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もうそんな季節です★




ここからあ新たなお話第5章です!!



それでは!!




俺は呪いの紋章師、ウル・べリントン。


もとべリントン家という貴族の身ながら、今はわけあって山小屋で独り身生活を満喫している。


ああ、ひとりって素晴らしい。好きな時に起きて、好きな時に飯食って、好きな時に寝て。好きな時にむふふな事して。


仕事はそこそこに、食うに困らない毎日。




しかし、俺の悠々自適な毎日を打ち破る出来事が起きた。


今日の俺は朝っぱらから硬い椅子の箱馬車に揺られている。ガタガタ揺れる車内。さっきから尻が痛くてしかたがないんだが。


いまにも崩壊しそうな安もんの箱馬車。建付けの悪そうな天井、さっきからギィギィと妙な音を立てている。いつ吹き飛んで空が見えるかと心配しているが、意外と持ちこたえている。


そのうち車輪が外れてどこかに飛んでいくんじゃなかろうかというくらい、ガツンガツンと下から突き上げられる。これが拷問以外のなんだというのか。


そんな状況を耐え忍んで、もうお昼前になる頃だろうか。


俺は横の小窓から外を見た。後ろに流れていく木立の風景はさっきと何ら代わり映えしない。


俺は窓から視線を戻した。


これから向かうのは俺のお師匠さん、呪いの紋章師テマラの別荘だ。俺は呼び出しを食らった。


この時期の要件といえば決まっている。恒例の、恒例の、です。


呪具の闇市”呪具オークション”の出席に決まっている。これから何日かあのテマラの爺さんと一緒に過ごすとか地獄以外のなにものでもねぇ。


ああああ、ため息が止まらない。と同時に、悔しいけれどロマンチックが止まらない。


胸ポケットのキャンディがこちらを不思議そうに見上げる。





「どうしたのよ、さっきから黙っちゃって。そんなに会いたくない人なの?」


「あたぼーよ。くっくっく、お前も会えばわかる。かくごしておけぇ、ふはははは!」


「でも、アンタのお師匠さんなんでしょ?」


「はぁ~……師匠と弟子というより、ご主人と奴隷だな」


「へぇ、ずいぶんと、心温まる間柄だこと」


「あの爺さんはまじでやばいからな。右手をひとひねりするだけで相手の心臓をとめちまう」


「ま、アタシは心臓が無いからへいきね♪」


「けっ、勝手にいってろ」



俺の思いとは関係なく無情にも馬車は停まる。馭者のつきましたよという声が死刑宣告のように俺の耳に届いた。


俺は最後にもうひとつため息をついて腰を上げると、扉を開けて地に降り立った。


ふいっと目の前を見上げる。



挿絵(By みてみん)


そこには周囲に木々を従えた石造りの巨大な別荘が顔をみせている。四角く整った建物、薄いクリーム色の外壁、出窓の数は無数にある。


ここに一人で住んでるってんだから、それだけでもテマラのいかれ具合がわかるわな。キャンディが耳を揺らして声を上げる。




「ひゃあ! こんな森の奥に立派なお屋敷ね! アタシ、こういうのスキよ!」


「おめー、ここに一人で暮らせるか?」


「は?」


「貴族の屋敷を金にモノを言わせて買い取ったらしいからな」



その時、屋敷のどこかから楽し気な女たちの笑い声が聞こえてきた。


またか。娼婦をたんまり屋敷に招いていやがる。いったいいくつだったっけあの爺さんは。


俺はぐっと心に力を入れて、屋敷の庭園に入り込んだ。



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