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狂戦士の呪い

そういうと女は思いつめたような顔をしながら右手で剣の柄をそっと握った。

途端、剣から真っ赤に燃えるような禍々しいオーラが放たれる。

それは一瞬で剣自体を包み込んだ。


女の顔がこちらを向く。

さっきまで青かったはずの瞳は血のように真っ赤に揺れている。

女の表情が崩れた。彼女の右手だけが剣と呼応するように異様に上下に動き出す。

女は慌てて左手で自分の右手を掴んだ。




「な、なぜ反応するの!? 女性はいないはず? だめ! あなた様! 逃げて! きゃあ!!」



言い終わるより早く、女は部屋の隅からテーブルの上に真横に飛び跳ねて着地した。人の動きとは到底思えない不自然さ。

見上げたメガネ越しの彼女の能力値が一気に上昇していく。そして一部の数値が極端にさがる。



力 144

                  攻撃力 589 属性 鉄


生命力 10

              魔力 10

防御 10

                      知力 10

抵抗 10


器用さ 169

                素早さ 205

            運 1



俺が動けないままいると、あっという間に俺の右胸にその鉄剣をひと突き。



「……え、」



俺は呆気にとられて、身動きできないままに心臓を貫かれた。

かとおもったが、切っ先は俺の右胸のスレスレでとまっている。


いつの間にか部屋の中に鎧姿の大男が入りこみ、赤ローブの女の後ろから覆いかぶさるようにして彼女の手をがっしりとつかんでいた。


鎧男は女の右手から無理やり剣をひきはがすと、彼女を背中から抱え込みテーブルからゆっくりと降りた。女はすでに気を失ったようでぐったりとしている。

そのときキャンデイの金切り声が胸元から響く。



「キー! ちょっと! 今アタシこの女に殺されかけたわ!」



キャンディが黒い耳を揺らして、俺の胸ポケットから這い出て俺の右肩までよじ登る。

肩でぴょんぴょんと飛び跳ねて、怒りにまかせてわめき散らす。



「やいやい! どういうつもりよ! このアマ!」



俺は慌ててキャンディをたしなめる。




「おい、おちつけキャンディ」

「落ち着いてられるかってのよ! あんたもあんたよ、今殺されかけたのよ!」

「大丈夫だ……たぶん彼女が狙ったのは……」




その先を言いかけて、俺はぐっと口をつぐむ。

女のさっきの言葉から、おそらく彼女が狙ったのはキャンディ(たぶんオンナ?)()()だ。

俺がキャンデイの大きな耳を指先で優しくなでると、途端におとなしくなる。



「あら~❤……いい❤……感じ……」

「ほれほれ、気持ちいいだろ」



コイツの弱点は耳。

その時、俺が視線を感じてふと前を見ると、護衛らしき鎧男が口をぽかんと開けてキャンディをまじまじと見つめていた。何度も瞬きを繰り返し立ちすくんでいる。


赤ローブの女は椅子に座り込みぐったりとしている。

俺は男に向かってやさしく呟いた。



「と、とにかく……彼女が目を覚ますまで待とうかな」



鎧男は伏し目がちにうなずいた。


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