転16 〈邪神〉だけど、正体明かしあってイチャつく。
察しのいい方はおわかりでしょう。そう、「魔●少女」デザインの魔法少女です///
おっとぉ、そうキたか…………!
ヒメカの〈魔法少女〉カミングアウトに、
苦笑しそうになるのを、なんとかこらえる。
何故、〈魔女〉という種族名ではなく、
〈魔法少女〉と名乗ったのか。
それはたぶん、〈魔法少女〉のほうが、畏怖感が薄いだろう、
と思ったのだろう。
まして、相手は、ゲーム好きの、オタクな私だ。
〈魔女〉より、〈魔法少女〉であるなら、正義の味方っぽい響きが
あって、受け入れやすいのではないか。
わざわざ、天使寄りのコスチュームにまで変身してみせたのも、
そう考慮してのことかもしれない。
──────くうぅっ! けなげカワイイっ!
しかもなんですか、その〈魔法少女〉コスのデザインは……っ!
ヒメカのおっぱい! お尻! 強調するような!
けしからんっ! ありがとうございますっっっ!!!
はっ、いけない。
グラビアアイドルを地で行く、ヒメカのボディラインを、
まじまじと凝視しまくってしまった。
ヒメカは、私がどんな反応をするのか心配な様子で、
黙ってこちらを見つめている。
〈魔法少女〉発言と、今の自分の格好が恥ずかしいのか、
顔が赤いままだ。
「ヒメカ─────」
「……うん」
「滅茶苦茶かわいいっ」
「えっ!?」
「キスしていい? ってゆーか、キスしたい。いや、する」
「ちょっ……!? あゆちゃ────」
欲望全開でヒメカに肉迫し、強引に唇を奪う。
こちらから一方的にキスするとなると、私の身長では通常、
背伸びしても、ちょっと届かない。
なので、身長差は、飛行能力によって、少し浮くことでカバー。
ヒメカの柔らかな唇を、無心で堪能しちゃう私だ。
本日は、調子に乗って、深いキスを………。
────うん、ヒメカ、深いキスも受け入れてくれたので、続けちゃおう。
もちろん、ヒメカを抱きしめて、体のあちこちを
まさぐっちゃうのも忘れない。
ヒメカのほうも、最初は困惑していた感触だったけれど。
途中から、右手に持っていた杖を脇に放り立てて、
抱きしめ返してきてくれた。
互いに満足いくまで、キスを続ける。
───────────やがて、呼吸を合わせたように、
ほう……と一緒に唇を離した。
「もう……あゆちゃん──────真面目な話、してたのに………」
艶めかしい息を吐きながら、ヒメカがやや不満げな声を出してくる。
「ごめん。ヒメカが、あんまりかわいすぎたから、我慢できなかった」
私は着地して、わずかに身を離し、本音を伝えた。
「ん……も、もうっ、あゆちゃんったら─────」
そう短くもらす言葉こそ、怒っているようだが、表情も声のトーンも、
まんざらでもなさそう。
う~ん、かわいい。
〈人避け〉の結界魔法の中ということもあるし、このままヒメカを押し倒したい。
そして、生やせるようになった男のアレに、さっそく活躍の場を与えたい。
って、またまた、いけないいけない!
昨日、ママと、することしちゃったせいで、私のピンク色の精神が、
濃度マシマシでパワード・ピンク(?)になっちゃってるみたいだ。
早朝から、ヒメカを想ってハッスルしたこともあって、
歯止めが利いてないかも。
………昨日の今日で、イキナリそこまでいっちゃダメであろう。(戒め)
自重、自重、速攻突貫、アクセルべた踏みは厳禁・NG、事故の元。
話を、元に戻すことにしよう。
「それで、ヒメカが〈魔法少女〉だから、昨日の夜、
空を飛んでた私に気づいた、ってこと? ヒメカが、
さっきの写真を撮ったの?」
「────写真を撮ったのは、わたしの使い魔。夜の街を、
空から哨戒させてたら、空を飛ぶ正体不明の存在を感知して……使い魔に、
現場写真を撮らせてみたら、写ってるのが、スクール水着姿の
あゆちゃんだったんだもの。写真を見た時、すごく、驚いたんだからね?」
まあ、そうだろうなあ……。
昼間に、本当の意味で十年ぶりに再会して、キスしてた相手が、
スク水で空飛んでるとか。
そんなの、ぶっちゃけありえないよな。
しかし、〈使い魔〉が写真撮ったんだ……。
〈使い魔〉も写真機器使いこなすとは、まったく時代はデジタル。
それにしても、いつ、どのあたりで写真を撮られたのか、
全然気づかなかった。
おそらく、私に掛けられているという、〈魔力隠蔽〉の魔法の
せいもあるのだろう。
その効果の弊害で、私は、周囲にある魔力を、ほとんど感知できない。
〈使い魔〉は、魔力を素に動く存在だ。
私がそれを感知できなかったのは、当然と言えば、当然である。
………ヤバくない、コレ?
ママは、『〈敵〉から狙われにくくなるように、〈隠蔽〉掛けてる』
みたいなこと言ってたけど。
逆に、スゴい弱点になってる気がする。
このことは、あとで要検討、っと。
今は、ヒメカとの話が、最優先事項だ。
「ごめん。私、昨日の放課後、突然、覚醒しちゃったから。
……ヒメカには、私が〈邪神〉の転生体ってこと、いつかそのうち、
話すつもりだったんだけど────ほら、話が、超展開すぎて、
信じてもらえなさそうじゃない? それがまさか、その日のうちに、
誰かに見つかるとか、思ってなかったし……」
「あっ、ううん、あゆちゃんを責めてるわけじゃないの。
その……わたしが〈魔法少女〉になって、街を守る活動を始めてから、
プライベートで関わりのある人が、超常的な事案に絡んできたことが、
初めてだったから。純粋に、驚いちゃって。それが、わたしの一番大切な
婚約者だったから、なおさら……ね?」
うっひょぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっっっっっ!!!
聞きました、奥様!? “一番大切な婚約者”ですって!!!
ヒメカの、その言葉が嬉しすぎて、顔をニヤつかせそうになる。
ま、まだダメだ……! こらえろ……!
真面目な話、続行……!
「……ヒメカは、その、〈魔法少女〉の責務とか、使命とかで、
私を捕まえたり、やっつけたりしたほうが、いいのかな────」
「えっ、どうして?」
「えっ」
質問に質問を返され、言葉に詰まる。
「あ、だ、だって、私、〈邪神〉の転生体なんだよ? 分霊の、
転生体だけど───人間の〈敵〉になっちゃうかもなんだよ?」
〈魔法少女〉自称はさておき、ヒメカが、この街を守っているのは、
本当なのだろう。
その使命がどういうものなのか、詳しくはわからないけれど、人間社会に
害を為しそうな存在は、排除するのではないか………。
単純に、そう思った次第である。
「あゆちゃん、『今の地球人類には、手出ししないで』って、
〈邪神〉クトゥルフに言ってくれたんだよね? 人間の〈敵〉は、
そんなお願い、しないでしょ?」
「あ、うん、それは、そうだけど……」
「それとも、あゆちゃんは、人間の〈敵〉になるつもりなの?
悪いこと、企んでるの?」
「いやっ! ないない! 企んでないし、人間の〈敵〉に
なるつもりもないよ!」
ヒメカの問いかけを、慌てて否定する。
そんな私に、ヒメカは、にっこりと笑顔を見せてきた。
「うん。それなら、なにも問題はないでしょう?」
「え────な、ない、のかな? ヒ、ヒメカは、それでいいの……?」
「いいよ」
ためらうことなく、ヒメカは即答してくる。
「あゆちゃんと、ずっと一緒にいられるなら、なんだっていい」
そう言いながら、ヒメカは、私の両手に、指を絡めてきた。
それから、互いの掌を合わせて、私の目を、見つめてくる。
「────あゆちゃんは、これから、どうしたいの?」
「私も、ヒメカと、ずっと一緒にいたい」
ほぼ反射的に、即答していた。
私の心の中で、それだけは明確な、たったひとつの真実だから。
ヒメカが、頬を紅く染めて、嬉しそうに微笑む。
「それじゃあ、やっぱり、なにも問題ないね」
「……うん、そうかも──────」
ヒメカの言葉に、笑ってうなずいた。
私の胸に、安心感が、広がっていく。
うん、そうだ、ヒメカに拒絶されないなら、なんの問題もない。
「────〈邪神〉少女と、〈魔法少女〉のカップルかあ……私たちが
出会ったのって、なんか、〈運命〉、感じちゃうね」
「えっ、今ごろ?……わたしは、そんなの関係なくても、あゆちゃんは、
〈運命〉のひとだ、って、ずっと感じてるのに」
「あっ、やっ、違くて! ますます! ますます〈運命〉を
感じちゃう、って意味!」
わたわたと、焦って言葉を補足する。
「だって、私の心の中で、ずっと特別で……それで、
また会えて────あの頃のまま、お互いに、“本当の本当に好き”、
で……ヒメカが、私の〈運命〉のひと、って、私も、思ってるよ。
そのうえで、私の正体と、ヒメカが〈魔法少女〉、ってことを知ったら、
出会うべくして出会った、っていうか───ふたり、一緒になるのが、
本当、決まってたみたいだな、って………」
「うん……」
「私とヒメカは、運命づけられたふたりじゃないか、って、
改めて、すごく、そう思って────その、
うまく言えないんだけど……んんっ!?」
語彙力がないながらに、自分の胸の内のほどを、精一杯伝えようと
していたところ、ヒメカから、唇をふさがれた。
しかも今度は、ヒメカのほうから、深いキスも、始めてきたではないか……!
言葉でいろいろ伝えようとしてた思考を、全部放り投げて、
私はヒメカのキスに、全力で応える。
具体的には、深いキスをより深く、強く求めて、応えて、
ヒメカの体を抱きしめまくった。
………〈人避け〉の結界魔法があるからとはいえ、
朝っぱらから、こんな甘々イチャイチャしていいのかしら。
そんなことを、頭の片隅でうっすら考えたけれど────
ふたりが幸せなら、OKです!
ひとり、心の中でそうサムズアップして、ひたすらヒメカとのキスを、
味わい続ける私だ。
────またひとしきり、キスを堪能したあと、
どちらからともなく、唇を離す。
それから、私たちは、ぎゅっ、と抱きしめ合った。
「あゆちゃん─────好きだよ。大好き」
「うん……私も、大好きだよ、ヒメカ」
別れ話でもなかったし、正体バレしてもヒメカは受け入れてくれたし。
心配してたことが、全部杞憂に終わって、めでたしめでたし、である。
ああぁーボカァ、幸せだなァ~、と、安心して、ヒメカとの
抱擁を味わうのだった。
すると、ヒメカが、ポツリと尋ねてくる。
「……ねえ、あゆちゃん」
「うん?」
「あゆちゃんの匂い、昨日と違うね?」
「えっ」
ドキリンちょ!
思わず私は、狼狽の声をもらしてしまった。
ヒメカが、すんすん、と、私の髪に鼻を当ててくる。
「────うん、やっぱり、昨日と違う」
ふぉえぁっ!?
断定するヒメカに、なんと応えたものか、判断に迷った。
匂いが違う原因の心当たりが、ママの手による、
全身洗浄だったからである。
さらにその全身洗浄された理由が、ママとチョメチョメしまくった
結果なので、そりゃあ、うろたえちゃう、っつーの……!
「あ、う、海に入ったあと、いつもと違うシャンプーで髪を洗ったから………」
嘘は言ってない。
けど、うしろめたさ100%のため、声がちょっとうわずっちゃう。
「そうなんだ────ボディシャンプーも、違うのを使ったの?」
「あ、う、うん……」
うちのまゆちゃんといい、みんな匂いに敏感だな!?
私がそういうの、気にしなさすぎなだけかしらん?
動揺してるところを、このまま質問攻めされ続けたら、
いらんことを口走りかねない。
話題を変えなきゃ。
「ところで、ヒメカ」
「なあに?」
「今さらなんだけど、この〈魔法少女〉の衣装、他の人から
見られても、大丈夫? 朝でも、ここの公園、けっこう人が通ると思うよ?」
〈人避け〉の結界魔法が掛けられていると知りつつも、
そ知らぬ顔で指摘してみせる。
「それは心配しないで。魔法で〈結界〉を張って、わたしたちが
見えないようにしてるし、他の人が、近づけないようにしてるから」
うん、知ってた速報~。
そうなんだ、と、とぼけてうなずきながら、続けてヒメカに、訊いてみる。
「それと、この衣装……センシティヴすぎない? いや、無茶苦茶かわいいから、
私的にはいいんだけど」
言葉を選んで、ヒメカの魔法少女コス自体について、追加指摘。
できることなら、『このエロさで〈魔法少女〉は無理でしょ』と
言いたいところだ。
私の言葉に、ヒメカは、顔を真っ赤にして、恥ずかしそうに、
もじもじと体をわずかに揺らす。
「うん……肌の露出が多くて、体の輪郭が出ちゃうから、わたしも
本当は恥ずかしいんだけど────この衣装自体から魔力が
放射されてて、体を包む防御フィールドを展開してるの。だから、
分厚い装甲服とか、鎧を着込むより安全で、負傷しにくくなってるんだよ」
「負傷って。ヒメカ、危険なことしてるの? なんか、
悪魔とかと戦ってたり……?」
〈邪神〉の転生体がなに言ってんだ、という感じだけど。
ヒメカは、自分のことを“この街を守る〈魔法少女〉”である、と言っていた。
ならば、“街を脅かすなにか”が存在する、ということである。
「────────うん、戦ってる」
ヒメカがそう答えるまで、わずかな間があった。
本当のことを私に言うべきかどうか、迷ったのかもしれない。
「〈禍威魔〉って呼ばれてる、人間に害を為す存在がいるの。あゆちゃんが言うような、悪魔みたいな存在が。わたしは、それらと戦ってるんだ」
〈禍威魔〉。
私の〈邪神〉知識にはない単語であった。
現代において、〈魔女〉たちが新たに作った、造語なのかも?
「命がけなんだよね、それ。きっと」
「……うん。でも、心配しないで。わたし、すごく強いんだよ?」
そう言って、笑ってみせるヒメカ。
〈魔力隠蔽〉の魔法効果の影響で、私にはヒメカの
魔力量がどれほどのものか、感じ取ることはできない。
けれど、今の姿を見てなんとなく、ヒメカは〈魔女〉の界隈で、
トップクラスの実力を誇るのであろう、と、察していた。
──────婚約者の贔屓目かな?
「ヒメカ、私、かなり強い〈力〉を使えるようになったんだ。
ヒメカと一緒に、その〈禍威魔〉っていうのと、戦えるかもしれない」
「それは駄目」
「えっ……」
即答!?
ピシャリ、と拒否され、結構ショック。
「あゆちゃんの気持ちは嬉しいけど、〈禍威魔〉と戦う使命に、
大切なひとを巻き込みたくない」
わっほう! “一番大切な婚約者”に引き続き、“大切なひと”の
お呼びもいただきました!
ありがとうございます!
って、待て待て、喜んでるだけじゃイカン。
「それを言うなら、ヒメカだって、私にとって、世界で一番、大切な
ひとなんだよ?────強い〈力〉に覚醒したのも、ヒメカの助けに
なるためかもしれなくて、それこそ、一緒に戦うのも、
運命じゃないか、って思う」
真面目モードを続行して、キリリと言葉を返す私。
「あゆちゃん……」
見れば、ヒメカの瞳が、潤んでいる。
少し気恥ずかしかったけれど、真剣な気持ちで言ったこと
だったから、ヒメカの心に、響いてくれたようだ。
「────あゆちゃんの、そう言ってくれる気持ち、本当に、
嬉しい……。でも、駄目だよ。魔法少女の活動は、基本、
夜遅くになるから。あゆちゃんのご家族に、心配をかけさせちゃう」
ああ、そういうことも考えなきゃいけなかったか。
JKが深夜に外出とか、普通の親なら許さないよね、確かに。
「それなら、大丈夫だよ」
「え……?」
「んっと、見てもらったほうが早いかな。よっ、と────」
私は、軽い動作で、大きな水の塊を発生させ、〈水幻影身〉を精製する。
数秒と経たず、私の隣に、私そのものとしか見えない、
私の偽物が顕現した。
「水に〈形態模写〉の魔法を……!? この精度のものを、
こんな一瞬のうちに……!」
なんかヒメカ、すごい驚いてる。
あれ、私、またやっちゃいました?
……などと、チートキャラモノローグしちゃうけども、
分霊体とはいえ、〈邪神〉パワーによるものだしなあ。
ヒメカのような魔法のエキスパート、〈魔女〉から見ても、
高度な魔法の行使だったのかもしれない。
と、それは今、置いといて。
「夜に、家を抜け出す時、この魔法で作った影武者人形を部屋に
寝かせとくから。よっぽどの魔法の使い手じゃないかぎり、
これが水で出来た人形だなんて、見破れないと思う。
うちの家族が心配することもなくなると思うけど………どう?」
「う、ん……でも────」
ドヤァ、と“人形でアリバイ作戦”を語ってみせたが、なおも、
ヒメカの返答の歯切れは悪い。
けど、もうひと押しのようだ。
私は、〈水幻影身〉を水に戻し、バシャリと地面にこぼし捲く。
そのあと、ヒメカに言い募ってみた。
「……じゃあ、ヒメカ、一回だけ。ヒメカが〈禍威魔〉っていうのと戦う時、
一回だけ、一緒に行かせて? それで私が、足手まといになったり、
使い物にならない、ってヒメカが思ったなら、二度と、一緒に
戦うなんて、言わないから」
「────ずるいよ、あゆちゃん……。それ、絶対に、あゆちゃんが
大活躍しちゃう流れじゃない……」
ヒメカは、そんな抗議めいたことを口にする。
私の〈水幻影身〉を見て、私の強さを、おおよそ判断できたのだろうか。
「いや、そんなのわかんないよ? 〈禍威魔〉っていうのが、どんな
相手かわかんないし。私、実物を見たら、泣いて逃げ出しちゃうかもだし」
これは、おどけてみせたのではなく、思ったことを素直に
述べただけである。
怖い系クリーチャータイプだったら、ある程度我慢できるけど、
グロ系ゾンビタイプのだったら、ちょっと耐えられないかも。
「私って正直、ビビリのヘタレだからさ────それでも、ヒメカの
助けになりたいから。一度、挑戦させてほしい。お願い」
ヒメカの目をじっと見つめて、そう頼み込む。
ヒメカは数秒、黙って見つめ返してきたあと、仕方ないなあ、
といった感じで両肩を落とした。
「もう────わかりました。それじゃあ、あゆちゃんは、
わたしの助手、〈魔法少女〉見習いということで、〈禍威魔〉退治に
同行してもらいます」
「あ、うん……!」
その〈魔法少女〉設定、続けるんだ?、と思いつつ、笑顔でうなずく私。
そんな私に、ヒメカは、たしなめるような強い口調で、言ってくる。
「ただし! わたしの言うことには、絶対、従うこと! あゆちゃんが、
わたしよりどんなに強いとしても、〈禍威魔〉との戦闘では、
なにが起こるかわからないから。あゆちゃんには、安全第一で
行動してもらいます────いい?」
「う、うん、わかった。ヒメカの言うことを聞く」
コクコクと、母親の言いつけを聞く幼児のごとく、うなずいてみせる。
ヒメカの表情は真剣そのもので、私に反論を許さないような、
静かな迫力があった。
……でも、普段の天使笑顔を見せるヒメカも好きだけど、
厳しめの表情も、かっこよくて好きだなあ~。
なんて、心の片隅で、ニヨニヨと笑ってしまったり。
バカップル思考かな? ふひっ!
と、頭の悪いことを思い浮かべて、ひとり密かに悦っていると、
私の超聴覚が、気になる足音を捉えた。
すぐさま推定した足音の主は、おそらく子供。
何故、気になったかといえば、迷いのない速度で、まっすぐこちらに、
私とヒメカのほうに、走ってきているからだった。
「────ヒメカ。私たち、魔法の効果で、他の人たちからは、
見えてないんだよね?」
「え……? うん、そのはずだけど」
そう、ヒメカの張った〈結界〉魔法の効力によって、私たちふたりの
所在は、今、誰にも気取られることはない。
だというのに、子供の足音は、一直線に、こちらへ向かってきている。
そして、その子供を追う、何者かの足音も聴き取っていた。
数は四人、全員、成人男性。
そちらへ目を向けると、今まさに、視線の先の空間が、
波間を打ったところだった。
ヒメカの〈結界〉内に、足音の主が、飛びこんできたのである。
幼女であった。
服装は、制服のような白の半袖Yシャツに、紺色のスカート。
肩口まである黒髪で、ふたつに分けた髪房を、
途中で束ねるタイプのツインテール。
幼いその顔には、必死の表情が浮かんでいた。
その目と、私の目が合う。
女の子の目が大きく見開かれて、感情の光が点ったように見えた。
それは、安堵、だっただろうか。
女の子はスピードを緩めることなく、全力疾走のまま、
私の胸に飛びついてきた。
私はそれを、危うく抱き止める。
助走つきとはいえ、身長約150センチの私の胸に
抱きついてくるとは、幼女ながら、なかなかの大ジャンプだ。
〈邪神〉覚醒で肉体が強化されてなかったら、その勢いで、
押し倒されてしまっていただろう。
それにしても、なんと言って反応したものか。
突然の闖入者にかける言葉を選んでいると、幼女のほうが、
先に大声を張り上げてきた。
「たすけてっっっ!!! 〈みず〉のおねえちゃん……っっっ!!!」
ょぅι゙ょがあらわれた!




