転31 〈邪神〉だけど、聖女になる。
こっそり“聖女”タグつけようとしましたが、タグ数限度超えるらしくダメでした(^ω^;)
あ、ありのまま……起こったままのことを話すぜ!
『私が〈邪神〉の転生体であることをナイショにしようとしていたら、
最初から名前まで完全に把握されていた』!
催眠術なんてチャチなもんじゃねえ……、もっと恐ろしい(以下略)。
はわわ、どういうこと? なんで?
なんで、名前と〈邪神〉自称までバレてるのん!?
怖っ! 〈聖導庁〉の〈巫女教皇〉、怖っ!
どうしよう、どうしましょう。
〈聖導庁〉のボスを、敵に回すような真似はやめとこ、って、
密かに方針を決めたトコだったのに──────!?
内心、パニクりかけながら、ヒメカをチラリと見やる。
ヒメカもまた、真顔になっており、緊張している様子だった。
うごご、それって、今の、私の〈邪神〉バレ状況、
相当にピンチってこと……!?
いや待て、まだあわてるような時間じゃない。
『なんか勝手に〈邪神〉自称してる中二病な女の子』って、
思われてるだけかもしれない。
……無理かな? それは。
ううっ、〈聖導庁〉ボス、どこまでわかってるのぅ~!?
私がそう冷や汗をかきまくっていると、トム爺ちゃんは、
ほっほっほっ、と、愉快げに笑い声をあげた。
「まァ~、そんな警戒せんでもいいよぉ~。別に、取って喰ったりは
せんからね。むしろ、あゆらお嬢ちゃんの、今後の助けになるために、
わしは、ここに遣わされたのよ」
トム爺ちゃんの言葉に、あやうく、はへ?、と、
間抜けな声を出しそうになる。
〈聖導庁〉────邪悪な存在&異端者絶対殲滅するMENで
構成されてる組織が、〈邪神〉を名乗ってる私を、助ける?
いったい、どういうことなんだぜ……?
「そのへん、順を追って話すから、まあ、聞きなさいな。……ここだけの
話なんだがね、我らが〈巫女教皇〉、
マリグレーテ・マルターニャ・ダルタニアス様は、
そこな小さいお嬢ちゃんのように、〈予知〉能力者でもあるんだわ」
「えっ」
トム爺ちゃんに言われて、思わず、ゆりちゃんのほうに目を向けてしまう。
ゆりちゃんは、ヒメカと手をつないで、しっかり立っているが、
お目々がもう、とろんとなってきていた。
四歳児だもんなあ、深夜の外出はもう、お疲れMAX状態であろう。
私のアレコレに起因するらしいお話をさっさと片付けて、
早く、休ませてあげないと。
「その、マリグレーテ様の〈予知〉で、私のこと、名前からなにから、
わかってた、ってことなんですね」
話をスキップして、結論を早く言ってもらうため、
トム爺ちゃんに、そう直で確認してみる。
「そ~そ~。そんで、真夜中近く、あの海沿いの道路を、
『夢遊病者のように歩きなさい』って、指示を受けたのね。
それで、あゆらお嬢ちゃんに会えるから、ってねぇ~。
いやー、まさか、あんな形の出会いだとは、びっくりよ。
こっちは、詳しい説明、受けとらんかったからねぇ。
心臓が止まるかと思うたよ」
マリグレーテ様とやらの〈予知〉とはいえ、説明ナシの命令で、
道路の真ん中歩いてたのかよ!
あっぶないなあ~、もぉ~っ……!
そのひとの〈予知〉が、どれだけの実現率か知らないけど、普通に怖えよ!
まあ、現実に、私たちは〈予知〉どおりに、
出会ってしまっているわけだけれど─────。
私は、意を決して、トム爺ちゃんに、核心的なことをたずねる。
「………それで、私と会って、どうしろ、って言われたんですか?」
「うん、それさね─────あゆらお嬢ちゃんが、どんな子か、
ちゃんと見るように、って言われたわけ」
「───はあ……」
なんだその、ふわっ、とした命令は。
首をかしげ気味になってる私に、トム爺ちゃんは、言葉を続けてくる。
「で、あゆらお嬢ちゃんが、良い子そうだったら、
自分が〈大至聖女〉の称号を授けることにする、
ってぇことを伝えなさい、と。そう言われたのよねぇ~。
うん、わしが見た感じ、良い子そうだし。あゆらお嬢ちゃんが
了承してくれるなら、今から、〈大至聖女〉になってもらいます」
「えっ」
トム爺ちゃんが、またぞろ、凄いことを、サラッと言った。
〈大至聖女〉て。
〈邪神〉知識から、〈至聖女〉というのは、
いわゆる〈聖母〉のように尊い、女性の聖人に与えられる
最高位の称号であるとわかる。
けれど、〈大至聖女〉なんて称号は、〈邪神〉知識には、存在していない。
「本来、〈大至聖女〉なんて称号、ありゃせんのだがねぇ~。
地球人類すべての命を救う、なんて偉業の達成者を讃えるとなると、
〈至聖女〉より、もう一段、位の高いの作らんといかん、
そういう判断をされたわけ。まあ、そういうわけだからね、ひとつ、
受け取って頂戴な」
飴ちゃん貰っときなさい、くらいノリで、トム爺ちゃんは、
私にニカッと笑顔を向けてくる。
は? “地球人類すべての命を救う偉業”? なんの話です?
身に覚えがなさ過ぎて、新手の詐欺かと疑っちゃうね。
「い、いや、私、そんなこと──────」
してない、と、言おうとして、ふと、昨夜のことが、思い出された。
『どうか、地球の人類を滅ぼすのは、思いとどまってください……………!!!』
“んーええよ~、オッケ~”
…………………………してた。
地球人類すべての命、救ってたわ。
クトゥルフ本体に土下座して、現行人類の存続を、
お願いしたんだった。
えぇ……いやでもソレ、ヒドい自作自演、ってゆーか──────。
愛しのヒメカと、大切な家族や友達らを、大事に想っての、
ついでのことだった、ってゆ~か………。
なんだか凄そげな称号を貰うような“偉業”かと言われると、
疑問符つけちゃうでしょ、ソレ。
「まあまあ、あゆらお嬢ちゃん。謙遜とかは、せんでええから。
わしゃ、詳しくは知らされとらんから、わからんけどね。
お嬢ちゃんが地球人類を救ったのは、間違いないことなんじゃないかね?」
「えっと────事実か、そうじゃないか、で言えば、事実ですけど………」
言葉を詰まらせていた私に、トム爺ちゃんが確認的な問いかけを
してきたので、端的な答を返す。
私の返答に、うんうん、と満面の笑みでうなずいてみせるトム爺ちゃん。
「そんじゃ、遠慮なく、称号を貰っといて頂戴よ。
でないと、わし、マリグレーテ様から、怒られちゃうのよねぇ~」
えぇ……そんな理由~?(困惑)
トム爺ちゃんが〈巫女教皇〉様から怒られるのはともかく、
おいそれと、〈大至聖女〉の称号を戴くわけには
イカンでしょ。まずもって、ズルしてる感じがして、
そんな大層な称号もらったら、罪悪感で死んじゃいそう。
「お、お待ちください、大師父! 下賤な〈魔法少女〉、
しかも、見習い程度の小娘に、〈至聖女〉を超える称号を与えるなどとっ!
正気の沙汰とは思えません! どうか、思い直しをっ……!」
私がトム爺ちゃんの申し出に困っていると、“失意体前屈”して
固まっていた宮内が、横からしゃしゃってきた。
そんな宮内を、トム爺ちゃんは笑顔を消して、冷たい目で見る。
「破門された人間が、〈聖導庁〉のすることに、どうこう口出しできると
思っとるんかい、お前さんは。しかも、“正気の沙汰とは思えん”と言うたか?
そりゃ、我らの〈巫女教皇〉への愚弄にもなるぞい。
そのあたり、理解して口を利いとるんかい? んん~?」
「う……い、いえ、それは─────」
トム爺ちゃんの静かな問いに、宮内はたじろいで、何も言えなくなったモヨウ。
「今の自分の立場すら、理解できとらんようだから、これ以上、なにを言うても
無駄と思っとるが。……わしが、貴様に対して、わずかも怒りを覚えておらん、
などと、勘違いするでないぞ。〈総統司教〉なんて肩書きを
背負っておらんかったら、〈破門状〉なんぞ取るまでなく、即刻、
八つ裂きにしとったからの」
あくまで淡々と、トム爺ちゃんは、静かに語り、最後に、
冷たい視線で宮内を射抜いた。
傍で聞いてても、その静かな声に込められた“本気な殺意”に、
ちょっぴりビビってしまう。
さすが〈総統司教〉、目の前にうずくまってるインチキ元〈司教〉とは、
貫禄が違うわ。
トム爺ちゃんに、言葉でわからせられた宮内は、今度こそ完全に
打ちのめされて、再び失意体前屈状態へと崩れ落ちた。
しかも今度は、その体勢から、頭から地面に倒れ伏してしまう。
倒れこんだその顔を見れば、宮内は、口から泡を吹いて、
気絶してしまったようだった。
……トム爺ちゃんは、気にした風もなく、私を見て、笑いかけてくる。
「さて、いらんチャチャが入ってしもうたが、あゆらお嬢ちゃん。
〈大至聖女〉の称号をあげるのはねぇ、まァ~、取引みたいなもの
でもあってねぇ~。『お互いに、Win-Winな関係になりましょう』っていう、
マリグレーテ様からの、申し出なのよね」
その笑顔には、宮内に向けていた殺意は、パッ、と消し去られていた。
その落差が、逆に怖えですよ。(震え)
とはいえ、そんな思いを口に出すわけにもいかず、
トム爺ちゃんの言ったことに、反応しておくのだった。
「取引、って、どういうことです……?」
「うん、ぶっちゃけるとねぇ~、あゆらお嬢ちゃんとは敵対したくないから、
上位概念として奉るんで、仲良くしてくださいな、っていう、
お願いみたいなものなんだわ。───あゆらお嬢ちゃんに喧嘩売るのは、
損、って、このへんをざっと見渡すだけで、丸わかりだからねぇ~」
トム爺ちゃんは、私が生み出した氷結地獄な周囲の現状を
眺めながら、そう苦笑する。
「あゆらお嬢ちゃんも、〈聖導庁〉を向こうに回して、
チャンチャンバラバラするつもりは、なかろう?」
冗談めかした言い方ながら、トム爺ちゃんは、真意を見定めるように、
私の目を覗きこんできた。
こっちも別段、〈聖導庁〉に思うところはないので、普通にその目を
見返して、素直にうなずいておく。
「……ないですよ、それは」
ヒメカや、私の大切なひとたちに害を与えない限りは、まあ、
私から滅ぼしに行くとか、そういうことはない。
それに、〈聖導庁〉って、〈旧神の印章〉みたいな、
対〈邪神〉聖遺物、いっぱい持ってそうだしなあ~。
そんなトコに、進んで戦争フッかけようとか、ありえないよね、
常識的に考えて。
「うんうん、そいつは、重畳……〈大至聖女〉の
称号は、いわば、あゆらお嬢ちゃんとの、友好条約の証なんさね。
後々《あとあと》のことを考えたら、この称号を送っておいたほうが、
お嬢ちゃんのためにもなるしの」
「後々《あとあと》のこと?」
「世間的に、あゆらお嬢ちゃんのことを、おおっぴらに触れて回るような
ことはせんけども。いずれ、出鱈目に強い〈魔法少女〉の存在は、嫌が応にも、
魔法業界で噂になるだろうからねぇ~。だけどもよ? それが、〈聖導庁〉の
箔の付いた称号持ちの〈魔法少女〉だったなら、下手にお嬢ちゃん本人に
近づこう、なんて真似をする輩は、グッと減る、とは思わんかい?」
なるほど……〈聖導庁〉が、魔法業界トラブルのセイフティー・ネットに
なってくれる、ということか。
「それに、〈大至聖女〉の肩書きがあれば、今後、〈聖導庁〉は、
大抵のことには、あゆらお嬢ちゃんのために、力を尽くすようになると思うよぉ~?
“力を貸す”じゃなくて、“力を尽くす”っちゅーところが、ミソなのよ。
いいよぉ~、権力は。自分の胸先三寸で、いろいろと、掌の上で
転がせるようになるからねぇ~」
────コラ! 〈総統司教〉!
たとえ冗談でも、偉い聖職者は、そんなこと言っちゃダメでしょ!
そうトム爺ちゃんに、ツッコミを入れたいとこだけど、
実際に口にしたのは、別のことであった。
「でも、それって、タダじゃないんでしょう? 〈聖導庁〉の仕事とか、任務とか、
〈大至聖女〉として、こなさなきゃならなくなるとか、
そういうことじゃないんですか?」
私にばっかり利益があるとか、そんなウマい話、あるわけない。
そんなデカい釣り餌に、この私が釣られクマー!
もといもとい、美味しい話には、絶対に裏があるもの。
悲しいけどコレ、戦争なのよねぇ~!
私が超有名なアニメ台詞で、内心身構えていると、トム爺ちゃんは、
軽く手を振って、笑い声を上げてきた。
「いんやいんや、そんな、回りくどい、ケチなことはせんよぉ~。
……〈聖導庁〉、というか、〈巫女教皇〉マリグレーテ様はね、本当に、
あゆらお嬢ちゃんに感謝しとるの。どんな経緯があろうと、
人類を救ってくれたことに、の。〈大至聖女〉という、称号と権力の授与は、
決して表沙汰にされることのない、あゆらお嬢ちゃんへの、褒賞でもあるのよ」
ええー本当にござるか~?
トム爺ちゃんの説明を聞いても、一般庶民の私は、疑い深く、
検証したい心持ちになってしまうんだぜ。
「……大師父、今のお言葉は、嘘ではないですが、別側面の、
本当のことをおっしゃられていないようですね?」
一連のやりとりを黙って聞いていたヒメカが、おごそかに、口を開く。
「はて? なんのことかいね?」
「マリグレーテ様が、感謝の意の表明として、うちの潮あゆらに、
称号と権力を授与されるのは、確かに本当のことなのでしょう。
……けれどそれと同時に、業界の各方面に先駆けて、
うちの潮が〈聖導庁〉側の人間であるという宣言する意味も含んでいるのでは?」
そらっとぼけようとしたトム爺ちゃんに、ヒメカは、
追い打ちするように指摘した。
あ~っ、やっぱ、そういう狙いもあったのか~……!
汚いなさすが〈聖導庁〉きたない!
「────マリグレーテ様は、うちの潮が、類い希な〈力〉の
持ち主であることを、〈予知〉能力で、御存知なのですね」
断定した口調で言って、ヒメカが、トム爺ちゃんを見つめる。
“類い希な〈力〉の持ち主”と、ヒメカは言ったが、
言外に、私が〈旧支配者〉、〈邪神〉の転生体であることを、
〈巫女教皇〉様も知っているのだろう?、と、
改めて問いかけているのだった。
ヒメカの断定的な問いかけに、トム爺ちゃんは、うなずいてみせる。
「うん、知っておられるよ。だからねぇ~、あゆらお嬢ちゃんが、
そのうち〈魔法少女連盟〉に加入するにしても、早々に、“人類”の味方であると
表明しといたほうが良い、そうお考えなのさね。あまりにも強すぎる存在は、
往々にして、揉め事に巻き込まれやすいからの」
……そっか、〈聖導庁〉としては、地上最強クラスの〈邪神〉パワーを持つ私を、
野放しにはできないわけだ。
〈聖導庁〉の監視下、制御下に置くことはできなくても、
自分たちの組織寄りに、私が居る、と、業界に知らしめ、
問題の発生率を引き下げたい────そんなところか。
私にとっては、〈聖導庁〉が弾除けになってくれ、
何事かという時、助力を求められるようになる……。
先に言ってた、
『お互いに、Win-Winな関係になりましょう』
という申し出は、嘘ではないかもしれない。
う~ん、この申し出、受けといたほうが、今後、なにかと穏便に
済ませそうな気はするなあ~。
逆に、ツッパねて、〈聖導庁〉みたいな巨大組織と揉めるのは、
ヒメカの不利になりそうで、怖いし。
……んんん~!? 結局、おとなしく称号もらっとくしかない!?
詰んでるようなもんじゃんか! この状況!
くそっ! しょうがねえな!(@『冒●王』版天パ)
「………わかりました。〈大至聖女〉の称号、
ありがたく頂戴します───ただし」
避けられないなら、条件提示だけは、しっかりと言っておこう、
そう強く思った私なのです。
「私、潮あゆらは、いかなる組織にも属する気はありません。完全に、
フリーな立場でいることを、希望します。私が、能動的に助力するのは、
基本的に、婚約者である〈魔法少女〉苑草日明香だけ。……こういう、
私に都合のいい条件が許されるなら、ですけど」
どうせヒメカとの関係もバレてんだろう、と、ストレートに条件を言ってみた。
相談なしに勝手に応じてごめんね、と、ヒメカのほうを見る。
すると、ヒメカは、顔を赤くしながら、大丈夫、気にしないで、
という風に微笑んで、うなずいてくれた。
は~っ、以心伝心! ヒメカ、好き! 大好き!
ヒメカと心の通じ合いっぷりに、私が嬉しさで内心悶えていると、
トム爺ちゃんもまた、うんうん、とうなずいてくる。
「称号の授与を承諾してくれたなら、どんな要求でも呑むように、
と、マリグレーテ様はおっしゃっておいでだったからね。
あゆらお嬢ちゃんの言ってくる条件出しは、オールOKなのよ。
やぁ~、良かった、良かった。肩の荷が下りた気持ちだわ。
……あゆらお嬢ちゃんが、こちらの申し出を受けてくれるかどうかまでは、
マリグレーテ様もわかっとらんかったようだし。はァ~、ありがと、ありがと」
そう言ったあと、トム爺ちゃんは、エストさんに目を向けた。
エストさんは、その視線に応じるようにうなずき、右手を挙げる。
「───私、〈聖導庁〉日本支部〈司教〉、エスト・メレーⅤ世は、
〈巫女教皇〉マリグレーテ・マルターニャ・ダルタニアス様の
勅命により、〈総統司教〉トマス・コンスタンティンが
潮あゆら嬢に〈大至聖女〉の称号の授与を申し伝えたること、
然と見届けました。此度の件の証書は、可及的速やかに作成、
署名したるのちに、〈聖導庁〉本部に提出することを、ここに誓います」
エストさんは、キリッとした表情で、スラスラと、聖書の一節でも
読み上げるかのように、よどみなく言い終えた。
よくわからないけど、たぶん、
『トム爺ちゃんのお仕事ぶり、確かに見てました』みたいな、
儀礼的な宣誓かなんかなんだろう。
エストさんの言葉に、うむ、と満足したようにうなずくトム爺ちゃん。
「これであゆらお嬢ちゃんは、〈聖導庁〉じゃ、〈巫女教皇〉マリグレーテ様と
同じくらい、偉い地位のひとになったから。くれぐれも、その称号に
ふさわしい行動のほう、よろしくねぇ~」
「えっ」
ちょっと、待って!? またなんか凄いこと、サラッと言わなかった!?
「ハ、〈巫女教皇〉様と、同じくらいの地位、って言いました……!?」
「ん~? そりゃあ、そうだよぉ~。〈至聖女〉だけでも偉いのに、
〈大至聖女〉ってなったら、史上最高に偉い女性、って目されても、
おかしくない称号だもの。さすがに組織の都合上、〈巫女教皇〉より“上”
っちゅ~のは、カンベンしとってもらわんといかんけどね」
───────────先に言って!? そーゆ~大事なことは!?
高校野球部の、“名誉コーチ”くらいのノリで
応じちゃったじゃんっっっ!?!?!?
エラいことになってしまった……………!!!
粟喰ったように、ヒメカを見るけど、ヒメカも、驚いた顔で、
私を見つめ返してきている。
そこまでのことだったとは、完全に想定外、って表情である。
………ゴメンやっぱナシ!─────とは言えないよね、
エストさんが、宣誓までしちゃってたし。
コレなんかさあ、嵌められてないです……!?
も゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛っっっ!!!
なんだか泣き叫びたい衝動になってる私に、トム爺ちゃんは、
お気楽に笑いかけてきた。
「ま~ま~、そんな深刻に捉えんでもいいよぉ。物凄い切れ味の包丁を貰った、
みたいに思っておけばいいんじゃないかねぇ~。……包丁を、散歩に持ち歩く者は、
おらんじゃろ? 〈大至聖女〉の称号も、それと同じことだわ。
必要な時に、その名の地位と力を、使えばいいだけでなぁ」
……なんかイイこと言ってる風だけど、困惑&動揺しまくりのこっちを、
煙に巻いてる気もする~!
「〈聖導庁〉になんか注文つける時は、このエストくんに申しつけなさいな。
わしは、職務で世界中、あっちこっち渡り歩いとることが多いんでねぇ~、
あゆらお嬢ちゃんのリクエストを、即座に受け付けるの、難しいのよね。
エストくんなら、スーパーの特売品の買い付けから、邪魔者の排除まで、
二十四時間、驚きの速さで対応してくれるはずよって」
邪魔者の排除、ってなにさ!?
そんな、ヒットマン飛ばすのも余裕です、みたいなこと、
ネット通販の感覚で言われても~!
困惑しどおしの私に、エストさんは、チェシャ猫な微笑を向けてくる。
「愛しのあゆらくんのお願いなら、どんなことでも、万難を排して、
叶える努力をするつもりだとも。……あゆらくんが気にしていた、
私の乳房と臀部をお望みなら、この身を差し出すことに、
なんの躊躇いもな」
エストさんの言葉に熱が入ってきてたところ、トム爺ちゃんが、
ウォッホン、と大きく咳払いをした。
チラリとヒメカを見やると、殺意の波動に目覚めた視線を、
エストさんに送っている。
「────うん、まあ、そんな感じでね。少々、エストくんは、同性相手に、
セクシャルハラスメントな言動が見受けられるけども、仕事ぶりが
優秀なのは、間違いないから。なんなりと、申しつけたんさい」
苦笑まじりに、トム爺ちゃんは、フォローめいたことを口にした。
「あ、じゃあ、早速、お願いがあるんですけど……」
この際なので、私は、話の流れに、便乗することにした。
「〈大至聖女〉、潮あゆら様の、初のお願い。
第一の使徒、このエスト・メレーⅤ世が承りましょう。
なんなりと、ご下命をば」
エストさんは、嬉しそうに、だが、悪戯っぽく、
私にひざまづいてくる。
……あれ、まずいな、冗談込みだとしても、エストさんみたいな美人に
かしづかれるの、気分良いかも。
そう思いつつ、私は、寝むたげになっているゆりちゃんの顔を見ながら、
お願い事を口にするのだった。
「それじゃあ、まず──────」
“メガロ・パナギア”はギリシャ語つなげたんですが、正しいかどうかは不明です(^∀^;)
さて美少女カップルイチャ♡イチャ♡伝奇浪漫、次回、完結です!




