あの夏まつりは...
♪~あいのさ あいのさ 古き者こそ ながくも 常世の妖 呼び出し者 其の恩返し時 黄昏の空 願いこめられし 何も問わず 千の命 眠る~♪
その民謡は姉さんは好きだったね...。
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星菜「はぁ...。」
姉さんが亡くなってからはや二年。今年も夏祭りの季節がやってきた。
母が[今年はいかないとダメよ]と言いながら出してくれた浴衣を見る。
きれいな紺色に、真っ赤な彼岸花が描かれている。蛍をイメージした黄色い点が裾のほうにある。
この浴衣は姉さんが亡くなった時に着てた浴衣の色違いだ。
母が言ってた[今年はいかないとダメよ]と言ってたのはちゃんとした理由がある。
今回の夏祭りは盆踊りがある。
盆踊りの時、見本の人が私だ。
今回はいかないと村に負担をかけてしまうかも、と思い浴衣を着た。
星菜「顔は隠そう...。」
そう言い、キツネのお面を手に取った。
これは、姉さんからもらったものだ。
キツネのお面をつけ玄関先に行った。
星菜「行ってきます...。」
母「行ってらっしゃい。気をつけなさいよ。」
星菜「うん...。」
私は、下駄をはき家を出た
???「今日が最後か...。」
という声が聞こえたのも知らずに。
ガヤガヤ ガヤガヤ ガヤガヤ
星菜「...人多すぎない?」
二年間来てなかったためか、それか二年間の間何かあったのか知らないが二年前より人が多い。
星菜「それより早くいかないと...。」
私が盆踊りの会場に行こうとすると、こんなアナウンスが流れた。
アナウンス「えー、ただいまから、第275回アヒルどり大会を始めます。参加のご希望の方は、×○商店街の△△公園にお集まりください
。えー繰り返します...」
人々の波が盆踊りの会場の反対へ行く。その人々の波に飲み込まれそうなとき、誰かが私の手をつかんだ。
???「こっち」
星菜「えっ...?」
その人の正体はキツネのお面を被った女の子だった。そのキツネのお面は私と全く一緒のものだった。その女の子は私の手をつかんだまま、盆踊りの会場へ連れって行った。
気が付いた時には、盆踊りの会場についていた。
星菜「ありがとうござ...って、え?」
お礼を言おうとしたときには、もうその女の子の姿はなかった。
どこに行ったのだろう...?と思っているその時、
村長「千野崎さんで間違いないかね?」
と村長が尋ねてきた。
星菜「はい...。」
村長「盆踊りのことなんじゃが...。」
私が村長と話していると、
???「♪~あいのさ あいのさ 古き者こそ ながくも 常世の妖 呼び出し者 其の恩返し時~♪」
このヨノ村の民謡が聞こえた。
星菜「あの...。」
村長「なんじゃい?」
星菜「このヨノ村の民謡が今聞こえませんでしたか?」
村長「いや、きこえなかったが...。」
星菜「えっ...?」
確かに聞こえた。あの独特な民謡はこの村しかない。
誰か歌ってるのか?でも、この辺りには、関係者以外立ち入り禁止だ。
星菜「ちょっと、席外します。」
ダッッッッッッ
いったい誰が歌ってるの?
あの懐かしい感じは何?
???「♪~黄昏の空 願いこめられし~♪」
まだ歌ってるの?
でも知ってる。この歌声。
???「♪~何も問わず 千の命 眠る~♪」
私はこの歌声をたどり、雑木林に来た。
ここで聞こえた。
???「あ、来てくれたんだ。」
星菜「えっ...なんでいるの?」
星菜「姉さん...。」
うっすら透明感のある姉さんはこういった。
姉「だって...未練があるから...かな?」
星菜「...未練ってなに?」
姉「それはね...星菜と盆踊りを踊ること!」
姉「だから...踊ろっ!」
星菜「いいよ...。」
姉「よし、曲はこの村の民謡でっ!」
♪~あいのさ あいのさ 古き者こそ ながくも 常世の妖 呼び出し者 其の恩返し時 黄昏の空 願いこめられし 何も問わず 千の命 眠る~♪
姉さんが踊ってる姿はまるで蝶々みたいだった。
そして、違う時空にいた気分だった。
姉「ふぅー...ありがとう。おかげで未練晴らせたよ。」
姉さんがキラキラと消えていく。
星菜「まって...!いかないで...!」
姉「大丈夫よ。ずっと見守ってるから...ね?」
そう言い残して、姉さんはこの世からいなくなってしまった。
星菜「まだ...!言いたいことあったのに...!」
私は泣きじゃくった。
雑木林の中一人の少女の泣き声が聞こえた。
私が泣き止んだ時にはもう盆踊りは終わっていた。
もう、いる気力がなかったので家に帰ることにした。
家に帰り、姉さんの仏壇の前に座った。
仏壇にはあの時の姉さんの笑顔の写真が飾ってある。
星菜「ずっと見守っててね...大好きだよ...」
星が返事をしたように、キラリと光った
end...