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邪神転生ガール  作者: megajoy
31/32

転31 〈邪神〉だけど、聖女になる。

こっそり“聖女”タグつけようとしましたが、タグ数限度超えるらしくダメでした(^ω^;)

あ、ありのまま……起こったままのことを話すぜ!


『私が〈邪神〉の転生体であることをナイショにしようとしていたら、

最初から名前まで完全に把握されていた』!

催眠術なんてチャチなもんじゃねえ……、もっと恐ろしい(以下略)。


はわわ、どういうこと? なんで?

なんで、名前と〈邪神〉自称までバレてるのん!?

こわっ! 〈聖導庁〉の〈巫女教皇ハイエロファンテス〉、こわっ!


どうしよう、どうしましょう。

〈聖導庁〉のボスを、敵に回すような真似はやめとこ、って、

密かに方針を決めたトコだったのに──────!?


内心、パニクりかけながら、ヒメカをチラリと見やる。

ヒメカもまた、真顔になっており、緊張している様子だった。


うごご、それって、今の、私の〈邪神〉バレ状況、

相当にピンチってこと……!?


いや待て、まだあわてるような時間じゃない。

『なんか勝手に〈邪神〉自称してる中二病な女の子』って、

思われてるだけかもしれない。


……無理かな? それは。

ううっ、〈聖導庁〉ボス、どこまでわかってるのぅ~!?


私がそう冷や汗をかきまくっていると、トム爺ちゃんは、

ほっほっほっ、と、愉快げに笑い声をあげた。


「まァ~、そんな警戒せんでもいいよぉ~。別に、取って喰ったりは

せんからね。むしろ、あゆらお嬢ちゃんの、今後の助けになるために、

わしは、ここにつかわされたのよ」


トム爺ちゃんの言葉に、あやうく、はへ?、と、

間抜けな声を出しそうになる。


〈聖導庁〉────邪悪な存在&異端者絶対殲滅するMENで

構成されてる組織が、〈邪神〉を名乗ってる私を、助ける?

いったい、どういうことなんだぜ……?


「そのへん、順を追って話すから、まあ、聞きなさいな。……ここだけの

話なんだがね、我らが〈巫女教皇ハイエロファンテス〉、

マリグレーテ・マルターニャ・ダルタニアス様は、

そこな小さいお嬢ちゃんのように、〈予知〉能力者でもあるんだわ」


「えっ」


トム爺ちゃんに言われて、思わず、ゆりちゃんのほうに目を向けてしまう。


ゆりちゃんは、ヒメカと手をつないで、しっかり立っているが、

お目々がもう、とろんとなってきていた。

四歳児だもんなあ、深夜の外出はもう、お疲れMAX状態であろう。


私のアレコレに起因するらしいお話をさっさと片付けて、

早く、休ませてあげないと。


「その、マリグレーテ様の〈予知〉で、私のこと、名前からなにから、

わかってた、ってことなんですね」


話をスキップして、結論を早く言ってもらうため、

トム爺ちゃんに、そう直で確認してみる。


「そ~そ~。そんで、真夜中近く、あの海沿いの道路を、

『夢遊病者のように歩きなさい』って、指示を受けたのね。

それで、あゆらお嬢ちゃんに会えるから、ってねぇ~。

いやー、まさか、あんな形の出会いだとは、びっくりよ。

こっちは、詳しい説明、受けとらんかったからねぇ。

心臓が止まるかと思うたよ」


マリグレーテ様とやらの〈予知〉とはいえ、説明ナシの命令で、

道路の真ん中歩いてたのかよ!

あっぶないなあ~、もぉ~っ……!


そのひとの〈予知〉が、どれだけの実現率か知らないけど、普通にこぇえよ!


まあ、現実に、私たちは〈予知〉どおりに、

出会ってしまっているわけだけれど─────。

私は、意を決して、トム爺ちゃんに、核心的なことをたずねる。


「………それで、私と会って、どうしろ、って言われたんですか?」


「うん、それさね─────あゆらお嬢ちゃんが、どんな子か、

ちゃんと見るように、って言われたわけ」


「───はあ……」


なんだその、ふわっ、とした命令は。

首をかしげ気味になってる私に、トム爺ちゃんは、言葉を続けてくる。


「で、あゆらお嬢ちゃんが、良い子そうだったら、

自分が〈大至聖女メガロ・パナギア〉の称号を授けることにする、

ってぇことを伝えなさい、と。そう言われたのよねぇ~。

うん、わしが見た感じ、良い子そうだし。あゆらお嬢ちゃんが

了承してくれるなら、今から、〈大至聖女メガロ・パナギア〉になってもらいます」


「えっ」


トム爺ちゃんが、またぞろ、凄いことを、サラッと言った。


大至聖女メガロ・パナギア〉て。

〈邪神〉知識から、〈至聖女パナギア〉というのは、

いわゆる〈聖母〉のように尊い、女性の聖人に与えられる

最高位の称号であるとわかる。


けれど、〈大至聖女メガロ・パナギア〉なんて称号は、〈邪神〉知識には、存在していない。


「本来、〈大至聖女メガロ・パナギア〉なんて称号、ありゃせんのだがねぇ~。

地球人類すべての命を救う、なんて偉業の達成者を讃えるとなると、

至聖女パナギア〉より、もう一段、くらいの高いの作らんといかん、

そういう判断をされたわけ。まあ、そういうわけだからね、ひとつ、

受け取って頂戴ちょうだいな」


あめちゃんもらっときなさい、くらいノリで、トム爺ちゃんは、

私にニカッと笑顔を向けてくる。


は? “地球人類すべての命を救う偉業”? なんの話です?

身に覚えがなさ過ぎて、新手の詐欺かと疑っちゃうね。


「い、いや、私、そんなこと──────」


してない、と、言おうとして、ふと、昨夜のことが、思い出された。


『どうか、地球の人類を滅ぼすのは、思いとどまってください……………!!!』


“んーええよ~、オッケ~”


…………………………してた。

地球人類すべての命、救ってたわ。


クトゥルフ本体ママに土下座して、現行人類の存続を、

お願いしたんだった。


えぇ……いやでもソレ、ヒドい自作自演マッチポンプ、ってゆーか──────。

愛しのヒメカと、大切な家族や友達らを、大事に想っての、

ついでのことだった、ってゆ~か………。


なんだか凄そげな称号を貰うような“偉業”かと言われると、

疑問符つけちゃうでしょ、ソレ。


「まあまあ、あゆらお嬢ちゃん。謙遜とかは、せんでええから。

わしゃ、詳しくは知らされとらんから、わからんけどね。

お嬢ちゃんが地球人類を救ったのは、間違いないことなんじゃないかね?」


「えっと────事実か、そうじゃないか、で言えば、事実ですけど………」


言葉を詰まらせていた私に、トム爺ちゃんが確認的な問いかけを

してきたので、端的な答を返す。


私の返答に、うんうん、と満面の笑みでうなずいてみせるトム爺ちゃん。


「そんじゃ、遠慮なく、称号を貰っといて頂戴ちょうだいよ。

でないと、わし、マリグレーテ様から、怒られちゃうのよねぇ~」


えぇ……そんな理由~?(困惑)


トム爺ちゃんが〈巫女教皇ハイエロファンテス〉様から怒られるのはともかく、

おいそれと、〈大至聖女メガロ・パナギア〉の称号をいただくわけには

イカンでしょ。まずもって、ズルしてる感じがして、

そんな大層な称号もらったら、罪悪感で死んじゃいそう。


「お、お待ちください、大師父グランド・エルダー! 下賤げせんな〈魔法少女〉、

しかも、見習い程度の小娘に、〈至聖女パナギア〉を超える称号を与えるなどとっ!

正気の沙汰とは思えません! どうか、思い直しをっ……!」


私がトム爺ちゃんの申し出に困っていると、“失意体前屈しついたいぜんくつ”して

固まっていた宮内が、横からしゃしゃってきた。

そんな宮内を、トム爺ちゃんは笑顔を消して、冷たい目で見る。


「破門された人間が、〈聖導庁〉のすることに、どうこう口出しできると

思っとるんかい、お前さんは。しかも、“正気の沙汰とは思えん”と言うたか?

そりゃ、我らの〈巫女教皇ハイエロファンテス〉への愚弄ぐろうにもなるぞい。

そのあたり、理解して口をいとるんかい? んん~?」


「う……い、いえ、それは─────」


トム爺ちゃんの静かな問いに、宮内はたじろいで、何も言えなくなったモヨウ。


「今の自分の立場すら、理解できとらんようだから、これ以上、なにを言うても

無駄と思っとるが。……わしが、貴様に対して、わずかも怒りを覚えておらん、

などと、勘違いするでないぞ。〈総統司教グランド・ビショップ〉なんて肩書きを

背負しょっておらんかったら、〈破門状〉なんぞ取るまでなく、即刻、

八つ裂きにしとったからの」


あくまで淡々と、トム爺ちゃんは、静かに語り、最後に、

冷たい視線で宮内を射抜いた。


はたで聞いてても、その静かな声に込められた“本気マジな殺意”に、

ちょっぴりビビってしまう。

さすが〈総統司教グランド・ビショップ〉、目の前にうずくまってるインチキ元〈司教ビショップ〉とは、

貫禄かんろくが違うわ。


トム爺ちゃんに、言葉でわからせられた宮内は、今度こそ完全に

打ちのめされて、再び失意体前屈しついたいぜんくつ状態へと崩れ落ちた。

しかも今度は、その体勢から、頭から地面に倒れ伏してしまう。


倒れこんだその顔を見れば、宮内は、口から泡を吹いて、

気絶してしまったようだった。


……トム爺ちゃんは、気にした風もなく、私を見て、笑いかけてくる。


「さて、いらんチャチャが入ってしもうたが、あゆらお嬢ちゃん。

大至聖女メガロ・パナギア〉の称号をあげるのはねぇ、まァ~、取引みたいなもの

でもあってねぇ~。『お互いに、Win-Winな関係になりましょう』っていう、

マリグレーテ様からの、申し出なのよね」


その笑顔には、宮内に向けていた殺意は、パッ、と消し去られていた。

その落差が、逆にこぇえですよ。(震え)


とはいえ、そんな思いを口に出すわけにもいかず、

トム爺ちゃんの言ったことに、反応しておくのだった。


「取引、って、どういうことです……?」


「うん、ぶっちゃけるとねぇ~、あゆらお嬢ちゃんとは敵対したくないから、

上位概念としてたてまつるんで、仲良くしてくださいな、っていう、

お願いみたいなものなんだわ。───あゆらお嬢ちゃんに喧嘩売るのは、

損、って、このへんをざっと見渡すだけで、丸わかりだからねぇ~」


トム爺ちゃんは、私が生み出した氷結地獄コキュートスな周囲の現状を

眺めながら、そう苦笑する。


「あゆらお嬢ちゃんも、〈聖導庁〉を向こうに回して、

チャンチャンバラバラするつもりは、なかろう?」


冗談めかした言い方ながら、トム爺ちゃんは、真意を見定めるように、

私の目を覗きこんできた。

こっちも別段、〈聖導庁〉に思うところはないので、普通にその目を

見返して、素直にうなずいておく。


「……ないですよ、それは」


ヒメカや、私の大切なひとたちに害を与えない限りは、まあ、

私から滅ぼしに行くとか、そういうことはない。


それに、〈聖導庁〉って、〈旧神の印章(エルダー・サイン)〉みたいな、

対〈邪神〉聖遺物、いっぱい持ってそうだしなあ~。

そんなトコに、進んで戦争フッかけようとか、ありえないよね、

常識的に考えて(JK)


「うんうん、そいつは、重畳ちょうじょう……〈大至聖女メガロ・パナギア〉の

称号は、いわば、あゆらお嬢ちゃんとの、友好条約のあかしなんさね。

後々《あとあと》のことを考えたら、この称号を送っておいたほうが、

お嬢ちゃんのためにもなるしの」


「後々《あとあと》のこと?」


「世間的に、あゆらお嬢ちゃんのことを、おおっぴらに触れて回るような

ことはせんけども。いずれ、出鱈目でたらめに強い〈魔法少女〉の存在は、嫌が応にも、

魔法業界で噂になるだろうからねぇ~。だけどもよ? それが、〈聖導庁〉の

はくの付いた称号持ちの〈魔法少女〉だったなら、下手にお嬢ちゃん本人に

近づこう、なんて真似をするやからは、グッと減る、とは思わんかい?」


なるほど……〈聖導庁〉が、魔法業界トラブルのセイフティー・ネットに

なってくれる、ということか。


「それに、〈大至聖女メガロ・パナギア〉の肩書きがあれば、今後、〈聖導庁〉は、

大抵のことには、あゆらお嬢ちゃんのために、力を尽くすようになると思うよぉ~?

“力を貸す”じゃなくて、“力を尽くす”っちゅーところが、ミソなのよ。

いいよぉ~、権力は。自分の胸先三寸で、いろいろと、てのひらの上で

転がせるようになるからねぇ~」


────コラ! 〈総統司教グランド・ビショップ〉!

たとえ冗談でも、偉い聖職者は、そんなこと言っちゃダメでしょ!


そうトム爺ちゃんに、ツッコミを入れたいとこだけど、

実際に口にしたのは、別のことであった。


「でも、それって、タダじゃないんでしょう? 〈聖導庁〉の仕事とか、任務とか、

大至聖女メガロ・パナギア〉として、こなさなきゃならなくなるとか、

そういうことじゃないんですか?」


私にばっかり利益メリットがあるとか、そんなウマい話、あるわけない。

そんなデカい釣りに、この私が釣られクマー!


もといもとい、美味おいしい話には、絶対に裏があるもの。

悲しいけどコレ、戦争なのよねぇ~!


私が超有名なアニメ台詞で、内心身構えていると、トム爺ちゃんは、

軽く手を振って、笑い声を上げてきた。


「いんやいんや、そんな、回りくどい、ケチなことはせんよぉ~。

……〈聖導庁〉、というか、〈巫女教皇ハイエロファンテス〉マリグレーテ様はね、本当に、

あゆらお嬢ちゃんに感謝しとるの。どんな経緯があろうと、

人類を救ってくれたことに、の。〈大至聖女メガロ・パナギア〉という、称号と権力の授与は、

決して表沙汰にされることのない、あゆらお嬢ちゃんへの、褒賞でもあるのよ」


ええー本当にござるか~?

トム爺ちゃんの説明を聞いても、一般庶民の私は、疑い深く、

検証したい心持ちになってしまうんだぜ。


「……大師父グランド・エルダー、今のお言葉は、嘘ではないですが、別側面の、

本当のことをおっしゃられていないようですね?」


一連のやりとりを黙って聞いていたヒメカが、おごそかに、口を開く。


「はて? なんのことかいね?」


「マリグレーテ様が、感謝の意の表明として、うちの潮あゆらに、

称号と権力を授与されるのは、確かに本当のことなのでしょう。

……けれどそれと同時に、業界の各方面に先駆けて、

うちの潮が〈聖導庁〉側の人間であるという宣言する意味も含んでいるのでは?」


そらっとぼけようとしたトム爺ちゃんに、ヒメカは、

追い打ちするように指摘した。


あ~っ、やっぱ、そういう狙いもあったのか~……!

汚いなさすが〈聖導庁〉きたない!


「────マリグレーテ様は、うちの潮が、たぐまれな〈力〉の

持ち主であることを、〈予知〉能力で、御存知なのですね」


断定した口調で言って、ヒメカが、トム爺ちゃんを見つめる。

たぐまれな〈力〉の持ち主”と、ヒメカは言ったが、

言外に、私が〈旧支配者グレート・オールド・ワン〉、〈邪神〉の転生体であることを、

巫女教皇ハイエロファンテス〉様も知っているのだろう?、と、

改めて問いかけているのだった。


ヒメカの断定的な問いかけに、トム爺ちゃんは、うなずいてみせる。


「うん、知っておられるよ。だからねぇ~、あゆらお嬢ちゃんが、

そのうち〈魔法少女連盟〉に加入するにしても、早々に、“人類”の味方であると

表明しといたほうが良い、そうお考えなのさね。あまりにも強すぎる存在は、

往々にして、揉め事に巻き込まれやすいからの」


……そっか、〈聖導庁〉としては、地上最強クラスの〈邪神〉パワーを持つ私を、

野放しにはできないわけだ。

〈聖導庁〉の監視下、制御下に置くことはできなくても、

自分たちの組織寄りに、私が居る、と、業界に知らしめ、

問題の発生率を引き下げたい────そんなところか。


私にとっては、〈聖導庁〉が弾除たまよけになってくれ、

何事かという時、助力を求められるようになる……。

先に言ってた、

『お互いに、Win-Winな関係になりましょう』

という申し出は、嘘ではないかもしれない。


う~ん、この申し出、受けといたほうが、今後、なにかと穏便に

済ませそうな気はするなあ~。

逆に、ツッパねて、〈聖導庁〉みたいな巨大組織とめるのは、

ヒメカの不利になりそうで、怖いし。


……んんん~!? 結局、おとなしく称号もらっとくしかない!?

詰んでるようなもんじゃんか! この状況!

くそっ! しょうがねえな!(@『冒●王』版天パ)


「………わかりました。〈大至聖女メガロ・パナギア〉の称号、

ありがたく頂戴ちょうだいします───ただし」


けられないなら、条件提示だけは、しっかりと言っておこう、

そう強く思った私なのです。


「私、潮あゆらは、いかなる組織にも属する気はありません。完全に、

フリーな立場でいることを、希望します。私が、能動的に助力するのは、

基本的に、婚約者である〈魔法少女〉苑草日明香だけ。……こういう、

私に都合のいい条件が許されるなら、ですけど」


どうせヒメカとの関係もバレてんだろう、と、ストレートに条件を言ってみた。


相談なしに勝手に応じてごめんね、と、ヒメカのほうを見る。

すると、ヒメカは、顔を赤くしながら、大丈夫、気にしないで、

という風に微笑んで、うなずいてくれた。


は~っ、以心伝心! ヒメカ、好き! 大好き!


ヒメカと心の通じ合いっぷりに、私が嬉しさで内心悶えていると、

トム爺ちゃんもまた、うんうん、とうなずいてくる。


「称号の授与を承諾してくれたなら、どんな要求でも呑むように、

と、マリグレーテ様はおっしゃっておいでだったからね。

あゆらお嬢ちゃんの言ってくる条件出しは、オールOKなのよ。

やぁ~、良かった、良かった。肩の荷が下りた気持ちだわ。

……あゆらお嬢ちゃんが、こちらの申し出を受けてくれるかどうかまでは、

マリグレーテ様もわかっとらんかったようだし。はァ~、ありがと、ありがと」


そう言ったあと、トム爺ちゃんは、エストさんに目を向けた。

エストさんは、その視線に応じるようにうなずき、右手を挙げる。


「───私、〈聖導庁〉日本支部〈司教〉、エスト・メレーⅤ世(ザ・フィフス)は、

巫女教皇ハイエロファンテス〉マリグレーテ・マルターニャ・ダルタニアス様の

勅命により、〈総統司教グランド・ビショップ〉トマス・コンスタンティンが

潮あゆら嬢に〈大至聖女メガロ・パナギア〉の称号の授与を申し伝えたること、

しかと見届けました。此度こたびの件の証書は、可及的(すみ)やかに作成、

署名したるのちに、〈聖導庁〉本部に提出することを、ここに誓います」


エストさんは、キリッとした表情で、スラスラと、聖書の一節でも

読み上げるかのように、よどみなく言い終えた。

よくわからないけど、たぶん、

『トム爺ちゃんのお仕事ぶり、確かに見てました』みたいな、

儀礼的な宣誓かなんかなんだろう。


エストさんの言葉に、うむ、と満足したようにうなずくトム爺ちゃん。


「これであゆらお嬢ちゃんは、〈聖導庁〉じゃ、〈巫女教皇ハイエロファンテス〉マリグレーテ様と

同じくらい、偉い地位のひとになったから。くれぐれも、その称号に

ふさわしい行動のほう、よろしくねぇ~」


「えっ」


ちょっと、待って!? またなんか凄いこと、サラッと言わなかった!?


「ハ、〈巫女教皇ハイエロファンテス〉様と、同じくらいの地位、って言いました……!?」


「ん~? そりゃあ、そうだよぉ~。〈至聖女パナギア〉だけでも偉いのに、

大至聖女メガロ・パナギア〉ってなったら、史上最高に偉い女性、って目されても、

おかしくない称号だもの。さすがに組織の都合上、〈巫女教皇ハイエロファンテス〉より“上”

っちゅ~のは、カンベンしとってもらわんといかんけどね」


───────────先に言って!? そーゆ~大事なことは!?


高校野球部の、“名誉コーチ”くらいのノリで

応じちゃったじゃんっっっ!?!?!?

エラいことになってしまった……………!!!


粟喰ったように、ヒメカを見るけど、ヒメカも、驚いた顔で、

私を見つめ返してきている。

そこまでのことだったとは、完全に想定外、って表情である。


………ゴメンやっぱナシ!─────とは言えないよね、

エストさんが、宣誓までしちゃってたし。


コレなんかさあ、められてないです……!?

も゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛っっっ!!!


なんだか泣き叫びたい衝動になってる私に、トム爺ちゃんは、

お気楽に笑いかけてきた。


「ま~ま~、そんな深刻に捉えんでもいいよぉ。物凄い切れ味の包丁をもらった、

みたいに思っておけばいいんじゃないかねぇ~。……包丁を、散歩に持ち歩くモンは、

おらんじゃろ? 〈大至聖女メガロ・パナギア〉の称号も、それと同じことだわ。

必要な時に、その名の地位と力を、使えばいいだけでなぁ」


……なんかイイこと言ってる風だけど、困惑&動揺しまくりのこっちを、

けむに巻いてる気もする~!


「〈聖導庁〉になんか注文つける時は、このエストくんに申しつけなさいな。

わしは、職務で世界中、あっちこっち渡り歩いとることが多いんでねぇ~、

あゆらお嬢ちゃんのリクエストを、即座に受け付けるの、難しいのよね。

エストくんなら、スーパーの特売品の買い付けから、邪魔者の排除まで、

二十四時間、驚きの速さで対応してくれるはずよって」


邪魔者の排除、ってなにさ!?

そんな、ヒットマン飛ばすのも余裕です、みたいなこと、

ネット通販の感覚で言われても~!


困惑しどおしの私に、エストさんは、チェシャ猫な微笑を向けてくる。


「愛しのあゆらくんのお願いなら、どんなことでも、万難を排して、

叶える努力をするつもりだとも。……あゆらくんが気にしていた、

私の乳房と臀部でんぶをお望みなら、この身を差し出すことに、

なんの躊躇ためらいもな」


エストさんの言葉に熱が入ってきてたところ、トム爺ちゃんが、

ウォッホン、と大きく咳払いをした。

チラリとヒメカを見やると、殺意の波動に目覚めた視線を、

エストさんに送っている。


「────うん、まあ、そんな感じでね。少々、エストくんは、同性相手に、

セクシャルハラスメントな言動が見受けられるけども、仕事ぶりが

優秀なのは、間違いないから。なんなりと、申しつけたんさい」


苦笑まじりに、トム爺ちゃんは、フォローめいたことを口にした。


「あ、じゃあ、早速、お願いがあるんですけど……」


この際なので、私は、話の流れに、便乗することにした。


「〈大至聖女メガロ・パナギア〉、潮あゆら様の、初のお願い。

第一の使徒、このエスト・メレーⅤ世(ザ・フィフス)が承りましょう。

なんなりと、ご下命かめいをば」


エストさんは、嬉しそうに、だが、悪戯いたずらっぽく、

私にひざまづいてくる。


……あれ、まずいな、冗談込みだとしても、エストさんみたいな美人に

かしづかれるの、気分良いかも。

そう思いつつ、私は、寝むたげになっているゆりちゃんの顔を見ながら、

お願い事を口にするのだった。


「それじゃあ、まず──────」

“メガロ・パナギア”はギリシャ語つなげたんですが、正しいかどうかは不明です(^∀^;)


さて美少女カップルイチャ♡イチャ♡伝奇浪漫、次回、完結です!

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