第4話 遠い場所
スノードロップ博士が帰った後、私とガイ博士は、今後について話し合っていた。
「リナリア、研究所の資料を犠牲にして、取り敢えず遠い所に二人で逃げよう…俺は、君さえ居ればいいから」
「それと……もう研究は、辞めてリナリアと一緒に安全に暮らせれたら良いかなって思ってる……まあ、中々難しい問題だと思うけど…」
「私は、ガイ博士が居てくれたら何処にでも付いていく」
私は、ガイ博士が居ればどんな場所でも構わないと思っていたのと、いつスノードロップ博士が研究所に来るか分からないので、必要な物を準備をして、研究所の資料は、そのままにして私たちの足がつきそうな物は、出来るだけ処分してから、その日にブルーベルの街から出ることにした。
「リナリア忘れ物は、無い?」
「大丈夫だよ…この研究所は、私が生まれてから短い間だったけど……思い出が詰まってるから何か寂しくなると思って」
「別にここの思い出だけがすべてじゃないんだよ…これから新しい思い出をまた一緒に作っていったら良いんだから」
ブルーベルの街での生活は、今日で終わるけれど、私とガイ博士の新たな生活は、これからも続いていくので次の生活の事も色々と考えてないといけないので、落ち込んでいる時間は、無いと私は、自分に言い聞かせていた。
私とガイ博士は、馬に乗ってブルーベルの街から一週間ほどかかる、ハスの村に向かっていた。ガイ博士が言うには、ブルーベルの街に比べてのどかな場所でハスの村の人たちは、初めて来る人にも優しくしてくれると言っていた。それなら暮らし場所なのかなと思っていた。
「ガイ博士が言うなら間違いないと思うけど、ハスの村の人たちが優しく私たちの事を受け入れくれるかな?」
私は、ガイ博士は、優しく受け入れてくれると聞いていたけれど…少し心配になっていたので気付くとガイ博士に聞いていた。
ガイ博士は、馬車を動かしつつ、少し唸りながら考えていた。
「うーーーーん……行ってみないことには、分からないけど…きっと大丈夫だよ」
「そうだよね…きっと大丈夫だよね」
ガイ博士もハスの村の事は、ブルーベルの街の人に聞いた情報なので、私を変に期待させて…困らせないように曖昧な答え方をしてくれているのかなと思った。確かに行ってみないことには、良いも悪いも分からないから、自分たちの目で確かめないとね。
ハスの村に向かう道中に私は、ガイ博士に馬車の動かし方を教えて貰って、私とガイ博士は、馬車を動かすのをを変わりながら、ハスの村に向かっていた。
「ガイ博士、意外と馬車を動かすの楽しいね」
私は、初めてなのもあるかもしれないけど、馬車を動かすのにハマっていた。
「リナリアが楽しいなら良かった。でも、あんまり飛ばさないでくれよ。馬も疲れちゃうし、何事も慌ててやっても良い事何にもなくて、逆に空回りしちゃうからな」
「ガイ博士、それは、ちゃんと分かってる…私が楽しくなって飛ばすみたいじゃない……」
「でも、リナリアは、絶対さっき少し飛ばそうと思ってたよね…」
ガイ博士には、私の考えていた事は、全部お見通しだった…ちょっと馬の動かし方に慣れてきたら、やっぱり少しだけ飛ばしたくなってしまうのは、駄目だよね…
「う…きっとそんな事は、無いからね…」
ガイ博士は、私が下を向いて誤魔化しているのを笑顔で見ていた。
「リナリアは、気持ちが顔に出やすいから本当に分かりやすいな」
それからしばらく経って、やっとハスの村が見えてきて、私とガイ博士は、安堵していた。思ってたよりハスの村は、山の近くにあって…これだけのどかな場所なら研究に関わる人に見つからないでひっそりと暮らせるのかな…思っていた。
「ハスの村に着く前にリナリアに言っておかないといけない事がある…」
「ガイ博士何でしょう?」
何か重要な事があるのかなと思っていた。
「俺は、もう研究者を辞めたから博士呼びは、もうしなくて良い…普通にガイだけ頼む」
博士呼びをされると、ハスの村に着いたときに村の人たちに私たちの素性の探りを入れられると後が大変ということだった…
「すぐには、出来ないかもしれないけど出来るだけ頑張ってみるね…ガイはか……ガイ」
ガイ博士と呼んでいた癖は、しばらくは、気を抜いてると言ってしまいそうだけど…気を付けて…ガイって呼ぶしかないよね。
村に着くと村の村長さんに声を掛けられていた。
「お若いお二人さんハスの村にいらっしゃい、この村長のシーマニアです。何用でこの村に来たのですか?」
私のパッと見た感じの雰囲気では、かなり優しそうな印象の村長さんだと思った。
「俺は、ガイ・シトリンって言います。こっちの連れは、リナリア・シトリンって言います、俺たち二人は、穏やかに暮らせる場所を探していて…こちらのハスの村が穏やかでのどかな場所で良いよって前に居た町の人から聞いてやって来ました」
「そうですか…村の奥に丁度空いている家がありますので良かったら使ってください。」
そこまで、シーマニア村長は、深く私たちの素性まで聞いて来なかったのは、優しさだったのかもしれない
「ありがとうございます。シーマニア村長…ありがたく家の方は、使わさせていただきます。これからよろしくお願いします。」
それから、私とガイは、シーマニア村長に言われた家に向かい荷物を置いてから、ハスの村の人たちに挨拶をして回った。ハスの村の人は、三十人に程だったのすぐに挨拶も済みハスの村のみんなも優しく私たちを受け入れてくれていた。
すると一人の小さな十歳くらいの水色の瞳に水色の髪のショートボブの女の子が私とガイに近付いて顔をじっと見ていたので私は、女の子と同じ目線になるためにしゃがんでから声を掛けてみた。
「どうしたの?君、私たちの顔に何か付いてるの?」
「お姉さんとお兄さんの頭の蝶々可愛い」
どうやら私とガイがつけているヘアピンに見惚れていたみたいだった。
「可愛いでしょ…こっちのガイのお兄さんに貰った凄く私の大切な宝物なんだ」
私は、思わず女の子に蝶々のヘアピンを聞かれた事が嬉しくて、自慢してしまっていた。
「リナリア、小さい子に凄い自慢してると俺がちょっと恥ずかしくなるだろ」
ガイの顔は、照れくさそうに少し赤く染まっていた。
「お姉ちゃんとお兄ちゃんとても仲良いね…ところでお名前は、何て言うの?私の名前は、ローダンセ」
ロータンゼちゃんは、何故か私たちに興味津々だった。他の街から来るのがよっぽど珍しかったのかもしれない
「私は、リナリア・シトリンで、私の隣に居る人は、ガイ・シトリンだよ。よろしくね。ローダンセ」
「よろしく。ローダンセ」
「よろしくね。リナリアちゃんとガイちゃん、お母さんに頼まれてる用事があるから帰るね。またねーー」
ローダンセちゃんは、嵐のような子だった。ガイは、ロータンゼちゃんにちゃん付けされて呼ばれたのが少し悲しかったみたいだった。
その後は、私たちは、家に戻ってゆっくりして、翌日から仕事を探すことにしていた。
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「ガイ博士の資料は、全部頂いたけど、ガイ博士の所有している…あのリナリアとか言うアンドロイド程、精巧なアンドロイドにならないのは、何故なんだ…」
「そしてアンドロイドの資料だけ置いて行けば安全だと、思ったのは、間違いだぞ…ガイ博士探してやらないとな」
ずっと不敵な笑みを浮かべながらスノードロップ博士は、笑っていた。
あの後は、ブルーベルの研究所は、スノードロップ博士によって火をつけられて研究所は、無くなった…