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邪神転生ガール  作者: megajoy
3/32

転3 〈邪神〉だけど、マドンナと下校。

運命がマッハ開始です(゜∀゜)

─────苑草(そのぐさ)日明香(ひめか)という少女について、私が知っているいくつかのこと。


西洋人にしか見えない、白金髪プラチナ・ブロンドに翡翠色の瞳という容姿だが、国籍は日本。

海外で育っていたが、高校一年の六月という、微妙な時期に日本へ帰国し、瑠々江(るるえ)学園に転入してきた帰国子女。


容姿端麗、成績は優秀、運動神経も抜群。

清楚なたたずまいに、上品な物腰で、性格もまた、清廉潔白ノーブル・マインド


彼女は、瞬く間に、トップカーストどころか、学園一の美少女と目されるようになった。

『女性の敵は、女性』とは、よく聞く定型句だけれど、苑草さんは、同性からのねた

そねみからは無縁みたい。


相手が美少女すぎて、格上過ぎると、負の感情より、憧れが先に立ってしまうのだろう。


根拠ソースは私。

異性はおろか、同性にまで神聖視されるようになっているのは、つい先刻、私がいじめを受けそうになったことからも、確定的に明らか。


私が知らないだけで、学園内外で、すでに親衛隊とか、ファンクラブができてても、おかしくないな。


彼女の周囲に集まる人々もまた、トップカーストの少女らである。

二年に進級して、その友達らとは全員、別々のクラスになったようだ。


そのへんが、隣の席である、陰キャぼっちの私に話しかけてくれている要因かも。


恋人とかは、いないモヨウ。

あまりにも高嶺の花すぎて、男どもは尻込みしてしまっているとか、なんとか。


加えて、『恋人とか、今は考えるつもりはないかな』という発言が、本人の口からあったらしい。


清純派アイドルまっしぐら……!

おお、完璧パーフェクト! 完璧パーフェクトヒロイン……!


姫かな? 姫かも? 姫か!

私が常日頃、心の中でそう叫んでいるのも、無理なからぬことと思いたい。


…………それにしても苑草さん、マジ天使だわ。


苑草さんと並んで歩きながら、本日何度目かわからない同じフレーズを、思い浮かべてしまう。


まず、優しい。

どうも、歩調を、私に合わせてくれてるっぽい。


気遣いが、イケメン彼氏のようである。

ということは、私がカノジョかな? ふひっ!


などと、私が気持ちの悪いことを考えている間も、苑草さんとの会話は続いている。


瑠々江(るるえ)って、校舎は新しくて綺麗だけど、丘の上にあるのがちょっと嫌だよね……」


「そ、そうだね。駅からもちょっと歩くし……。帰宅部の私には、適度な運動、って感じでいいかもだけど」


「わたしも同じこと考えてた」


そう言って、ふふっ、と笑う苑草さん。


これ! これである。

共通話題がなさげな陰キャを配慮した、会話運び。


ああ~それが自然で、さりげない気配りが感じられて、心がぴょんぴょんするんじゃ~……!


そして───私は、苑草さんの全体像を、チラリチラリと、盗み見るようにして、目に焼き付けていた。

やっぱり、美人さんなのである。


当たり前だが、苑草さんは、私と同じ、濃緑色を基調にした瑠々江(るるえ)学園の制服であるブレザーに、スカート姿だ。


瑠々江の通学用鞄はわりとフリーダムで、学生の所持品としての品格から逸脱しなければ、どんな形の物を選んでもよいことになっている。

私も苑草さんも、背中に背負えるタイプの鞄であった。


同じ制服姿で、同じ背負うタイプの鞄。

けれど、明らかに着こなし感が違う。


歩き方からして、なんか違うもんな。


なんだろう? なにが違うんだ?

顔の造形はともかくとして、やっぱり身長かな?


小柄系女子である私の身長は、148センチくらい。

対する苑草さんは……170センチはあるんじゃなかろうか。


高身長である苑草さんは、体のスタイルもいい。


西洋人の血が成せる体型か、制服の上からでもわかる胸の膨らみは、巨峰と称して一向にかまわぬ大きさだ。

そして当然、お尻のほうも同様で、これはもはや、グラビアアイドル顔負けであろう。


私の胸とお尻は、身長からすると、なかなかの合格で“ある”つもりだけれど。

(※個人の感想です)

苑草さんと比べると、その差が歴然すぎて、生きてるのが辛い。


白金髪プラチナ・ブロンドの、長い髪の艶感とかも、私のボサ黒髪とは、月とスッポン(死語)だ。


これで私と同じ年齢とか、ホントに人間か?

〈邪神〉の転生体である私が言うのもなんだけど。


ってゆーか、〈邪神〉クトゥルフ本体も、転生させるなら、めっちゃ美少女にしてくれればよかったのに……!

せめて、苑草さんの隣を歩いていても、恥ずかしくないようなさあ─────。


それならば、ちょっと仲よさげに話をしたくらいで、いじめの標的にされることもなかったろうに。

現実は残酷だね、仕方ないね。(泣)


「そういえば、潮さんは、どうして瑠々江(るるえ)を選んだの?」


「……どうして、って言われると、まあ、その、ちょっと他の人には、言いにくい理由なんだけど────」


「あっ……ごめんなさい、なにか、家庭の事情とかだったら……」


「いやいや、全然そんなんじゃなくて!……えっとね、少し、っていうか、かなり馬鹿っぽい話で……」


言うか言うまいか、数秒悩む。

理由がオタク度120%なものだけに、一般人ドン引き判定やいかに……!?


────まあ、いっか。

苑草さんに嘘ついて、ごまかすような真似はしたくないし。


ドン引きされたり、馬鹿にされちゃっても、まあ、それはそれで。

天使な苑草さんなら、軽く笑ってくれるものと信じて……!


「その、ね。好きなゲームの、主人公たちが通う学校の制服に、超似てたから……」


イタタタタ……! 中二病全開……!

正直に言ってみると、思いのほか恥ずかしすぎて、心が痛い、衛生兵(メディック)! 衛生兵(メディック)~っ!


「そうなんだ? よっぽど好きなゲームなんだね」


苑草さんの反応は、ニッコリと、変わらぬ天使の微笑(エンジェル・スマイル)だった。


────エエ()や……。(ホッコリ)


もう、その笑顔は、純粋にそう思ってくれているかのよう。

もしこれが作り笑いだったなら、私、人間不信におちいっちゃうね。


「う、うん、中学の時に、夢中になったゲームでね。登場人物みんな魅力的だったから、そのキャラクターたちと、同じ学校に行きたい、って思ったくらい、好きだったんだ」


ううっ、『それ以上いけない』と、理性がストップをかけつつも、早口を止められない……!

鎮まれ、私のオタク(スピリッツ)────!


「あ、こ、子供っぽいよね。自分で言っててなんだけど、恥ずかしくなってきちゃった」


えへへ、と、私は照れ笑いやら苦笑いやらを浮かべてしまう。


「ううん、全然そんなことないよ。なんだったら、わたしのほうが、子供みたいな理由で瑠々江(るるえ)を選んでるもの」


「え……苑草さんが……?」


「うん」


と、また苑草さんはニッコリと笑う。


「わたしね、占いで、瑠々江(るるえ)に転入する、って決めたんだ」


「えっ、占いで……!?」


「そう!」


こりゃまた、意外な新事実……!

美少女、かつ、才女である苑草さんが、占いっていう、フワッとしたもので学校を決めていたとは───!


乙女か!

いや、乙女だった! 〈聖乙女ラ・ピュセル〉と言ってもいいね!


私が脳内で苑草さん崇拝度をアゲアゲしているのをよそに、苑草さんは話を続ける。


「わたし、生まれは日本、この都市まちだけど、小さい時から、チェコのプラハに住んでたの」


そう、そういう話を、私は、教室にいて聞こえてくる、人の噂話で耳にして、知っていた。


チェコの、プラハ。

普通の日本人には、ピンとこない国と地名だ。


けれど、〈邪神〉クトゥルフが持つ知識が、私にささやいてくる。

それによると、プラハの裏の顔は、魔法に根ざした種族───〈魔女〉がひしめく〈魔女の都〉だとか、なんとか。


……〈邪神〉としての記憶はマルッと忘れているけれど、そういう知識は、何故か自然と浮かび上がってきてしまうようだ。


とはいえ、今は、そんな知識は必要ない。


「あ、きょ、去年の六月に、日本に帰ってきたんだよね」


「うん。それでね、いろいろこのあたりの学校のことを調べたんだけど……転入する学校を、ひとつに絞りきれなくって」


「───それで、占いで決めちゃったんだ」


「どこも条件的に同じなら、運を天に任せよう、って。……ね? 子供っぽいでしょ?」


ふふふっ、と、苑草さんは、いたずらっぽく笑った。


う~ん、それは私のと違って、子供っぽいのとはちょっと違う気がする。

笑顔の苑草さんがかわいいので、もうそれでよし!っていうていで、イエスマンをやってしまいたい。


でもそれは不誠実な気がしたので、素直な感想を述べておくことにした。


「子供っぽい、っていうか、なんだろう、乙女だな、って思った」


私がそう言うと、苑草さんは、ちょっと顔を赤くした。

それから、照れたように笑う。


「だって、乙女だもの」


「……あっ!? やっ、ヘンな意味で言ったんじゃなくて……!」


「うん、わかってる」


ふぎょー!? やっべ、意図せず(意味深)(カッコいみしん)な下ネタをフっちゃった!?

今度はこっちが顔を赤くする番だった。


「あ、その、それと、意外だな、って思っちゃった。苑草さん、占いとかするんだ、って。しゅ、趣味なの?」


ごまかすように、アタフタと話題を広げる私。


「趣味、っていうか、生活の一部かな?」


「生活の……そんなにいつも、占いやってるんだ?」


「う~ん、必要と感じた時にやってるけど……普通の人からすれば、頻繁ひんぱんにしてるかも?」


「……なんか、平安時代の、貴族様みたいだね」


苑草さんは、外見も物腰も、ノーブルな姫っぽいしな。

生活様式までイメージぴったりかよ、最高!


「さすがに、日ごとの吉兆禍福きっちょうかふくまでは占わないよ」


そう返して、くすくすと苑草さんは笑う。


〈日ごとの吉兆禍福きっちょうかふく〉というフレーズを、さくっと出せてしまう教養の高さよ……!

平安時代の貴族が占い云々《うんぬん》の知識を、エロ描写の濃い、

漫画版『源氏物語』で得た私とは、モノが違うぜ。


「あっ、でも、占いで転入先の学校決めたこと、他のひとには内緒にしてね。しょっちゅう占いやってることも。───ふたりだけの、秘密だよ?」


「え……う、うん。誰にも言わないよ」


ふたりだけの秘密、という言葉にドキリとする。

なんだかそれって、恋人とか、親友みたいじゃない?


「約束ね? はい、指切り」


と、苑草さんは微笑んで、右手の小指を差し出してきた。


えっ、いいの? 触れていいの? 絡めていいの?

けがしてしまわないかしら、当方、〈邪神〉だけに。


一瞬、そう躊躇ちゅうちょしてしまったけれど、まさかここで、NOとは言えない。


ってゆーか、むしろごっつぁんです。

できうることなら、体ごと、絡めたい気持ち。


「う、うん、約束……」


そんなセクハラ親父みたいな思考などおくびもださず、私はうなずいて、苑草さんの小指に、自分のそれを絡めた。


指切りげんまんの歌を歌うのかな?、とドキドキする。

すると、苑草さんは、きゅっ、とわずかに強く小指に力をこめて、祈るように、囁くように、言った。


「────世界の果てを越えても、この約束を、守ってね」






あっ────────────。






………………今度こそ、思い出の扉が、開いた。


─────木々の中、小さな私と向き合う、金色の髪の女の子。

互いに小指を絡めたあと、彼女が願いを口にする。


『せかいのはてをこえても、このやくそくを、まもってね』


『……? せかいのはてをこえて? どういういみ?』


『もし、しんじゃったとしても。それでうまれかわって、べつのにんげんになったとしても、っていう、いみだよ』


『……! うん! わかった! せかいのはてをこえても、わたし、ぜったいにやくそくをまもる……!』


同じ指切り。

同じ言葉。


小さな頃の、不思議な記憶。

夢のような、おとぎ話のような、大切な思い出。


なにもかもが、幼すぎた〈約束〉。


………私がこうやって、苑草さんと〈約束〉するのは、二度目のこと────かもしれない。


私はうなずくことも、声を出すこともできずに、彼女の瞳を、ただ、見つめる。


あの時と同じ、翡翠色の瞳。

その瞳に宿る感情がなんなのか、私には読み取れない。


彼女は、覚えているのか、いないのか。

それとも、ただの偶然の一致で、言葉が重なってしまっただけなのか─────。


私が何も言えずにいると、苑草さんは、小指を放した。


「あっ、そうだ。潮さんの電話番号とか、まだ、聞いてなかったね。教えてくれる?」


苑草さんは何事もなかったかのように、微笑みながら、携帯端末を取り出す。


「え、あ、う、うん」


慌ててこちらも、自身の携帯端末を引っ張り出した。

それから、互いの連絡先などを、交換し合う。


……苑草さんの連絡先をゲットできたのは、喜ばしいことなのだけれど。


心の中は、ドギマギして、それどころじゃないのだった。


─────やっぱり、私は、苑草さんが、好き。


LIKEじゃなくて、LOVEのほう。

ええ、そうですとも、恋愛的な意味で、大好きなのです。


瑠々江(るるえ)に転入してきた彼女を初めて見た時、あの子だ、と思った。


でも、ひょっとしたら、違うのかも。


あの子であってほしい。

あの子でなくてもいい。


苑草さんを見た時から、そんな矛盾した、抑えきれない衝動が、私の心の中にある。


私の、初恋のひと。

ずっとずっと好きだった、金色の髪をした、女の子。


〈ヒメカ〉


………苑草さんは、私が、一世一代の求婚プロポーズをした、

女の子かもしれないのだ─────────。

評価ポイントありがとうございます♪すごい嬉しいです(≧∀≦)

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