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妹が義妹になる時  作者: 猫谷 隼
5/6

ゲーセンと兄妹(前編)

今回は長くなりそうなので前後編に分けました。

後編は近日公開予定です!

両親がイタリアに行ってから1週間が過ぎた。最初の方は色々と大変だったが、2人で分担しているということもあってある程度なれてきた。

「花、おはよ」

「おはよう、すぐに朝ごはんでいい?」

「お願い」

「了解、じゃあ食べよっか」

「「いただきます」」

考えてみると花はすごい。毎朝早く起きて2人分の弁当と朝ごはんを作っている。それもめちゃくちゃ美味い。このクオリティを毎日続けるのはそう簡単じゃないだろう。

「……なにさっきから人の顔ジロジロ見てんのよ、流石にちょっと恥ずいんですけど?」

「ごめん、花は毎朝偉いなと思って」

「ふぇ?」

「だって毎朝早く起きて弁当と朝食作ってさ、しかもすげー美味いし」

「……別にすごくなんて無いよ、料理作るのも割と楽しいしさ」

「それでもすごいって」

ていうかこれを毎日食べることができるってめちゃくちゃラッキーなのではないか?

「そんなに褒めるようなことじゃないってば、けどありがと。って早く食べないと学校遅刻しちゃうよ!」

「ほんとだ、急がねえと」



「兄貴弁当持った?」

「持った、心配すんなって」

花が作った弁当だぞ?忘れるはずが無いだろう。

「じゃあいってきます!」

「行ってきます」

「ほら何ゆっくりしてんの!もうすぐ電車来ちゃうよ!」

「ちょっとまてって、まだ大丈夫だから!」

「そんなこと言って間に合わなかったらどうすんの!」


結局5分前にホームに着いたが、すでにもうヘトヘトだった。

「こんなに……急ぐことなかったろ……」

「早くつく分にはいいでしょ!てか兄貴体力なさすぎ、もっと運動しないとだめだぞ」

「俺はいいんだよ別に体育会系なわけでもないんだから」

「それでもちょっと走っただけで息が切れちゃうのはどうかと思うけど」

確かにごもっともだ。正論だ。だが、

「俺、運動すんの嫌いだから」

「私は割と体動かすの好きだけどな」

「俺もそう思う」

「手のひら返すの早くない?じゃあ今度一緒に走りに」

「お、電車来たぞ」

「ちょっと!」



電車に揺られながらふと考える。最近花が明らかに近い。具体的には両親がイタリアに行ったあたりからだ。まあコミュニケーションを取らなければいけないことも増えたし、そこそこちゃんと話し合う機会こそあったが、それにしても近すぎる。つい2週間前まで「話しかけないで」とか「こっち見ないで」とか言ってた人とは思えない。まあ俺にとって嬉しいことしか無いし別にいっか!

「兄貴何1人でニヤニヤしてんの気持ち悪い」

「ニヤニヤしてた?」

「そりゃあもうしてたよ」

「まじか、気をつけないと……」

どうやら花のことを考えているときにニヤニヤしているっぽい。人に見られないようにしないとな。



「おっはよー!千春!」

「はいはいおはようおはよう。朝から元気だなオイ」

「そうか?割といつもこんな感じだろ」

「いつもそんな感じだから怖いんだよ、普通朝ってものは憂鬱だろうが」

「そう?僕にとっちゃむしろ楽しいけどね、そういう君こそなんか嬉しそうだがなんかあったのかい?」

やっべぇ顔に出てたか、意識してたはずなんだが。

「別にいつもどうりですよ」

「いーやいつもの千春はなんていうかもっと『話しかけるなオーラ』が出てる」

「それを感じ取っているならなぜ話しかける」

「だって千春といるの楽しいし、てか僕が話さないと君マジで誰とも離さないでしょ」

「別に話さなくていいんだよ、ぶっちゃけ一人でいるの好きだし」

あ、勿論花と二人のが好きですけどね。

「まったくそんなんだから僕以外に友達がいないんだよ、もしよければ紹介してあげ」

「要らん」

「返事早!」

「いらないもんはいらないだろ、それとも何か?俺がよろしくおねがいしますなんて言うと思うか?」

「絶対無い、君のことだからどうせ『面倒くさいから』とか『花と会う時間がなくなる』とかだろうけど」

「わかってんじゃねーか」

「そりゃ伊達に幼なじみしてませんから、千春だって私の行動パターンくらい読めるでしょ?」

「読みたくないんだけど」

「つまり読めてるってことじゃん」

「そりゃここまで一緒にいりゃあ思考の一つや二つくらい読めるようになるわ」

「千春って割と空気読めるのに読まないところあるよね」

「そんなん読むの人とつるみたいやつだけだろ」

「さすが千春、裏切らない。良くも悪くも想像を越えてこない」

「失礼な、まあおおむね事実だが」

「でしょうね、そういえば君放課後空いてる?」

「......空いてない」

「なんだ今の間は、絶対に空いてるでしょ」

「せめて用件を言ってくれ」

「今日部活無いからさ、折角だし遊びにいこうぜ」

「お前は部活無い日毎回誘ってくるな、友達いないの?」

「失礼な、少なくても君の10倍はいるよ!」

「0になに掛けても0なんだよしらないのか?」

「0は無いでしょ0は、だって僕がいるじゃない、それとも僕なんか友達じゃないってか?都合のいい女ってか?」

「どちらかと言えば都合の悪い女だろう、まあさすがに冗談だよ、友達ですよお前は」

「千春がデレた!まさか明日は雪……?」

「デレたとか言うんじゃねえよ、話はもう終わりか?だったら席に戻れ」

「いや終わってないから、結局放課後は空いてるの?」

「チッ、覚えてたか」

「そこまでアホじゃ無いよ、聞くまでもないけど今日遊べるの?」

「まあ暇だけど」

「そういわずに......ってなんつった?」

「だから空いてるっつってんだよ」

「千春やっぱり今日いいことあったでしょ?」

「うっせー」

「花ちゃんのこと?ほらほらお姉ちゃんに話してごらんなさい?」

「誰がお姉ちゃんだ俺らタメだろうが」

「僕の方が早く生まれてるからお姉ちゃんでいいんです~」

「なんだその極論、さっきもいったろうが別にいいことなんて無いし仮にあったとしてもお前には言わない」

「あっそ、じゃあいいや、それで今日どこ行く?」

「何で決めて無いんだよ、てかちょっとまてかちょっとまて、一応花に確認とってからにするか」

そう言って俺はケータイを開いた。


教室で中学からの友達の日葵(ひなた)と話しながら準備をしていたらケータイが鳴った。

「あ、兄貴からだ。どうしたんだろ」

「どしたの花、誰から?」

「兄貴から、ちょっとまってね」



「今日帰るの遅くなるけど大丈夫か?」

「別にいいけど何かあったの?」

「放課後出掛けることになった、申し訳ない」

「誰と?」

「鶫」

「ふ~~ん、そ。まあ兄貴他に友達いないもんね、行ってくれば?」

「花なんか起こってるか?もしかして何か約束してた?」

「別に?何も無いので気をつけて行ってきてね?」


「なんだって?」

「兄貴が友達と出かけるから帰るの遅くなるって」

「ふーん、それで花はなんで不機嫌なのさ」

「別に不機嫌じゃないし、不機嫌になる理由がないし」

「花ってなんかめんどくさい彼女みたいだね」

「そんなこと……か、彼女!?」

「そ、帰ってくるのが遅れるとわかった途端不機嫌になったし」

「無いナイナイナイ!第一兄妹だし、彼女だなんてそんなんありえないから」

「よく言うわ、花お兄さんのこと話してる時めちゃめちゃ楽しそうだよ」

「それはそれ、そもそも兄貴だよ、実の兄妹にそんな感情わかないって」

「えぇ……まあ花がそういうスタンスで行くならいいけどさ、それいつか後悔するよ」

「……しないよ、だって本当だもん」

「花って本当可愛いよね」

「何急に!」

「ほんっと私が男だったら惚れてたよ、何なら女でも惚れる」

「いやなんでよ、私そっちの気無いんですけど」

「知ってるよ?冗談よ冗談。まあ男だったら〜ってのはあながち嘘じゃないかもね」

「怖」

「まあ花を恋人にするってのは無理だと思うけどね」

「なんでさ」

「お兄さんが怖い」

「あ〜〜」

どうしよう、否定できないや。

「ときに日葵、今日って放課後空いてる?」

「空いてるけどさ、やっぱり花ってめんどくさい彼女みたいだね」



「ふゎっクション!」

「どうした千春、風邪でも引いたか?」

「いやそんなことは無いと思うが、まさか誰かが俺のこと噂してたりして」

「それはない」

「オイそこ断言すんじゃねーよ」

「ていうかほんとに今日何すんだよ用もなくブラブラするだけならお断りだぞ」

「じゃあボーリングとか?って露骨に嫌そうな顔しないでくれる?」

「できるだけ体を動かさなくていいのだとありがたいんだが」

「例えば?」

「うーん、ゲーセンとか?」

「ゲーセンデートか、いいね」

「いやデートじゃ無いだろ、ただ一緒に出かけるだけだろ?」

「それを世間じゃデートっていうんだよ」

「ウッソだあ」

「本当だよ、っていうか今まで知らなかったの?」

「ああ」

「じゃあ千春の初デートは私ってこと?」

「嫌だ」

「わお直球」

「いや違う、その理論で行くと俺の初デートは花とだな」

「こういうのって普通家族入れなくない?」

「知るか、花だって女子なんだから入るだろ」

「ちなみにいつのこと?」

「最後に一緒にでかけたのか、2人となると……だいたい4年前位になるかな?」

「君それでよくシスコン名乗れるね」

「俺はシスコンを名乗った記憶は無いんだが」

「そうだっけ?」

「そうだ、俺はシスコンじゃなくて花が幸せになるために生きているだけ」

「あーはいはいそういやそうだったな、うん」

「それで?」

「君のことだからしょっちゅう遊んでいるもんだと思って」

「まあ花はちょうど反抗期真っ盛りだったしな、さっきも言ったが俺は花に幸せになってほしいだけであって一緒に遊びたいとかそういうんじゃないんだよ」

「ホントは?」

「遊びたいに決まってんだろ馬鹿じゃねえの?」

「千春のそういうところ好きだわ」

「言ってろ」

「はいはい、じゃあゲーセンでいいのね?」

「お前がいいならな」

「全然OK、じゃあ放課後を楽しみにしてろよ?」

「へいへい」

そう答えたのを聞くと鶫は自分の席(といっても斜め後ろの席)に戻った



そして放課後、チャイムが鳴るとほぼ同時に話しかけてきた。

「よし千春、準備はできてるか?」

「ゲーセンに行くのに準備もなにもないだろ……」

「いいんだよ気分気分!」

「やっぱりお前今日テンションおかしい」

「そうか?まあせっかく千春とデートだし楽しまなきゃ損だろ」

「だからデートじゃねえって」

「じゃあもうそれでいいから、さっさと行くぞレッツゴー!」

「……どうしよう、帰りたくなってきた」

「早い!」

まあそんな願いも通用するわけもなく、手首を捕まれ半ば強制的に出発した。当然ながら後ろに隠れている2人組には気づかずに。

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