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邪神転生ガール  作者: megajoy
28/32

転28 〈邪神〉だけど、絶対に許さない!

明かされた思わぬ真実に、あゆらちゃんは……!?

〈夢〉を、現実にする〈力〉………!?


予想外の発言に、面喰らってしまう。

宮内司教の顔は、怒りで赤くなったまま、不快そうな表情だった。


だからこそ、というのは変だが、嘘や冗談を言っている気配は、

まるでない。

……ないのだけれど、にわかには信じがたい話である。


そう思ったところで、ホテルにて、ヒメカとメールでやりとりした話が、

脳裏をよぎった。

『“シュレディンガーの猫”のたとえで言えば────』


“シュレディンガーの猫”

『世の事象は、観測されることで確定する』


────いや、それは、ただの思考実験、形而上けいじじょう学的なお話だ。


でも、もし、世界の事象要素を、明確な立像ヴィジョンと魔力をもって、

〈夢〉をることにより、指向性を持たせることができたなら……?

起こり得る可能性のひとつを、拡大攪拌(かくはん)することが

できたなら……?


ありえない〈魔法〉ではない、のか。


もちろん、〈邪神〉観点からしても、そんな〈力〉、人間が持つ

異能としては、破格すぎるなんてものじゃない。

それが本当だとしたら、それはもう、

〈神〉の領分にる〈力〉ではないか。


しかし、私という、〈邪神〉の分霊転生体が、この世界に

実存している限り、その認識も揺らいでしまう。

………〈神〉の領分にる〈力〉だが、〈神〉が地上に

るのだから、存在しても不思議ではなかろう、と。


まあ、だからといって─────。


「で? それ、なんか関係あります? なんにしろ、そちらさんが、

やっぱゆりちゃんの〈力〉を利用してる、ってハナシだとしか、

理解できないんですけど」


────だからといって、宮内司教の言い分を、

肯定してやる気にはならない。


ゆりちゃんの〈力〉、宮内司教の〈救世主メサイア〉自称、〈旧神の印章(エルダー・サイン)〉。


三つのピースが揃ったことで、私はもう、コト全貌ぜんぼうを、

うっすらと把握できてしまっている。

けれど、あえてすっとぼけつつ、再三に渡って言ってきた

究極的なところ、宮内司教の行動本質を、改めてあげつらったのだった。


痛いところを突かれただろうに、宮内司教は、なおも、

食いさがるように口を開いてくる。


「……察しが悪いな。その子供の〈力〉ならば、真の世界平和を、

人類は手にすることができる────それが、理解できないのかね?」


「いやだからソレ、結局、

『ゆりちゃんの〈力〉を利用しないと自分じゃ何もできません』って、

言ってるのと同じことでしょ? 理解できてないの?」


嘲るように言ってくる宮内司教へ、被せ気味に、

意趣返しな指摘を叩きつけた。

そのことを自覚していたのか、していなかったのか、宮内司教は

言葉を詰まらせ、不機嫌そうに顔を歪ませる。


「幼女の〈力〉を借りて、聖遺物の〈力〉を借りて、

世界に平和をもたらす、ってさあ……それで、〈救世主メサイア〉気取りしてんの?

それさあ、聞いてる感じだと〈救世主メサイア〉名乗っていいの、

ゆりちゃんだと思うんだけど。手柄を横取りしてる、ってこと?

なんだろう、嘘つくの、やめてもらっていいですか?」


もはや、煽りとか、時間稼ぎとか関係なく、ナチュラルに、私は、

宮内司教が口にしてきた発言の瑕疵かしを追求していた。


「──────その子供ひとりだけでは、せっかくの〈力〉を、

有効に使いこなすことはできない。誰かが、正しく導いてやらなくては

ならないのだ。世界を救う、その正義のために……その役目を

負う者こそ、〈救世主メサイア〉と呼ばれるにふさわしい。違うかな?」


しかし、宮内司教は、私の言葉を無視して、強引ゴーイン・マイウェイ。

自分が〈救世主メサイア〉であることを、一歩も譲らない気配である。


アホかな? いっそ天晴あっぱれではあるけれど。(褒めてない)


「そもそも、大前提のハナシ、言わせてもらっていい?

救世主メサイア〉って、自分で名乗る称号モンじゃないよね。

誰かから、その行いをたたえられて、呼ばれる称号モンでしょ。

もう、スタート地点から、完全に間違ってるよ。アンタ」


「っ……黙れっ! 黙れ黙れ黙れっ……! なにもわかっておらん

餓鬼ガキが……っ! 私は何も間違っていないっ! 私だけだ……!

私だけが、その子供の〈力〉を正しく使えるのだ……っっっ!!!」


私から、根本的で、致命的な部分を指摘された宮内司教は、

途端に、激昂げっこうしてきた。


イイ大人が、駄々をこねるような勢いで、わめき散らしてくる。

ははっ、ワロス!

う~ん、正論を、火の玉ストレートで、叩きこんじゃったかな?


私が心の中で草を生え散らかしてる間にも、宮内司教は、怒鳴り続けてきた。


「私がその子供を導けば、世界から紛争も! 飢餓も! 差別も!

人類が引き起こすどんな問題をも、消し去ることができるっ!

完全なる平和が、この世界に訪れるのだ……っっっ!!!

それが理解できんのかっ、この、低脳どもがぁっっっ!!!」


アカンわ、コイツ。(呆れ)


宮内司教──もう、宮内でいいか……は、怒鳴り終わったあと、

妄念に満ちた目で、こちらをにらんできている。

なんてゆーか、普通にウザい。


おぉよっ! これっぽっちも、理解できんねっ!!!」


吐き捨てるように叫んで、私は宙に浮き、宮内をにらみつけながら、

ヒメカと、ゆりちゃんのそばへと、空中移動した。

地面に降りたあと、片膝を付いて、

ゆりちゃんの両肩に手を置き、その目を見る。


「ゆりちゃん。お姉ちゃんが絶対に守るから、正直に言って?

……あのおじさんに、ゆりちゃんの〈力〉を、貸したいと思ってる?」


「………おもってない」


「そっか。じゃあ、ゆりちゃんは、これから、どうしたい?」


私が端的に問うと、ゆりちゃんは、くしゃりと、その顔を泣き崩した。


「────ゆり、ゆりは、パパとママにあいたい!!!

それで、もとの、ふつうにもどりたい!!!

パパとママと、ずっといっしょにいたいよっっっ!!!」


泣き叫んで、自分の望みを口にしたゆりちゃんを、抱きしめる。

それは、ゆりちゃんが、ずっと我慢していたであろう、

幼子おさなごにとって当然で、大切な願い。


私は、宮内の姿を見せないよう、ゆりちゃんをそのまま

抱きかかえて、立ち上がった。


それからまた、宮内を、殺すつもりでにらみつける。


「だとさ。この子は、普通の女の子なんだ。必要なのは家族であって、

てめえみてえな似非えせ救世主は、お呼びじゃねえの。消えていただけます?」


「っ……馬鹿な───! その子は、まだ幼いから、まだ物事を

完全に理解できていないのだっ! 自分の〈力〉が、どれほど偉大で、

どれほどの人間を幸福にできるのか、世界を平和に導けることが

できる真実を、わかっていないのだっっっ!!!」


宮内は、私ににらみつけられ、わずかにひるんだ様子だったが、

なおも激情に顔を醜く歪ませて、そう叫んできた。


「貴様ら〈魔法少女〉なら、もうわかっているはずだろうっ!

その子供の〈力〉、〈夢〉を現実にする〈力〉ならば、人間同士の争いも

根絶できるし、地上を埋めつくす理不尽な悲劇も、なくすことができると!

それでも、私の邪魔をすると言うのかっ!? 完全なる世界平和の到来を、

フイにすると言うのかっっっ!?」


まるで技巧派舞台役者のように、全身を使い、激情を振るわせ、

わめき散らしてくる宮内。


「ああ! 邪魔するね! そんなもん、おととい来やがれ、ってハナシよ!」


私は、即答していた。


────宮内が、言っているのは、ゆりちゃんの〈力〉、〈夢〉へ介入し、

現実を、望むがままに操る、ということだ。


馬鹿馬鹿しい。

そんなもん、まんま物語の黒幕ラスボスムーヴじゃねえか。


……ゆりちゃんに、『明日、世界から紛争がすべてなくなっている』なんて、

ふわっとした未来像ヴィジョンで、〈夢〉の〈力〉を実現させることはできないだろう。

ゆりちゃん自身に、世界そのものを“書き換える”ほどの魔力は、

備わっていないからだ。


だが、〈精神操作〉の魔法で、〈夢〉にる事象を、明確な未来像ヴィジョンで絞り、

現実にする〈力〉を〈旧神の印章(エルダー・サイン)〉によって、増幅したなら─────?


たとえば、外国の飛行機……米国からテロ支援国家指定されている国の、

軍部の要人たちが乗った飛行機が、墜落する〈夢〉を、

現実のものとすることなど、容易なことだろう。

そう────世界中の、紛争や侵略行為を行う指導者たちを、

“不慮の事故”などで、簡単に排除していけるのだ。


その方法ならば、宗教間の対立や、民族間の対立、領土問題による対立

……世界を悩ませる、ありとあらゆる問題をも、“排除”可能かもしれない。

完全な世界平和が、実現するかもしれない。









でも、らんわ、そんな世界平和。









幼い女の子を、〈機械仕掛けの神デウス・エクス・マキナ〉ならぬ〈神なる機械マキナ・エクス・デウス〉に

はりつけて、もたらされる平和?

粉飾ふんしょく決算にも、ほどがある。


人類ひとの歴史を、めてんのか。


ああ、きっと、人類ひとの歩みは、おぞましい欲望と、

おびただしいしかばねを積み重ねて、進んでいる。

あっちゃならない、理不尽な生殺与奪、無慈悲な苦役と死を、繰り返しながら。


──────────けれど同時に、あたたかな希望と、

ありふれた生をとうとびながら、はげんでいる。


人類ひとの歴史は、命とか、願いとか、

祈りとか、意志とか、信念とか。

苦痛とか、憎悪とか、悲嘆とか………醜いもの、美しいもの、

全部ひっくるめての、大いなる結晶。


宮内のやろうとしてることは、それに泥を投げつけるようなものだ。

人類ひとの尊さを、侮辱ぶじょくし、おとしめる行為だ。


仮に、ゆりちゃんの〈力〉で、現実を歪め続けたら……?


世界は、おそらく、平和になるだろう。

しかし、人類ひとは、救われない。


おのれらの〈力〉で、成しえなかった平和など、破綻するのが、目に見えている。


それでも、都度都度(つどつど)、ゆりちゃんの〈力〉で、

世界を修正し続けたなら────。

これは〈邪神〉知識からの結論だけれど、

ゆりちゃんのほうに、先に限界が来る。


いかに奇跡の〈力〉だろうと、〈夢〉は人間ひとの精神にるもの。

旧神の印章(エルダー・サイン)〉が強いる過負荷は、幼子おさなごの精神を、

数年とたすことなく、崩壊させるのは、間違いなかった。


………宮内のようなクズならば、それを承知で、ゆりちゃんの

〈力〉を使おうとしているのだろう。

子供ひとりの命で、世界に完全な平和が訪れるのなら、犠牲もやむなし、と。


馬鹿言ってんじゃねえや!

小さい女の子ひとり、使い潰さないと平和を創れないような世界(人類)なら、

さっさと滅んでしまえっっっ!!!


いいや。

もしも世界(人類)が、そんな無慈悲を肯定するのなら。


〈邪神〉たるこの私が、すみやかに、地上の人類ことごとくを

滅ぼし去ってやる……!!!


「“さっさと失せろ(疾く消え失せよ)このペテン師っ(騙りの亡者)!!!

世界を救いたけりゃ(此の星は我が至宝)手前でやれっっっ(羽虫が触ること能わず)!!!

二度とこの(死して)子に近づくなっっっ(その驕りを償うがいい)!!!”」


……?

あれ、今、なんか自分の声が、自分のじゃなかったような────?

まあいいか、気のせいだろう。


私の一喝を受けて、宮内は怒りと屈辱からか、全身をプルプルと

震わせて、こちらをにらんできていた。

なんか、親の仇でも見てるみたいな、憤怒の目である。


昨日まで───〈邪神〉覚醒以前の私なら、その視線だけで、

気絶しちゃってたかもしれない。


けど、もう~全っ然、怖くないです、ハイ。

思想も行動も、マジでテンプレ小悪党なんだもん。


当方、〈邪神ラスボス〉よ? 格の違いぐらい、わきまえていただけます?


っと、いけない、勝手に、ひとりで盛り上がってしまっていた。


「……ごめん、ヒメカ。私だけで、話に決着ケリつけちゃった」


〈魔法少女連盟〉とやらに属してるらしい、〈魔法少女〉のヒメカ的には、

私の選択はどうだったのだろう。

────願わくば、公共の天秤に計りを掛けることなく、

私と同じ気持ちでいてほしいけれど……。


「ううん、あゆちゃんなら、きっとそう言ってくれると思った────

ゆりちゃんを、守ろう」


ゆりちゃんを抱きかかえる私の肩にそっと手を置いて、

私の選択を肯定してくれるヒメカ。


……………っっっは~~~~~~~~~~~~~~~~~好きっっっ!!!

ヒメカへの好きが過ぎて、情熱は火を噴いて、もぅ~~~~~どうにも

とまんないんだがっっっ!?!?!?


ヒメカの背中押しもあれば、こっちはもう、百人力、千人力の

お茶の子さいさい最強ノンストップ☆モードよっっっ!!!

でも、表面上は、ヒメカからの強い信頼に、ちょっぴり浮かれ気味なのを

おくびにも出さないんだぜ。


「ありがとう、ヒメカ……ゆりちゃんと一緒に、私の後ろに、

下がっててくれる? すぐに、カタを付けるから」


と、シリアス顔で、私は、抱きかかえているゆりちゃんを、ヒメカに預ける。


「それは───うん、わかった」


さっき私が放った、本気念動ビームが完全に防がれていたからか、

ヒメカは、一瞬、異論を唱えようとしたようだった。

けれど、私の目を見て、何も言わずに、後ろに下がってくれる。


うっふ、恋人同士だからこそ通じてる、以心伝心ってヤツ?

愛を止めないぜ! 走り続けるぜ!

ACTIVE♡HEART!!!(ヒメカ愛・暴走中)


「……ふんっ! 我が〈神〉の護りを破れなかったくせに、

いきがったことをほざくものだ……!」


私の言葉がまたまた気に障ったのか、頬をピクつかせながら、

宮内がそう嘲笑してくる。


はーい、イキイキにイキってま~す♪

だってさあ─────大好きなの前だと、カッコつけたくなるじゃん?


「はあ~? 借り物の〈力〉で武張ぶばってらっしゃるくせに、

他人がいきがってるとかほざくの、どこのどなたさまなんですかねえ~?

それに、聞いてなかったのかなあ~? さっきは、手加減してやってたって。

あ、そっか~、それがわかる実力が、全然ないんだったね♪ メンゴメンゴ♪」


おっとっと、つい、メスガキ煽りをやっちゃうな。


「ふざけおって……! 私に勝てると思っているのか! それとも、

逃げる算段でも思いついたか────わかっておらんようだな……

救世主メサイア〉たる私から、逃げられると思うなよっ!」


宮内は、怒りに満ちた声でそう吠えると、〈旧神の印章(エルダー・サイン)〉を、

改めてこちらに向かって突き出してきた。


は? やっぱ、護符ソレだよりなんじゃん。

やれやれだぜ、これだから、三下雑魚は、芸がない。


聖●士(セイ●ト)〉に同じ技は通用しないし、

タネも仕掛けも割れた手品に、価値はない。

わかってないよな……ホント。


───────────逃げられないのは、おまえのほう。


邪神ラスボス〉の恐ろしさ、思い知らせてくれる………!!!

クトゥルフさん「せやな~大魔王からは逃げられんし、その上のワイから逃げられるワケないわな~」(・∀・)


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