」
「お前……ノリが軽すぎる。へたすりゃ罰せられるぞ」
「大丈夫です、見ていてください」
エリヤナはそういうとひるむことなく男たちの前に立った。
そして、男たちに話かける。
「先についていたのですね、ありがとうございます。”おかげさまで”無事、我が家にたどり着くことができました」
男たちは顔を見合わせた後、そのうちの一人がバツが悪そうな顔で、答える。
「ご無事で何よりです。副隊長が城内で、ラトヴィア卿と共におまちです」
多分、声の感じからして俺が嘘をついちゃった奴だ。俺はすっとうつむいて視線を外した。
ああ、気まずい。
エリヤナは男たちの視線を振り切るように肩をいからせて先に進んでいった。
俺はエリヤナを盾にしながら、うつむきがちにそこそと後をついていった。
少し進んだところで、ちらっと後ろを盗み見た。
男たちはこちらをじっと見つめていた。俺は慌てて顔を前に向けなおした。




