表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

317/450

呪いの魔術の授業⑥ 3種類の傀儡人形、どれがいいやら


魔術訓練場の中央で、俺はポープ先生と向き合った。

俺の足元には、今日の為に準備してきた、うさぎのぬいぐるみがチョコンと座っている。

いまからこの小さなぬいぐるみに”傀儡人形(パペットドール)”の魔術をかける。

そして俺の複製(コピー)をつくりあげる。


ポープ先生は俺の足元のぬいぐるみをながめながら腕を組んだ。



「さて、さて、ウルや。傀儡人形(パペットドール)の種類についてじゃが……大きく分けて3種類ある。昨日教えたところじゃが、覚えておるかな?」

「え? あ、はい。ええっと……一つは、命令を待つ奴、二つ目は自分で考える奴、あと三つめは、その中間の奴、その三種類でしたっけ」



ポープ先生の大きなため息。



「はぁ……なんじゃい、その適当な説明は。そんな返答ではだめじゃ。もう一度聞く、3種類それぞれの、こまかな特徴を詳しくのべてみよ」

「はい……ええっと、3種類ですよね……」




俺は、昨日授業の時に、自分でまとめたメモを思い返す。





~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




傀儡人形の種類はおおまかに3種類ある。


    

①命令を待つ奴。


他律型(たりつがた) = 術者とのシンクロ率85~99%



 文字通りの操り人形。

 自分で行動することは一切ない。

 動作の一つ一つに術者の指示が必要となる。


 用途:隠密行動をする必要がある場合に使われる。

    偵察、斥候兵としても使われる。






②自分で考える奴。


自立型(じりつがた) =  術者とのシンクロ率20~35%



 判断能力を持ちあわせている人形。

 大まかな命令や役割をあたえ自分で行動させる。

 

 用途:護衛や道案内

    戦闘の最前線部隊。






③自分で考える、かつ最終判断は命令に従う奴。


合律型(ごうりつがた) = 術者とのシンクロ率65~80%



 思考を持ち、なおかつ術者の最終判断を待つ人形。

 ただし、前もって指示を与えておく必要がある。

 製作の難易度が一番高いものとなる。


用途:術者から地理的に遠く離れる時

   不確定要素が多い作戦の時




※これらの3つを状況に応じて使いわけること!



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~









俺はなんとか思い出して、一通りの説明をした。

ポープ先生の顔がほころんだ。




「なんじゃ、できるではないか。最初っからそれくらいの説明をせんかい」

「はい……すみません」

「まあいいじゃろう。それでは、今回は他律型の傀儡人形(パペットドール)をつくってもらう。お前風の言い方にすると、命令を待つ奴、じゃな」

「は、はい」




俺は手元の羊皮紙に黒い墨のついた指先で自分の名と生まれた日を書き込む。

その他にも、思いつく限り俺の性質を書き込んでいく。

俺は魔力を込めて、素早く指を動かした。


あらかた書き込んだ後、自分の髪を一本抜く。

そして古代文字のならんだ羊皮紙の中に、自分の髪の毛をそっとはさみ、丁寧に折りたたんだ。

その四角い紙切れを口元にあて、ふっと息をふきかけ、生命を注ぎ込む。


最後、ひざまずいて、その四角い紙切れをぬいぐるみに重ねぐっと押し付けた。

俺はそのまま目を閉じる。突如として世界は闇に包まれる。


その時、すぐそこにいるポープ先生の声が暗闇のむこうから響き渡ってくる。




「……ウル。呪詞(ノリト)(呪文)を唱える時は、息継ぎなしじゃぞ。腹の下に意識を集中し、一心不乱に、素早く、三回。少しでも息を乱せば、魔術の効果は著しく低下するぞい……」

「はい」

「……指で呪印を作るときは角度や形を決して間違えるでないぞ。正確さと律動(リズム)が重要じゃぞい」

「はい」

「……唱えた後傀儡術(くぐつじゅつ)で生み出す人物を目の前にありありと思い浮かべよ。今回の場合はお前自身じゃが、手を抜くなよ。想像力がものを言うぞい」

「はい」




俺は口をすぼめてゆっくりと胸いっぱいに乾いた空気を吸い込んだ。ぐっとからだの奥からふくらむ感じ。そしてひといきに、三度唱えた。





……



無心に一息で唱える。

手を置いていた、ぬいぐるみが動きだす気配。指先に鼓動を感じる。




「……いでよ、分身(ガシ・ワモーベ)




俺はパッと立ち上がり一歩後ろに飛びのく。

目を開いた先。


そこには、うさぎのぬいぐるみはもうおらず、もう一人の俺が立っていた。



傀儡人形(パペットドール)としてたった今生み出された複製(コピー)の俺が、そこにつったっている。

どうにも妙な気分だ。

なにせ、自分と全く同じ姿かたちをした人物が目の前にいるのだ。

どこか不安にさせられる。



目の前にいる俺の傀儡人形(パペットドール)は微動だにせず、虚ろな目のまま。

そいつは、まるで命令を待つように立ち尽くしている。


俺は伝える。



「右手を挙げろ」




すると、そいつはふらりと右手を挙げた。

傀儡術、”傀儡人形(パペットドール)”成功だ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ