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邪神転生ガール  作者: megajoy
15/32

転15 〈邪神〉だけど、正体を告白する。

~前回までのあらすじ~日明香ちゃんに別れ話を切り出されると思って、あゆらちゃんのSAN値がピンチ。

電車移動時は、いつもなら携帯端末をいじったりしてるところだけど、

とてもそんな気分じゃなかった。


なんだろう、なにがヒメカの気を変えさせたんだろう。

まだ、別れ話を切り出されると決まったわけではないのに、

考えてしまうのは、そんなネガティヴなことばかりだった。


………ヒメカの電話に出た時の声からして、明るい話題は、

期待できない。

ガッツリ、真面目な、できるなら話をしたくなさげな

雰囲気だったから。


たとえるなら、漫画の連載の打ち切りを告げる編集者みたいな声。

いや、そんな声、実際に聞いたことないから、

本当はわからないけど、たぶんそんな感じ。


想いを遂げて、キスして、一日も経ってない、

っていうのに─────!

いきなり破局とか、悲しいなんてもんじゃない!


でも、ヒメカがそう望むなら、仕方ないか………。

あっ、ダメっ、そんなこと考えただけで、もう泣いちゃいそうっ!


しかし、本当に、別れ話だったら、なにが原因なんだろう。

ヒメカの心を、急激に醒めさせる、なにかがあったのだろうか。


─────あっ。

ヒメカは、魔法が使える〈魔女〉だ。


ひょっとしてだけど、〈遠見〉の魔法とかで、本日早朝、

私のハッスル(意味深)を見ちゃってたとか……!?


『あゆちゃん!? なんであゆちゃんの股間に、男のアレが生えてるの!?

わたしを騙したの!?』


いやああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ──────────っっっっっっっ!?

違う! 違うのヒメカ! 騙したわけじゃないの!

生やせるようになっただけで!


電車に揺られながら、ひとり脳内でそんな言い訳を叫んでしまう。


いやいや待て待て落ち着け私。

クールに行こう。


そもそも、ヒメカが〈遠見〉の魔法を使えるとして、

私のプライベートを覗いたりするだろうか?


しないね。

絶対しない。


何故ならヒメカは、天使だから。(断言)

もとい、ヒメカの優しい性格上、そんな真似できっこないだろう。


では、他になんの理由があるかしらん。


昨日の放課後、一緒に下校するところから、思い出の告白、

公園でのキス、夜の電話のことなど思い返す。

が、ヒメカが心変わりするような出来事は、無かったようにしか思えない。


………………いや、キスしてる時、ヒメカの体を、

あちこちまさぐったんだっけ。

やっぱりそれが、嫌だったとか───────?


うう~ん、わからんっ!

ますますもって、わからなくなってしまったぞっ……!


あれこれ悩んでいるうちに、目当ての駅に着いて、電車を降りる。

そのまま公園に向かって、全速で走り出した。


全速と言っても、〈邪神〉覚醒前の、

普通女子基準での速度で、である。


もし今の私が、本当の本気で走ったら、音速に達するかもだ。

そんなスピードで人にぶつかったり、物や車、壁に激突したら、

大惨事間違いなし。


主に、私にぶつかった相手が。

だから、速力はイイ感じにセーブして、一路、走る。


“急ぐ時こそ、安全第一”、というヤツだ。


以前の私なら、この速度で走り続けるだけで、汗だくの

疲労困憊(こんぱい)状態になっただろう。

けれど、〈邪神〉覚醒した今は、余裕のよっちゃんだ。


体温調節も自由自在。

初夏も間近の、朝の日差しの中、汗の一滴もかかずに、

走っている。


─────こうして、走ってあの公園に向かってると、

ヒメカと〈約束〉した、あの日を思い出しちゃうな。


……小さな頃、ほんの短い間だけ会って、結婚の〈約束〉をした女の子。

そして、十年ぶりに再会しても、私のことを好きでいてくれて、

ずっと一緒にいる、と言ってくれた女の子。


私にとって、ヒメカは、もう、奇跡みたいな存在なのだ。


おかげさまで当方の性癖、十年前に歪められちゃってますし?

昨日、情熱的なキスまでしちゃってるから、ヒメカのいない

今後の人生とか、考えられなくなっちゃってるんですけど?


ああでも、そういう方面でがっつきすぎると、恋人は引いちゃうのが

普通なのか……!?

心の中で、グルグルわちゃわちゃと、ヒメカのことを

検証・考察・議論しているうちに、公園にたどりつく。


公園内では、運動をしているスポーツウェアを着た人たちや、

犬の散歩をしている人たちがちらほらと目についた。


そんな、朝の平穏な風景の中を、結構な速度で走り抜けていく私。

ヒメカと〈約束〉をした木に向かって、一直線だ。


私のほうが、早く着いちゃったかと思ったけど──────────。

ヒメカの姿が、先に、そこにった。


ドクンと、私の胸が、音を立てる。


胸元に、青いリボンをあしらった、白のワンピース。

白金髪プラチナ・ブロンドの長い髪は、首筋あたりで

ひとつに束ねられて、肩から胸へとらされている。


ああ───────〈てんしさま〉だ………。


初めて会った時と、髪型と背は違えど、やはり、私はそう思ってしまう。

おとぎ話から飛び出てきたような、不思議なくらい、可憐な女の子。


その、ヒメカの翡翠色の瞳が、私の視線を捉えた。


「あゆちゃん……!」


笑顔で、私の名を呼ぶヒメカ。


「ヒメカ……!」


私も彼女の名を呼んで、一気に駆け寄っていく。


「ごめん、待たせちゃった」


「ううん、わたしも、今、来たばっかりだから」


おお──────恋人同士っぽい、出だし……!


なんでもないようなことが、幸せなのだなあ。

などと、なつメロの歌詞っぽく感動しちゃうんだぜ。


「────ヒメカ、今日の服、ひょっとして、私たちが、

初めて会った時に着てた服に、合わせてきた……?」


言うのは野暮っぽいかな、と思いつつも、尋ねずにはおれなかった。

私の問いに、ヒメカは、頬を紅く染めて、うなずいてくる。


「うん……わたしたちの、ちゃんとした初デートにも

なるかもしれないから、意識して、着てきちゃった」


っは────────────!!!!!

か~わ~いーい─────────────……………!!!!!


“私の婚約者が、めちゃくちゃカワイイ件について”

脳内で、そんな掲示板のスレッド数が、一瞬で百を超えちゃったね。


「……あゆちゃんも、その髪型──────」


「うん、その、ヒメカと会った頃、私、ポニテに

してたなあ、って思って………」


もじもじとそう答えると、ヒメカは、花咲くように、

顔をほころばせた。


「わたしたち、やっぱり、相思相愛だね……!」


「う、うん……!」


にこやかに笑うヒメカを見て、私は、安堵感を胸に、

コクコクとうなずいてみせる。

電話で聞いた声に感じた、別れ話の雰囲気は、杞憂だったかな?


そう思いかけたところ、ヒメカの表情が、にわかに曇った。


「────あゆちゃん、わたしたち、結婚するんだよね………?」


「! するっ! するよっ!?」


不安げなヒメカの問いかけに、秒で返答する。


え、なんでそんなこと言うの……?

マジで別れ話なの!? 相思相愛、って今、

ヒメカが言ったばっかりじゃん……っ!


泣きながらそうわめいてしまいそうなのを、グッとこらえて、

ヒメカの言葉を待つ。


「じゃあ、お互い、隠しごととかは、しないようにしよう?」


「え……それは、どういう意味────?」


「………あゆちゃん、わたしに、内緒にしてること、あるよね?」


ううぅっ!?

直近で秘密が一気に増えた私は、ヒメカのその言葉で、

クリティカルに動揺しまくった。


なにせ、私は〈邪神〉の転生体。

そしてヒメカと本当の意味で再会したその日に、本体ママ

イケナイ情事を交わし、本日早朝には、男のアレを生やし、

ヒメカを想ってハッスルハッスルしちゃったり。


OUT・OUT・OUTのスリーOUT・チェンジ。

サッカーなら、どれひとつ取っても、一発レッドカード・即退場ものだ。


どれ……!? どれのことを言ってるの……!?


背中にめっちゃ汗をかくほどうろたえてしまい、言葉に詰まってしまう。

だって、どれもこれも、口にして説明しがたく、謝りようがないもの。


私が何も言えずにいると、ヒメカは悲しそうな顔をして、

前髪をかき上げた。

いや、髪をかき上げる動作で、魔法を使ったのがわかる。


昨日と同じく、〈人()け〉の結界魔法だ。

そこまでして、私と話すことって……?


私が疑問を抱くうちに、ヒメカは携帯端末を操作しだした。

それから、私に近づいて、携帯の画面を見せてくる。


「────これ、あゆちゃんだよね」


断定の言葉と共に、ヒメカが見せてきた画面。

そこに映っていたのは、スク水を着て夜空を飛んでいる、

私の姿だったのだ……!


……………そっちかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ───────っっっ!!!

別れ話じゃなくて、本当に良かったぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ……!!!


え、いやでもなんで!?

光学迷彩的な〈邪神〉パワーで、他人には見えなかったはずなのに……!


もちろん、機械にも、私の姿は捉えることができないと

思っていたのだけれど─────。


驚きのあまり、心臓がバクバクと脈打ってしまう。

だがそこは〈邪神〉ボディ、精神集中ひとつで、無理くり鎮めさせた。


ヒメカは黙って、私の返答を待っている。

悲しげで、辛そうな目をして。


………………………………………そんな目をしないで、ヒメカ。


「うん………それ、私、だね───────」


私は、力なく、うなずいた。

決定的な写真を撮られているから、という理由ではなく、ヒメカに、

嘘をついたり、ごまかしたくなかったから。


「────どうやって、空を飛んでるの?」


携帯を下ろしたヒメカは、シンプルに問い質してくる。


「………そういう〈力〉が、使えるようになったから」


「“使えるようになった”、っていうことは、元々は、

使えなかった、ていうことだよね」


「うん……」


ヒメカは、私の目を見つめてくる。

私も、静かにその目を見つめ返した。


いよいよ、核心の話を、ヒメカに告げなくちゃいけない。


結婚するのだから、いずれは話すべきことだけれど。

できれば、先延ばしにしたかった。


まさか、〈邪神〉覚醒した次の日に、私の正体を

バラさなきゃならないなんて──────!


……しかし、どう伝える?

『なんか突然、不思議な〈力〉が身に付いたんだ~』とかでも、

通りそうな気もするけど……。


いやいやいや、ごまかすのは、ナシだった。


〈魔女〉であるヒメカなら、〈邪神〉クトゥルフのことも、

知っているだろう。

端的に、正直に、本当のことを、話せばいいか。


「───────昨日ね、放課後、ヒメカと一緒に帰る前。

学校で、頭……頭部に、衝撃を受ける出来事があったの」


いじめのことは、ややこしくなるので省く。


「それで、思い出した………わかっちゃったんだ。……体が凄く

強くなったり、空を飛べたり、超能力が使えたり─────」


右掌を、ヒメカに向かって差し出して、その上に、

水の球を生み出してみせる。

ヒメカがそれを見て、息を飲んだ。


「……こうやって、水を、自由に出すことができたりする、

って────自分は、普通の人間じゃないんだ、って」


ああ、さっき、精神集中で、無理矢理、心臓の鼓動を

落ち着かせたのに。

いざ、ヒメカに、自分の正体を告白するとなったら、

また、ドキドキしてきた………!


怖い。

怖いなあ────ヒメカに嫌われて、

拒絶されるかもしれないのが、怖い。


それでも、言わなくては。

ヒメカのことが、好きだから。


ひとつ、静かに息を吸って、ヒメカの目を見つめて。

私は、真実を口にした。


「わ、私……私はね、ヒメカ─────〈水〉の神、

〈邪神〉クトゥルフの分霊……その転生体なんだ────」


旧支配者グレート・オールド・ワン〉、〈水〉の〈邪神〉、

クトゥルフの名を耳にして、ヒメカは、その目を大きくみはる。


……………やっぱり、知ってたかあ─────────。

ヒメカの反応に、いっそう、私の胸の内が、暗くなった。


「そう─────それで、あゆちゃん、どうして昨晩、

水着で空を飛んでたの? どこへ行ったの? わたしと

電話し終わったあとだよね、これ?」


んん? あれ? なんか、冷静に詰められてる?


怯えや、警戒して身構えられるかも、と思っていたのに、

そんな気配はない。

どっちかというと、まるで、内緒で出かけて

置いてけぼりされたのを、怒っているような雰囲気だ。


「え、えっとね、私の本体と交信するために、

海に行ったんだ。だから、水着なの」


「ああ、そういう………それで? 〈邪神〉クトゥルフとは、

どういう話をしたの?」


淡々と詰めてくる!?

やだ……このヒメカ、別の意味で、ちょっと怖い────!


「その、『今の地球人類には、手出ししないで』って、

お願いをした。なんやかやあったけど、クトゥルフ本体は、

まだしばらくは地球に手を出さない、干渉しない、って言ってくれたよ」


いざ口に出してみると、軽い会話だよな~。


─────無論、あの一連の会話のあとの、本体ママとの

秘め事は、絶対に言えない。

“隠しごとはしない”って言われて、

“嘘をついたり、ごまかしたくない”って思ったばっかりだけども。


この流れでは、さすがに、言えないわ……!

いや、どの流れでも、言えないカンジだけど!


「……それは、本当に信用できる話なの?」


私がひとり罪悪感に苛まれていると、ヒメカが、

疑わしげに確認してくる。


まあ、当然だ。

〈邪神〉が、ちょっと話をした程度で、そんな簡単に

引き下がるとは思えないだろう。


でも実際、ビックリするくらい、あっさりと

引き下がったんだけどね、〈邪神〉。

その理由が、『もーちょっと眠っときたい』、っていうんだから、さらにビックリ話だ。


これも、ヒメカには、話せないなあ………。

なので、具体的なことは説明せず、ヒメカにうなずいてみせる。


「信用できるよ。だって、向こうは、私自身でもあるから」


「──────────そっか。それじゃあ、

あゆちゃんを、信じるね」


「……! ヒメカ、信じてくれるの? 〈邪神〉とか、

転生の話だとか……わ、私の、オタクな妄想かもしれないよ?」


自分で言ってても、突飛な内容の連続なので、つい、

そんな試すようなことを口にしてしまった。


「信じるよ。わたしの、大好きなひとの言葉だもの」


「ヒメカ────」


ためらいのないヒメカの答えに、思わず、胸が熱くなってしまう。


これ以上深く追求せず、私を信じてくれる、というのだ……!

はぁ~好き! 大好き! このままここで、ヒメカを

抱きしめて、アレコレしてしまいたい!


「それにね、そう言われれば、納得できるの。あゆちゃんからは、

魔力をまったく感じないのに、〈空中飛行〉の魔法とか、

〈不可視〉の魔法を操ってるから……」


あっ、そうか、私には、常時発動の〈魔力隠蔽まりょくいんぺい〉の

魔法が掛かってるんだっけか。

私は念じただけでフツーに空を飛んだりしちゃってるけど、

魔力ありきの〈力〉なんだよなあ、通常は。


〈魔女〉であるヒメカからすれば、魔力を感じられない人間が、

〈空中飛行〉と〈不可視〉の魔法を使ってるのは、ありえないことだったのだろう。


ン……と、そこで、思いついた。

ヒメカ自身のことを、改めて、問いただしておくべきであろうと。


ヒメカが海外に十年間行ってた先が〈魔女〉の都・プラハであることと、

簡単な動作で〈人()け〉の結界魔法を行使できることから、

私の中ではもうほとんど確定してしまっていたけれど。

『〈空中飛行〉と〈不可視〉の魔法』という単語を、

スルッと話してきたことや、〈邪神〉クトゥルフとはなんなのか、

疑問に思わないことなどには、尋ねておくのが自然だろう。


何も知らないていで、ヒメカが魔法のことに

言及している件について、私が疑問を口にするのは、茶番そのものだ。


だけどまあ、仕方ない。

棒読みにならない程度に、訊いてみる演技をば。


「ヒ、ヒメカは、どうやって、その写真を撮ったの?

それに、魔法のこととか、どうして知ってるの────?」


私に問われたヒメカは、一瞬、虚を突かれたような顔を

したあと、唇を、強く引き結んだ。

それから、口を開く。


「………あゆちゃん、ごめんなさい。わたしね────

わたしも、あゆちゃんに、内緒にしてたことがあるの」


そう言うと、ヒメカは、胸の前で、祈るような格好で

両手を組み、目を閉じた。


次の瞬間、ヒメカの全身が、青白い光で包まれる。

その眩しさに、一瞬、目をそらすが、光は、すぐに止んでいた。


視線を戻したそこには──────天使が。

いや、天使度の増した、ヒメカの姿があった。


両肩と脇の肌をさらした、胸からお尻までの

ボディラインがくっきり浮き出る、銀色のワンピース。

二の腕から手首までは、同じく銀色のアームカバーで

覆われていて、スカート膝下から覗く両足も、

銀地のストッキングに包まれている。


正面からは、はっきり見えないけれど、どうやら背中の

肌も露出しているらしく、その背から、

二枚の小さな白い翼が生えていた。

そして、ヒメカの右手には、ヒメカの身長ほどある、

先端に宝玉の施された、金属製の杖がたずさえられている。


『ヒメカは天使、天使、マジ天使!』

……などと常に心の中で連呼していたけれど、

その姿は、まさしく天使そのもの。


天使が、いや、ヒメカが、顔を真っ赤にして、

意を決したような表情で、言った。


「あゆちゃん、わ、わたし─────わたし、

実は、この街を守る、〈魔法少女〉なの………!」

な、なんですってー!?日明香ちゃんが〈魔法少女〉~!?(わざとらしくに)

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