転27 〈邪神〉だけど、煽り続けてレスバする。
主人公とヒロインのイチャ♡イチャ♡が書けないのって、ツラいですよね……
(;ω;)
ああ~っ! そうか、そういうことだったのか──────!
宮内司教が、これみよがしに見せつけてくる〈旧神の印章〉。
〈邪神〉知識のある私は、その護符の存在に戦慄しながら、
いろいろと合点が行っていた。
〈旧神の印章〉は、私の本体、〈邪神〉クトゥルフを海の底に封印した、
〈神〉……〈旧神〉らがこの地球に遺した、〈力〉の残滓である。
それらは、護符や、武器など、なんらかの形を持って、地球上の
世界各地に散らばっているようだった。
私たち〈邪神〉勢に対する、抑止力となるように。
要は、地球で復活した〈邪神〉らやその眷属が、
簡単に地球で好き勝手暴れたりしないようにするための、
嫌がらせの置き土産だ。
〈旧神〉らが、直にバラ捲いていったものもあれば、
人間達がこしらえた模造品もある。
宮内司教が所持しているのは、おそらく、本物に違いなかった。
困ったことに、〈旧神〉は、〈邪神〉らの天敵、その効果は、
抜群である。
〈旧神〉の〈力〉とは、単純に、相性が悪い。
風水概念で言えば、〈相剋〉の関係。
ぶっちゃけ、〈邪神〉らの〈力〉は、属性負けしてる。
本体の名誉のために言っておくと、戦いづらいだけで、
〈旧神〉相手なら即・負けが確定するわけではない。
(〈旧神〉らも、本体に勝つのが
簡単ではないからこそ、罠に嵌めて封印したんだろうから)
ゲーム的にたとえるなら、攻撃&防御のダメージ補正が、
マイナス方向に大きく付いてしまうような感じだろうか。
〈邪神〉クトゥルフ───本体ならば、総合的な強さで、
〈旧神〉らとも、互角に渡り合える……はずである。
いわんや、〈旧神の印章〉のような、〈力〉の残滓ごときには、
本体は、なんの影響も受けることはない。
だが、私のような分霊体、しかも細分化された魂の、人間の転生体や、
〈力〉の弱い〈邪神〉の眷属たちだと、話は違ってくる。
影響、受けまくりだ。
それは、先ほど、私の全力全開☆念動光線を、障壁で
全部防がれたことで、明白である。
宮内司教の護符は、それ自体に強力な魔力が宿っているわけでは
ないけれど、所有者が使用した魔法の威力を、
倍増させる〈力〉があると見た。
そう考えると、宮内司教の『わずかな魔力しか使っていない』云々の
発言が、腑に落ちる。
どのような経緯で、宮内司教が、効果絶大なチート・アイテム、
〈旧神の印章〉を得たのかはわからない。
けれど、その護符を持ち、魔法の威力が飛躍的に倍増したことで、
自分が〈救世主〉として〈神〉に選ばれた、と、勘違いして
しまったであろうことは、これまでの言動から、容易に想像できた。
ナントカに刃物、ってヤツだよなあ、コレ………。
はた迷惑な狂信者に、随分と強力なアイテムが、
渡ってしまったものだ。
まあ、自分で〈救世主〉と勘違いしてるのは、
別にどうでもいい。
『おまえがそう思うのなら、そうなんだろう。お前ん中ではな』で、
済む話だからである。
が、その勘違いを基に、周囲を巻き込む行動を起こされちゃ、
たまったもんじゃない。
エストさんから聞かされてる、後ろ暗い研究の話や、ゆりちゃんを
拉致ろうとしてるのも、その勘違いムーヴが原因に違いなかった。
宮内司教の、魔力が少ないくせに、強力な魔法が使えるカラクリと、
その行動原理が判明しても、現在の不利な状況に、変わりはない。
『こいよ宮内! そんな護符なんか捨てて、かかってこい!』なんて
安い挑発で、『野郎、ぶっ殺してやる!』と護符を投げ捨てて、
チョロく接近戦に応じてくれれば助かるんだけど。
現実に、そんなベ●ット展開はありえないか。
さて、ならば、どうするか………。
①戦わないかぎり、負けることはない。
ひとまずは、逃ぃぃぃげるんだよぉぉぉぉぉっ!
②私たちからの連絡がないことを、
不審に思ったエストさんの救援を待つ。
③クールでかっこいいあゆらちゃんが、必勝の方法を考え出す。
④現実は非情である。打つ手ナシ! 死ぬしかないな! ポ●ナレフ!
④は論外。
③は、今のトコ無理ゲー。
全力の念動光線が防がれたんだから、
なにしても通じないだろう。
①と②の合わせ技が、一番、生存率高いかな?
携帯端末が繋がる場所まで逃げて、エストさんに助けを求める。
悪党どもは、秘密裏に動いているのだから、同じ〈聖導庁〉の
司教であるエストさんにまで、大きく出ることはできまい。
最悪、私が宮内司教を足止めして、ヒメカとゆりちゃんだけでも、
逃げてもらおう。
よし、このセンで行くか──────!
私がそう覚悟完了していると、後ろから、ヒメカが声を上げてきた。
「なにかと思えば、聖遺物を手にしたから、〈救世主〉を自称して
いるというわけですか? それこそ、笑止ですね。あなたは、借り物の
〈力〉を誇って、優越感に浸っているに過ぎない。
“虎の威を借る狐”もよいところです」
そこまで言ったところで、ヒメカの言葉に、笑いが含まれるのを感じる。
侮蔑の色が強くこもった、嘲笑のように聞こえた。
「ひょっとして、〈司教〉の地位も、その聖遺物の〈力〉で
手に入れたのでは? 恥を知っているのなら、早々に〈聖導庁〉を
辞すことをお勧めしますが」
ええ~っ!? ヒメカまで、そんなこと言っちゃうの~っ!?
私のメスガキモードに感化されちゃった~!?
さっきの、私のメスガキ煽りもたいがいだったが、ヒメカの、
丁寧な言葉遣いでの舌鋒が、鋭すぎる……!
ホテルでの、エストさんへの辛辣な物言いや、宮内司教への
苛烈な応対を見てはいたけれど。
ヒメカの、非友好的な相手に対する容赦のなさには、改めて、
驚かされてしまうんだぜ。
────浮気とかするつもりは、さらさらないんだけど、絶対にせんとこ。
密かに、そう誓ってしまう私であった。
一方、ヒメカの嘲笑を受けた宮内司教は、見せつけてきていた
護符を下ろし、顔を、さらに真っ赤にしている。
……今度は、本当に図星だったのかもしれない。
強力な魔法を使ってくるタネ明かしは済んだから、これ以上、
宮内司教を怒らせる必要はないのだが────。
ん? 待てよ?
そうだ、ゆりちゃんの〈予知夢〉を使って、こいつらが
どんな研究をしてるのか、わからないんだった。
今なら、ついでに口を滑らせるかも?
時間稼ぎがてら、メスガキモードを続行して、そのへんも追求してみるか!
「やぁだぁ~♪ オジサンってばぁ、自分の実力で、〈司教〉に
なったんじゃないんだぁ~♪ プププ♪ そっかぁ~、でも、
しょうがないよねぇ♪ ゆりちゃんみたいな、本っ当ぉ~に
小さな子供を誘拐して、自分の利益のために、〈予知夢〉を
悪用しようとしてる雑魚だもんねぇ~♪
それで〈救世主〉名乗るとかぁ、生きてて
恥ずかしくないのぉ~? ザァ~コ♪ ザァ~コ♪ きっも♪」
最後のは、ただのテンプレメスガキ罵倒になっちゃった。
JKふたりに煽られまくった宮内司教は、憤怒にまみれ、
〈旧神の印章〉に物を言わせた魔法攻撃を撃ってくるかな?
そう身構えていたけれど、宮内司教の顔に、ニチャった笑みが
浮かんでいるではないか。
顔色自体は、激おこで、真っ赤なままだけれども。
「〈予知夢〉を悪用? 馬鹿馬鹿しい。そのような、次元の低いことを
していると、そう邪推して、〈救世主〉たる私の邪魔をしているわけか」
……コイツ、この期に及んで、自分のことをまた
〈救世主〉自称してきたぞ。
メンタル強ぇな────誉め言葉じゃないけど。
「邪推もなにも、事実でしょう。他になにがあるというのですか?
あらかじめ、ひとつ、言っておきますが。言い逃れは見苦しいだけですよ」
私が内心で、宮内司教に対して軽く呆れていると、ヒメカが
冷ややかな声で、ピシャリと言い切った。
う~ん、引き続き、容赦がないぜ。
冷徹な言葉を叩きつけられた宮内司教の口元から、
浮かんでいたニチャり笑いが消える。
「小娘が、なにも知らぬくせに、偉そうな口を利く……!
これだから〈魔法少女〉などという、下賤で愚劣な異教存在を
野放しにする政策は間違っているのだ! 〈神〉に選ばれし者の、
崇高な使命も理解できぬ愚昧さ! 万死に値する……!」
────ゴメン、ちょっと、何言ってんだかわかんない。
口角泡を飛ばす、と言った、荒い口調でヒメカを罵ってきた
宮内司教(あとで絶対殺す)だが、その内容は、意味不明であった。
自分を〈救世主〉だと信じ切ってる輩が、非合法なおクスリを
キメすぎて、支離滅裂になってるようにしか見えないんだが?
「私はっっっ!!! この地上に平和をもたらす、
ただそのためだけに生きているのだっっっ!!!」
…………………………………………………………………………………………。
はっ!? イカンイカン、あまりの突拍子のなさに、一瞬、
呆けてしまった。
だって、相手の正気を疑ってたトコロに、寝言としか思えない台詞が
飛び出てきたんだもん。
人間、あまりにも理解不能なことを脳が処理しようとすると、
思考停止っちゃう、って、本当なんだなあ──────。
……宮内司教の、誇大妄想だか、視野狭窄だかに付き合うの、
時間稼ぎだとしても、しんどくなってきちゃったわ。
でも、あゆら、頑張る!
愛しのヒメカと、幼いゆりちゃんの命が懸かってるからね!
「えぇ~? でもぉ~、そんな風にぃ~、なんだかんだ
カッコつけてもぉ~、結局、ゆりちゃんの〈予知夢〉の〈力〉を
借りなきゃ、なにもできないわけなんでしょぉ~? 大丈夫、大丈夫♪
自分が弱者男性なことぉ、そんなに隠そうとしなくてもいいんだよぉ~♪
もう、バレバレだからぁ♪ ごまかすの、必死すぎぃ~♪」
とことんしつこく、メスガキ煽り。
話の流れからして、こうやって自尊心をつつけばつつくほど、
向こうは自分の正当性をペラペラ喋ってくれるような気がするからして。
けっして、メスガキモードやってんのが、
気持ちよくなってきてるわけじゃないのだ。
私の煽りに、宮内司教は、こめかみをピクつかせながら、口を開いてくる。
「………“〈力〉を借りる”だと? その娘の〈力〉を最大限に
活かせるのは、〈救世主〉である、私だけ。ゆえに、一方的に〈力〉を
借りているわけではない。言わば、相乗効果を生み出せる、
唯一の人間……つまり、〈運命〉のパートナー!
その私を、“弱者男性”などと───見当違いもはなはだしいっっっ!!!」
うわっ!? マジキモすぎて、背中がゾワッときた……!
オッサンが幼女を相手取って、
“〈運命〉のパートナー”呼ばわりしやがったよ!?
2-4! 通★報! 普通に通報案件!
おまわりさん、コイツです!
もう、逃げるとかじゃなくて、一刻も早く、目の前の男を、
この世から消し去らなきゃ、ダメな気がしてきた─────!
「要は、ゆりちゃんの〈予知夢〉を、〈司教〉の立場でも以て、
利用するってだけだろ? そんなもん、テメーじゃなくても
できるわアホンダラぁっ!!! なにが〈救世主〉だっっっ!!!
ヘソで茶が沸くわっっっ!!!」
もう、メスガキモードもメンドくさくなって、素で怒鳴りつけてしまう。
しかし、今度の宮内司教の反応は、静かなものだった。
その顔に、あのニチャァ…とした笑みが、復活する。
「まったく、愚かな小娘どもだ────。真実が、見えていない、
知りえていない、わかっていない……! その程度の認識、
幼稚な正義感で、私の平和の使徒たる道を邪魔するとは……。
つくづく、愚か。愚の骨頂と言う他ないな」
ふう、と、わざとらしく、溜息をついてみせる宮内司教。
「……クールダウンしてる風みたいだけど、お顔、真っ赤なままだよー?
ヒトを馬鹿にするのはいいけどー、見栄張って大物ぶるの、
やめてもらっていいですー? グダグダと口で取り繕っても、結局、
ゆりちゃんの〈予知夢〉だよりで、なんかやってんのは
変わらないんだからさ~」
おっと、またメスガキっぽい煽りをやっちゃった。
宮内司教は、一瞬、口元を歪ませたが、すぐに余裕ぶって、
ニチャった笑いを浮かべ直す。
「────仕方ない。愚かな小娘たちよ、真実を知るがいい。
さすれば、私の〈救世主〉としての使命も、理解できよう」
「あ、そういうのいいです。間に合ってるんで」
路上での宗教勧誘をお断りするノリで、間髪入れず拒否。
それがおかしかったのか、後ろでヒメカが小さく噴き出すのが聞こえた。
「………真実を知り、理解すれば、その子供を、進んで私に
差し出すことになるだろう」
「は? ありえないし! 誰が好きこのんで、幼児を犯罪者に引き渡すか!」
私の速攻拒否にもめげず、言い直してきた宮内司教に、怒りの即返答。
犯罪者呼ばわりがまた気に障ったか、宮内司教は、
いよいよニチャった笑みを消し、眉間にしわを寄せながら言葉を続けてくる。
「その子供は、〈予知夢〉だけでなく、さらに素晴らしい〈力〉を持っている」
私たちに知らせるのが嫌そうな、淡々とした、
だが、はっきりとした声だった。
「〈具現夢〉─────その子供が〈視〉た夢は、現実に成る。
おそらく、有史以来、初めて人の持ち得た、奇跡の〈力〉……!
それが、その子供の、真の〈力〉なのだ……っっっ!!!」
ΩΩΩ<<<ナ、ナンデスッテー!?