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俺のお師匠、呪いの紋章師テマラ

俺は階段をのぼりきり左右を見渡す。


瀟洒な赤い絨毯が足元一面に広がる2階のホールは両側にどこまでも続いている。いくつもの扉が奥まで並ぶ。


俺は思わず悪態をついた。



「……ったく、どこの部屋にいけっつーんだよ」



キャンディが胸ポケットから体をだして、右のホールを腕で指しながら言った。




「あそこに白い布が落ちてるわ」


俺が目を凝らすとたしかに。ある扉の前に白い女の下着がはらりと落ちているのがみえた。


女の下着が目印とか、いかにもあの爺さんらしい。


俺はその扉の前に進むと、ノックしようと手を上げた。少し考えてやめた。どうせ返事をしないからだ。


俺は勢いよく扉を開く。



「お師匠、失礼しますよ」



見渡した中は書斎。だというのに、何だこのむせかえるような甘ったるいニオイは。


見るとテマラは右奥のソファにどっかとすわり、ワイン瓶を右手にかかげてグビグビ飲んでいた。


ぶはっと言いながら瓶の先から口を外すと、こちらを睨みつけた。




「なんでぇ。しらける奴だ。お前の顔を見ると酔いがさめちまう」


「そりゃどうも」


「いったい何の用だ?」


「……あのねぇ、自分でよんどいて何を言ってるんです?」


「よんだ、だぁ? オレがいつお前なんか呼んだんだよ」


「ああああ、もういいです。もうすぐ呪具オークションでしょ?」


「はぁ? そうだっけか?」




らちが明かない。俺は書斎をツカツカと進み、テマラの真ん前のソファに腰かけた。


瞬間、ぶっと噴き出した。股の間に子豚がいるのかと思った。まる見えなんすけど、恥部がまるみえなんすけど。


しかも両のふとももと、ソファに押し付けられてあそこが子豚みたいになってるんすけど。


俺は視線を微妙に横にそらして話す。



「お師匠、ちょっと隠してもらえます?」


「んあ? なにをだ?」




俺は股間を指さす。


テマラはすっと視線を下に落として、もう一度俺を見る。



「だから、なにをだ?」


「はぁ、もういいです。それより」



俺はさっき知った衝撃の事実を確認する。




「お師匠、庭にいるのは本当にお師匠の子供なんですか?」


「おお、会ったのか。かわいい奴だろ」


「かわいいかどうかは知りませんけど、お師匠、いつ結婚したんですか?」


「は? どうしてオレが結婚せにゃならんのだ」


「いや、だから子供が……」




言いかけて俺は唇をかんだ。


し、しまった。俺としたことが、何を普通の事を言ってるんだ。 


この爺さんにこんな普通の事を期待してしまうなんて。久しぶりだから忘れてたわ。この人がそんな普通の事にこだわるはずがないと。


ま、とにかくさっき会った庭師がテマラの子供だという事は間違いなさそうだ。


でもさっきの男の顔からするとまだ20歳前後という感じだったな。


この爺さんが今たぶん60歳前後だろうから、遅くにできた子供なのか。


俺は話題を変える。



「ま、子供の事は置いといて、呪具オークションですよ、今回はどこで開催されるん……」



さっきまで起きていたはずのテマラは目を閉じて大きないびきをかいていた。あのなぁ。


両手で大事そうにワイン瓶をかかえて、あそこ丸出し。ぐがぁ、ぐがぁと眠る姿は”男の欲望”そのものだった。


俺はため息をついて、首を上げて周囲を見回す。書斎に毛布など置いてあるはずもないか。


俺は立ち上がり、あしを忍ばせて部屋から出た。


いくつかの部屋を回り、寝室からふかふかの毛布を書斎に持ち込むと、ソファで眠るテマラのからだにかぶせた。



「ちっ、こんな格好でねたら、風邪ひくだろうがよ……ったく」




テマラは大口を開けて気持ちよさそうにねている。上下に肩を動かし深い呼吸をしていた。

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