表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

53/450

いのちを奪い返してやれ★


右端の男を震える手でなんとか指さすココナ。

俺はもう一度、念を押す。



「……あいつで間違いないか?」

「うん……右の頬にばってんの傷があった。ハッキリと、思い出したよ」



俺は右端の男を睨みつける。なるほど確かに。こけた頬に、赤黒い十字の傷が浮き上がっている。

男はその手に青白く輝く大剣を握りしめ、こちらに射抜くような視線を向けている。




「いいか、ココナ。他の二人はベルアミとトトが片づける。お前はあの一番右の頬傷(ほおきず)の男だけを見つめて、頬傷(ほおきず)の男だけを倒すことに集中しろ」

「うん」

「自分の命を奪った奴だ。容赦するなよ。防御は任せろ、アイツの攻撃は俺が全部、払い落とす」



俺は自分の腰にかけていた銀の短剣をココナの両手に握らせた。

ココナは震える両の手でそれをしっかりと握った。

俺は小さく檄を飛ばす。




「自分の命を奪ったやつを。自分を殺した奴を、殺し返してやれ」

「うん」

「お前の罪は、俺が背負ってやる」

「うん」





スキル『呪具耐性』の発動だ。


俺は呪具拝借(じゅぐはいしゃく)呪詞(のりと)を唱えた。




―――――――――



天地万物(てんちばんぶつ) 空海側転(くうかいそってん) 


天則(てんそく)()りて 我汝(われなんじ)(おきて)(したがう)


御身(おみ)(けつ)をやとひて (ゆる)したまえ




―――――――――






呪具:まもりの双剣 ある僧兵の血肉が混ざった両刃の短剣、対となる二本



効果:大地の防御 相手の攻撃をほぼすべて地面に払い落とす




俺は身構え、ココナと共に右の男に向かって走り出す。男は瞬時にこちらの動きに気が付いたようだ。

男は輝く大剣の魔光器を両の手で握りしめると鬼のような気迫をまとい向かい来る。

距離は一気に縮まる。



次の瞬間、男の大剣は俺の右肩めがけて振りぬかれた。




挿絵(By みてみん)




俺は、まもりの双剣を十字に交え、相手の剣先を包むように受け止める。

するりと(つば)まで滑らせ、鍔元(つばもと)で素早く手をひねり、男の剣の軌道を変えてそのまま大地に逃がした。

男の大剣は地面にドスッと突き刺さる。

俺はありったけの声で叫ぶ。



「ココナ、いまだ!」



男が怯んだ表情で顔を上げた瞬間、そのがらあきの喉に、ココナが手にしていた短剣がズブリとめり込んだ。

俺はまもりの双剣から、ぱっと手を放しココナの手を上から包み込む。

そしてココナと共に男の喉笛を真横にかっ切った。


血しぶきが乾いた空気に飛び散る。

男は目を見開いたまま、断末魔の声をあげるもなく、一気にその場に崩れおちた。

そして、動かなくなった。


勝負はいつも、一瞬で決まる。



俺にの手に包み込まれた、ココナの小さな手は小刻みに震えていた。

俺はその震えを抑え込むように、さらにぐっとココナの手を締め付けた。

しだいに、ココナの手の震えは小さくなり、そして消え去った。




「ココナ。お前は自分の恐怖と向き合って、そして打ち勝ったんだ」

「うん」




あとは、ココナの呪いを解くだけだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ