ステインバード商人団の拠点
風はつめたく、月の空はぼんやりと薄暗い。
所々のたいまつ以外は城下町全体が眠っている。
時々、火を高くにかかげた見回りの近衛兵が道を横切るくらいで人影はない。
夕餉の匂いがアチコチから。
静まり返った風景を眼下におさめつつ、俺は屋根の上からランカたちを見失わないようつけていく。
あの屋敷を出た後、ランカたちはまず街の中央、こんもりとした丘の上にあるルルコット城へ入っていった。
俺はしばらく距離をとり衛兵がうろつく城門を見張る。
ほどなく城から出てきたときは、ランカ一人きりになっていた。
おそらくリゼは外出ができないようこの強固な城のどこかに連れていかれたのであろう。
ランカは城から街へ戻る。
奴はそのまま街の東側にある大きな邸宅に入り込んだ。
おそらくここがステインバード商人団の拠点。
俺は通りに降り立つと、足を忍ばせて壁に囲まれた邸宅を一周する。
分厚く高い石壁に囲まれた豪華な要塞。
一体いくつの窓があるのか。
明かりの漏れている部屋の方が少ないようにも感じるが。
「……でっけぇ屋敷だな。まるで城だぜ。ステインバード商人団ってのは随分と羽振りがいいようだ」
俺は石壁にちかより見上げる。
この『血塗りの革靴』を履いていれば、この程度の壁ならば簡単に飛び越えられる高さだが、中の警備がどうなっているのかは見当がつかない。
「さて、どうしたもんか……」