科学部の面々
お久しぶりです。
これからもマイペースに書いていけたらなと思います。
夕食を食べ終わり台所で皿を洗っていると花が話しかけてきた。
「そうだ、明日朝から学校でやることがあるから先行ってるね。朝ごはんとお弁当は台所に置いておくから」
「ん、りょーかい、ありがとな」
「はいはい、どういたしまして」
明日の朝は花いないのか……まあ特に関係ないかな?
そして次の日の朝
「おはよ~って今日は花いないのか、完全に忘れてた」
朝を一人で過ごすのはあまりないため、少し寂しさを感じる。
「ていうか一人だと時間忘れちまいそうで怖いな、早く出よう」
そう言っていつもより10分ほど前に家を出た。
当然ながら1本早い電車に乗れたわけで、結果的にいつもより早く学校に着いた。
「おっはよー千春!今日はいつもより早いな、なんかあったか?」
うるさい茶色いのが話しかけてきた。
「いろいろあって電車1本早めたんだよ、なんか文句あっか」
「文句なんかないけどさ、君に伝言を頼まれてるもんだから」
「伝言?誰からだよ」
「君の部長さんからだよ~って露骨にいやそうな顔するね君」
そらそうだ、あいつからの伝言ってことは高確率で
「『今日放課後科学室に来てくれ』だってさ」
呼び出しなんだよなあ……
「行きたくねぇ」
「そんな僕に言っても仕方ないだろ、そもそもそこまで嫌なら入部しなければよかったのに」
「さすがに土下座されて断るわけにもいかねえだろ、実際助かってる部分もあるしな」
「なら諦めな、別にそんなにかかるわけでもないんだろ?」
「そりゃそうなんだけどさ……」
今日は朝から花成分確保できてないからなぁ……まあ仕方ない、さっさと終わらせよう。「まあ教えてくれてありがとうな」
「いいってことよ、このことは花ちゃんにっ伝えなくっていいの?」
「まあ大丈夫だろ。そんな何時間もかかるわけでもないし」
「それもそうか、じゃあ伝えたからな~」
そう言って鶫はほかの友達のところへと走っていった。
そして放課後、柏木 花は教室で焦っていた。
「どったの花、無くし物でもしたか?」
「大丈夫、家の鍵忘れちゃったみたいだから兄貴のところ行ってくるね」
「了解、じゃあまた明日ね~」
「うん、また明日」
クラスの友人に別れを告げ、私は3年棟へと向かった。
教室の近くまで行くと鶫さんがいた。
「すみません鶫さん、今教室に兄貴居ますか?」
「千春?あいつなら部活に行ったよ~」
「そうですか、ありがとうございます」
「場所わかる?確か科学室だったけどもしあれなら案内しようか?」
「重ね重ねすみません、場所はわかるので一人で大丈夫です」
「そう?気を付けてね~」
鶫さんに手を振り返しながら考える。」
科学室か……確か3階にあったはずだけど。
記憶は正しく、3階の特別棟に科学室はあった。
「ここで合ってるよね、兄貴居るといいんだけど……」
そう呟きながらドアノブに手をかけようとしたその時、
科学室が爆発した。
「えぇ⁉」
驚きのあまり声に出たがそれどころではない、まずは様子を見なければ。私はドアノブに手をかけて、開ける。
「大丈夫ですか⁉なんか爆発音がしたんですけど」
そこにいたのは見慣れた兄ではなくだぼだぼの白衣を着た女の人だった、兄貴の情報からおそらく先輩だが私よりも全然小さい。けれどなぜか大人びて見えるふしぎな存在感のある人だった。
「いてて……大丈夫だよよくあることだから、騒がしくしちゃってごめんね~って」
その人はじっと私のことを見ている。
「あの、大丈夫ならよかったのですけど、ここに兄貴は……」
「その制服……もしかして君1年生?」
「え?はいそうですけど……」
「ということは入部希望者かい⁉それならそんなところにつっ立ってないで中に入って入って!」
「え?いやちょっと違……」
「いいからいいから、ほらここ座って!」
誤解を解こうとしたが彼女は聞かずに私を科学室に入れて座らせた。
「よく来てくれました、今この部活は部長の私含めて3人の少人数でね、わりとピンチなんだよね」
「けどたしか3人いれば大丈夫なんじゃ……」
「本来はね、ただうちの部活の場合色々とやらかしちゃったもんで、ぶっちゃけちゃうと教師たちに嫌われてる」
「それを私に言っちゃっていいんですか」
「いいのいいの、隠してるわけでもないんだし、それよりなぜ科学部に?」
「えっと……言いにくいんですが私入部希望じゃなくて……」
「え?それじゃなんで……」
「兄貴……じゃなくてそのち、千春に家の鍵をもらいに……」
「となると君は千春君の妹さんってこと?」
「そうなりますね」
「ということは君が花ちゃん?」
「はい、そうですけど何で知って……」
「そりゃ千春君がしょっちゅう君のこと話してるからね、いやでも覚えるさ。それにしても……」
「それにしてもなんですか、そんなにじろじろ見ないでくださいよ……」
「うん!話に聞いていた通り可愛いね。正直ただの身内びいきだと思ってたけどこれならあそこまで言うのも納得だ」
「可愛いなんてそんな、っていうか今話に聞いてた通りって言いました?兄貴いつもどんな事言ってるんですか」
そう聞くと彼女は少し考えてから答えた。
「別にそんな大したことじゃないよ、君がどのくらい可愛いか~とかそんなくだらないことさ」
「私なんかより先輩こそ可愛いと思いますけどね」
「うれしいこと言ってくれるじゃないか、ていうか先輩ってなんかこそばゆいな、私のことは柊と呼んでくれ」
「柊?」
「そ、私の苗字さ」
「わかりました、柊先輩?」
「まあいいか、ところで花ちゃん、本当に科学部に入る気はないか?さっきも言った通り入ってくれるととても助かるんだが……」
「部活ですか、そのことなんですけど……」
「お願い!来るペースも月1~2くらいでいいから!っといってもさすがにいきなりすぎるか、じゃあ少し体験してってよ、千春君が戻ってくるまで少し時間があるしさ」
「体験ですか……」
「そう。手始めにこれなんかどうかな?」
そう言って目の前に置かれたのはノートパソコンくらいのサイズの機械だった。
「えっと、なんですか?これ」
「平たく言えば噓発見器だね、この電極から体温、心拍、発汗とかのデータを読み取り……って細かい原理は後にしてとりあえず試してみよっか。まず腕出して」
言われるがままに腕を出すと柊先輩は電極を手首につけ始めた。
「とりあえず手始めに、『君の名前は柏木花ですか?』」
「え?『はい』」
答えるが何も反応はない。
「当然ながら本当みたいだね、じゃあ次は嘘ついてみて、『君は千春君の妹ですか?』」「え~と、『違います』」
すると機械から【ブー】と音が鳴った。
「とまあこんな感じだよ、どう?面白いでしょ!」
柊さんの目はまるで子供みたいにきらきらしている。
「すごいと思います、これを柊さんが作ったんですか?」
「そうだよすごいでしょ!といっても私一人で作ったわけじゃないんだけどね。じゃあ次の質問行くよ、『花ちゃんは今好きな人はいますか?』」
「…………いません」
【ブーーーーーー】
「鳴ったね、ていうか鳴らなくてもわかるくらいわかりやすいね君。ちょっと赤くなってるし」
「赤くなんてなってないです!それに好きな人なんていませんから!やっぱり壊れてるんじゃないですか?」
「そんなことないと思うんだけどな~ちなみに誰?クラスの人?」
「違います!」
「ならないね、じゃあこの学校の人?」
「だから違うって……」
【ブーーーーーー】
「……鳴ったね、やっぱり君好きな人いるでしょ」
「…………もう終わりです、これ取ってください」
「え~、せめてもう少しだけでも……」
「なに人の妹いじめてこのんだアホ」
「痛い!」
いつの間にか後ろに立っていた兄貴が柊先輩の頭にチョップを食らわせた。
「兄貴!今の聞いてた?」
「ん?なんも聞いてねえよ今来たところだし」
「今は噓発見器で花ちゃんの好きな……」
「聞いてないなら大丈夫!兄貴とは関係ないことだから!」
【ブーーーーーー】
「え?なんで今これが鳴ったんだ?花ちゃん今別に……」
「やっぱり壊れてますこれ!もう取りますね!」
そう言って腕についている電極を取る。
「おかしいな~、確かに壊れてないはずなんだけど……」
「って言うか花、ここに近づくなって昨日言ったばかりなんだが?」
「うるさい、家の鍵忘れたから兄貴にもらおうと思ってきただけ」
「なら仕方ないか、今日は一人しかいなかったけどは普段はやばい奴の集会所みたいな感じだからな」
「さらっとひどくね?」
「実際そうだろ、今まで何回事故起こしてきたと思ってるんだこのスカタン」
「うぬぬ……何も言い返せない。そういや助手君は?一緒じゃないのかい?」
「あいつならトイレ行ってからくるってよ」
「えっと、助手君って誰のことですか?」
「ああ、助手君ってのは副部長のことだよ、呼んでるのは部長だけだけどな」
兄貴はそう言って柊先輩のことを指す。
「だって名前呼びだと怒られるんだもん、だからって今更苗字もしっくりこないし。だから君も苗字で読んでるんだろう?」
「まあそうなんだけどさ」
「どんな名前なの?」
「それはあってからのお楽しみってやつだよ、そろそろ帰ってくると思うんだが……」
兄貴がそういってドアの方を見ると、ちょうどドアが開いた。
「ただいまぁ、って誰その子?」
入ってきたのは声の低い男の人だった。身長はおそらく兄貴よりも大きいが、怖いというよりもどちらかといえばどこか優しそうな人だった。
「よ、こいつは俺の妹だよ、忘れ物して俺にもらいに来たんだと」
するとその副部長さんは私の方を見て少し間をおいて話しかけてきた。
「君が花さんか、千春からよく聞いてるよ、聞いてた通り優しそうな子だね」
「兄貴、ホントに何言ってんのさ……」
「別に大したことは言ってないと思うんだけどな」
「なかなかなこと言ってると思うけどな……一応自己紹介しておくか。俺は白瀬だよ、白い浅瀬と書いてしらせだ、よろしく」
「白瀬先輩ですね、こちらこそよろしくお願いします」
「といってももうそこまで接点ないだろうけどね」
「そんなことないですよ、だって私、この部活入りますから」
「「「え?」」」
3人とも驚いているが1番驚いているのは兄貴だ、目が見開いてる。
「だから科学部に入部したいんですけど……いいですか?」
聞くと白瀬先輩が答えた。
「そりゃこちらとしても願ったり叶ったりだけどいいのか?ここはお世辞にもいい部活とは言えないし、何よりまだほかの部活も見れてないだろう?」
「大丈夫ですよ、もともと部活に入る予定なかったですし」
「花本当にいいのか?俺が言うのもなんだがそんな簡単に決めちゃっても……」
「兄貴は黙ってて、私に部活やってるの隠してたくせに」
「だから隠してたわけじゃ……」
「とにかく、もう決めたので、よろしくお願いします」
「やった~!よろしくね花ちゃん!じゃあ早速入部届持ってくるから待ってて!」
「あ、私もついていきます」
「ホント?じゃあこっちきて!」
「おい千春、あのアホなんかテンションたかくねえか?」
「たぶん初の女子部員ってのがうれしいんだろ、今まで男子だけだったわけだし」
「なるほど、だが調子に乗らないように注意しとかねえと、このままじゃあの子大変なことになる」
そう言って白瀬は大声で柊を呼んだ。
「おいタマ!お前あんまり後輩で遊んでんじゃねえよ!」
「あ!タマって呼ぶなって言ってんじゃんバカ!」
「うっせえ!タマにタマって呼んで何がわりぃんだよ!」
「黙れ!タマだとちょっと恥ずかしいんだよこのアホうらら!」
「てめえも名前で呼んでんじゃねえか!」
「仕返しです~、ば~か~う~ら~ら~」
「仕返しが幼稚しすぎんだよ、コラ待ちやがれ!」
「そういわれて待つわけないだろば~か!」
「うっせー!いいからそれ以上走るんじゃねえよ!何かに当たって落としたらどう知るつもりだ!」
「...え?」
なんだろう、さっきまでかっこよかった二人が追いかけっこしてる……
「ん?ああ、あの二人の本名はそれぞれ柊 珠と白瀬 麗、曰く苗字はかっこいいのに名前がイメージと違うから嫌なんだとよ」
「なるほど、だから自己紹介の時苗字しか言わなかったのか」
そう言われてみれば確かにあの二人は『タマ』と『うらら』って感じではないかもしれない。
「そゆこと」
「けど私は可愛くっていいと思うけどね、タマ先輩とうらら先輩」
「その可愛いってのが嫌なんだろ」
「えぇ、いいと思うんだけどなぁ」
追いかけっこも終わり、先輩の持ってきた入部届を書こうとした時だった。
「改めて聞くけど本当に大丈夫なの?確かに呼ぶのは月2くらいとはいえうちの学校兼部禁止だからほかの部活に入れなくなっちゃうけど」
「大丈夫ですよ、さっきも言った通りもともと部活をする予定なかったですし、二人とも優しそうなので」
「優しそう、か。俺は割と初対面の人には怖がられがちなんだが」
「そんなことないですよ、第一兄の選んだ人なので、そこのところは大丈夫です」
「そういってもらえるとすげーありがたい」
「はいはい、というわけでこれから1年間よろしくお願いしますね、タマ先輩!うらら先輩!」
「「だからその名前で呼ぶな!」」
「あとついでに兄貴」
「俺はついでかい」
入部届を提出し終わり、帰る支度をしていたところにうらら先輩が見つけた。
「ところでなんで机に嘘発見器が出てるんだ?だいぶ前にしまったはずなんだが」
「それか?花ちゃんの体験用に使ったんだよ、ちょうどいいかと思ってね」
「それならいいんだけどよ、ちゃんと片しとけよなまったく……」
そうぶつぶつ言いながらうらら先輩は嘘発見器を片付けようとする。
「いつも悪いね、助かる」
「ホントにそう思ってるのなら自分でかたせよなまったく……」
……これは聞いていいのか?
「えっと……タマ先輩とうらら先輩は付き合ってるんですか?」
「お前それは……」
「「付き合ってねーから!」」
「だいたい付き合うとしたらもっとまともな奴と付き合うっつーの」
「それ助手君が言う?私こそなんだけど」
「お前それよく言えたな」
「そっちこそ」
「ンだとコラ」
「言ったな!」
「ストップストップ!二人とも落ち着けよ、そうやってすぐ喧嘩すんのやめろや」
兄貴が仲裁に入るが状況は変わらない。
「だってうららが私のことを!」
「だから名前で呼ぶなってさっき言ったばっかじゃねえかよ!」
「だから喧嘩すんな!」
「え~と、なんかごめんなさい」
「別に気にすることねえよ。あいつらはいわゆる幼馴染なんだよ」
「つまり付き合ってはいないと?」
「そういうこと……まあ怪しい話だが本当らしい」
「別にタマと付き合ってるか聞かれんのはしょっちゅうなんだがよ、なんでみんな聞くんだろうな、別にそこまで仲いいわけでもないのによ」
「ホントだよ」
「「えぇ……」」
「お前らそれで仲良くないは無理があるぞ」
兄貴が突っ込む、私もそう思う。
「まあ悪くはねえけどよ、恋愛感情かっつったらまた別問題なんだよな」
「そういうもんなのか?」
「じゃあ千春、お前の幼馴染いるだろ、えっと……」
「鶫のことか?」
「そう、お前そいつに恋愛感情持てるか?」
「なるほど、理解した」
「理解が早くて助かる、な」
「うん私とうららは恋愛感情通り越してるんだよね」
「なるほど……」
「せっかくだし助手君と千春君も嘘発見器やってみる?」
「「嫌だ」」
「あらら、なんでさ面白いのに」
「見てる側はな、やってる側は地獄もいいとこなんだよそれ」
「千春に同じく、じゃあお前先にやれっつーの」
「ええ~じゃあまた今度でいいや」
片付けも終わり帰る支度をしている時だった。、。
「まあ私たちがいるのもあと1年だけだけどさ、よろしくね」
「同じく、短い時間だがよろしくな、困ったことがあったら聞いてくれ」
「はい、ありがとうございます!」
「早速だけど花ちゃん今ケータイもってる?交換しようよ!」
「持ってます、ちょっと待っててください」
「じゃあ俺もいいか?」
「もちろんですうらら先輩」
「だから名前……もういいや」
「白瀬が諦めた、珍しい……」
「だって仮にも後輩だし、何よりお前の妹だろ」
「申し訳ない……」
「じゃあ私も呼んでいい?」
タマがうららに聞く。
「お前はだめだ」
「なんでさ!」
「当たり前だろうが……」
そして帰り道、いつもより暗くなった道を兄貴と歩いていた。
「なんつーか、よろしくな」
「なんでさ」
「これから同じ部活の部員になるわけだろ、だからよろしくなって」
「何それ、そんなこと言われなくてもわかってるよ」
「ならいいんだよ。そういえば花、俺が来る前部長と嘘発見器で何してたんだ?さすがの部長でも初対面の人に変なことはしないと思うんだが……」
「別に大したこと……大した……こと」
『やっぱり君好きな人いるでしょ』
「……ん?やっぱ何かあったのか?」
「べ、別にぃ、なにもないよぉ……」
「絶対何かあっただろ、まあ言いたくないなら深くは聞かないけどさ」
そんなわけない、あれは違うはずだ。たぶん故障だ。
「ホントに大丈夫だから、それより兄貴、帰りにスーパー寄っていい?たぶん夜ごはんのおかず足りなくなりそうなんだ」
「いいよ、じゃあ行こうか」
ちゃんと話せる、問題ない。大丈夫だ。
もし仮にそうだとしても絶対に言えない、言ってしまったら兄貴に迷惑をかけてしまう。だから、
この気持ちは無かったことにしよう。忘れよう。封印しよう。
私のために、そして兄貴のために。
いかがだったでしょうか。
個人的にタマとうららは結構好きなキャラクターなので出せてよかったです。
これから花は自分の気持ちをどうするのか見守っていってください。