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第十章 エピローグ




朝霧が足元から立ち込める、そんな肌寒い朝。


ここに足を運ぶのは十数年ぶりだ。

砂の国、ダールムール南端にある、デンデルーズの砦跡(とりであと)


その一番奥、廃墟のかたすみ。

そこに、ひっそりと立ち尽くす、ある少女の石像がある。長い剣をその手にかかげて。

俺はゆっくりとその石像を見上げた。




「よう……ひさしぶりだな、クレタ。その剣で俺の首をはねるはずだったのにな」



クレタはあの時(・・・)のまま。時間が止まっている。

あの時、俺を殺すという彼女の目的はかなわず、その身に石になる呪いがかけられた。

あの時、首をはねられるはずだった俺は生き延び、今もこうして年を重ねている。




「……お前さんは相変わらずだな。俺はというと今年も年をとったぜ。立派なおっさんになっちまった。今、お前さんの為に、俺の連れが、花を摘みにいってくれている。ちょうどお前さんと同じくらいの、年頃の娘だ。あの子もまた抗いようのない運命をその身に背負っているんだ。なんとなくお前さんに会わせたくなっちまってよ……」




その時遠くから俺を呼ぶ声が聞こえた。

俺の連れ、リラの声。俺は軽く返事をかえした。リラの足音がこだまする。少しずつ近づいてくる。

クレタに捧げる花束を、その手にかかげて。




「クレタ、何度かお前さんに会いに来たが。今まで一度も花を供えるなんてことをしたことがなかった。わりぃな……気が利かなくて」




俺は目を閉じうつむいた。そして最後の言葉を告げた。




「……クレタ、長い旅は今日で終わりだ。ゆっくり休んでくれ……」













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