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死霊の紋章師はちょいエロイんです★


俺たちは、亡骸(なきがら)を担架にのせて山道を急いだ。




けもの道を踏み分けほどなく小屋に到着すると、ひとまず小屋の横に回りこみ木陰(こかげ)のしたに担架をおろす。


担架から手を離した男の子は微動だにせず、白い顔をして押しだまり、ただ亡骸をぼんやりと眺めている。

石像のようにピクリとも動かない。



その時、なんとなく。

俺の視線は男の子の耳もとに吸い寄せられた。

形に違和感。



(妙に耳の上がとがっているな。今までよく見なかったから気が付かなかったが……)



俺はちらりと亡骸の女性のほうの耳も確認するが、別段気になるほどに尖ってはいない。

それに、その顔立ちからもエルフ族の特徴は見受けられない。



もしかすると、この男の子はエルフ族とまではいかないが、エルフと人間の混血なのかもしれない。

四分の一(クォーター)エルフ、くらいか。

顔立ちは完全に人間のものに見えるし。



俺は、下手に刺激しないようゆっくりとはなしかける。




「正直、お前の母ちゃんの事は気の毒だ。だが亡骸をずっとここには保管できない。近くの村の教会に頼んで埋葬(まいそう)してもらうか?」

「……母さんを、こんな見知らぬ土地で埋葬するだなんて……そんなのいやだ」

「……あんまりおっさんを困らせないでくれよ」

「母さんは故郷の地にかえらせてあげたいんだ!」



男の子は鋭い眼差しできっとこちらを睨みつける。こわばった頬に朱がさす。優しくするのもここまでだ、悪いが俺の堪忍袋はとっても小さい。



「いいか、俺はお前の希望を聞いてるんじゃない。実際にどうするかきいてるんだ。故郷にかえしたいってんなら今から担架で運んで故郷とやらへ戻るか? 無理だろ?」

「でも……」



その時、俺の右胸ポケットから勢いよくキャンデイが飛び出した。

そして俺の足元に降り立ってこちらを見上げる。




「ちょっと! なんとかしてあげなよ! このくそおやじ」

「お前まで何いってんだ?」

「かわいそうじゃないのさ!」

「同情なんて誰だってできる。いつまでも子供のわがままにつきあってられるかよ」



キャンディは猛り狂って飛び跳ねる。



「こどものわがままくらい聞いてあげなさいよ!」

「なんだと?」





その時、俺たちの会話を遮るように、男の子が静かに言った。




「……母さんを永遠(とわ)なる祖国の海に……アラビカの海に(かえ)してあげたいんだ……」




どこかただならぬ雰囲気。

俺とキャンディはふと顔を見合わせて黙る。なんだか俺たちのくだらない言い合いをしちゃいけない雰囲気。おっさんでもそれくらいの空気は読める。


男の子は足元で眠る母親の顔を見下ろして、一滴だけ、涙を落とした。



「……泣かれてもなぁ」



その時、俺の頭のすみに、ふと、ある女の顔が浮かんだ。

(じゃ)の道は(へび)か。

俺が思い出したのは”死霊の紋章師”トト。

死霊魔術を扱えるうそつきで、ちょいエロな女。


あいつはこういう物事の扱いに慣れている。

多分俺以上に。










俺たちは小屋で簡単な食事を済ませてから”死霊の紋章師”トトの屋敷を訪ねる事にした。


俺の住む小屋から山を下りきると、ふもとに小さな村がある。

その村はずれにある巨大な屋敷に一人で住んでいる謎の美女。

かつてはどこぞの令嬢で貴族の婚約者までいたという噂を漏れ聞く事もあるのだが、嘘か誠か定かではない。


トトの奴は表向きは、占い師として商売している。

表立って”死霊の紋章師”なんていうとどういう扱いをされるかわからないのだ。


トトの占いの相手は、特に近隣の富豪商人ども。

ま、俺と同じで金はとれるところからがっぽりとるのがアイツのモットー。


俺たちはトトの屋敷に辿り着く。


そして、扉中央にかかっている銀色のベルを揺らす。

ほどなくすると、扉が後ろにぎぃとあいた。隙間からトトがすいっと顔を出す。




挿絵(By みてみん)




俺の顔を見るなり、扉を全開にして飛び出してきた。

甘ったるい声で話す。




「あらぁ~、久しぶり、ウルちゃん!」





トトはそういうと俺の右腕に絡みついてきた。

俺の頬に鼻先を寄せる。まるでニオイを嗅ぐようにクンクンと。



(イヌかこいつは)



トトは両手を俺の腕に巻き付け胸を押し当てる。

トトが着る薄手のローブ一枚を隔ててあの感触が俺の腕に。


そう、こいつは何を隠そう、正真正銘の巨乳ちゃんなのだ。

俺はしばらくそのやわい感触を堪能するため腕に全ての神経を集中させた。

あ、やばい。

もう一か所のほうに全ての血が集中しそうだ。


俺がバッと手を放すとトトはくすっと笑って俺の後ろにいる男の子に目をやった。

トロンとした目つきで、分厚い唇をゆらしながら話す。




「やだ、ウルちゃん、ちょっと見ない間にこんな大きな子こしらえちゃって。わたしってものがありながら」

「そんなわけないだろ、どうして俺にこんなでかいガキがいるんだ」

「やだ、違うの、残念ね」



トトはクスクスと笑いながらくるりと背を向けて俺たちを中に招き入れた。



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