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解呪
寝台に寝ていた亡骸はトトの薄手の白いドレスを着せられたせいか少し窮屈そうに見えた。
俺は『呪鎮のタリスマン』を使った儀式を行い、うつしみの呪法”を解いた。
ほどなく、その亡骸、いや、ココナの母ちゃんである、マキアナ・フロートはゆっくりとその目を開いた。
悲しみを内に秘めたような、そのまなざしは、本当にココナにそっくりだった。
見下ろす俺の顔を見てすべてを悟ったのか、マキアナは悲しげな表情をみせてこういった。
「あの子は……いってしまったのね……」
俺はマキアナの目を見つめて、小さくうなずいた。
マキアナはゆっくりと体をおこし、寝台に座り視線をあげる。
そして、部屋のすみっこを見つめる。
そこには、壁際の椅子に座ったまま、目を閉じて動かなくなってしまったココナがいる。
マキアナは何も言わずに、ゆっくりと寝台から降りる。
そして裸足のまま、ココナの亡骸の前に歩み寄ると、ひざまずいた。
動かなくなったココナの小さなを手を両手で包み込んで、頬につけた。
「……まだ……あの子のぬくもりが」
マキアナはココナの手を頬にあてたまま、いつまでもじっとしていた。