修道戦士キーマンの死★
次の日。キーマンの死を朝一番で伝えてきたのはアプルだった。
アプルは白い顔で口元をおさえている。俺はアプルに少し休むように言ってから現場に向かった。
キーマンの死体が見つかったという街はずれの森の入り口は騒然としていた。
野次馬なのか何なのか、人だかりができている。
どうも教会の関係者が多いようだ。街の人たちにまざり祭服を着た人物が何人も行き来している。
胸元のポケットからキャンディが顔を出す。
「なんだか、騒がしいわね……目が覚めちゃった」
「どうやら、これ以上近寄れそうにないな」
「あれ? ほらあの人、この前の」
キャンディは腕を振り回して人だかりの少し離れた木立をさした。
俺が顔を向けると、修道士の格好をした背の高い男がひとり。木陰で神妙な顔をして突っ立っている。
あれはたしか、俺の護衛についていた修道戦士の一人だったはず。名前は知らない。
男は青い顔をして唇をかむと振り返り足早に歩き出した。
何だか男の妙な反応に、俺は気になり後をつけた。
男は街へは向かわずに、小道をすすみさらにしげみの中へ中へと進んでいく。
不意に男の進む先に人影。俺は慌てて脇道に身を潜めて、見つからないように回り込んで近寄る。
修道戦士が数名あつまって何やら小さな声で話している。俺はかがみながらさらに近寄り奴らから死角になっている木の裏に回り込んで息を潜める。
男たちの声がかすかに聞こえる。
「キーマンのやろう、ついにやられやがったぜ」
「ちっ、今度はおれたちじゃねーのか?」
「大人しく盗賊やってりゃよかったんだ、キーマンのやろうが聖職者になりゃ女にもてて、いい暮らしができるなんて言いやがるから」
「まったくだぜ、あんな黒騎士につけ狙われる羽目になるとは勘弁してほしいぜ」
俺は目を閉じて耳に神経をあつめる。男たちはひそひそと話を続ける。
「どうする? もう逃げちまうか?」
「だな。おれは別に修道戦士の身分なんてどうでもいい。信仰心なんて全くないしな」
「教会に金をはらって死罪を免れたってのに。キーマンみたいに殺されちゃもともこもねえぜ」
「はっきり言って、お似合いの死にざまだぜ。あいつは女ばかりを殺しまわってた殺人鬼だぜ、まさに天罰だよ、けっけっけ」
この会話があの小綺麗な顔した修道戦士たちの口から出ているとは。
おそらく、こいつら全員、聖職を金で買った犯罪者どもだ。教会の腐敗とはこういう事か。だが待てよ、こうなってくるとあの黒騎士の行為の見方が、変わってくるぞ。
単に害をなすだけの存在ではないのかもしれない。
こいつらから何か聞きだしてみるか。