プロローグ
欲とは、何かを欲しいと思う心……では、それがなくなってしまうと、人はどうなるのだろうか?
「姉さん!ただいまー」
と、俺―宮火秋月は神社の鳥居をくぐりながら叫ぶ。投げ掛けた言葉―の先には巫女装束を纏った姉―宮火春花が、石段を掃いていた。こちらに気づくと、花が咲いたかのような笑顔で、
「月くん!おかえりなさい」
と言ってくれた。姉さんと俺は、双子の姉弟だ。何故俺だけが学校から帰って来たのかというと、通信制の中学校に姉さんが通っているからだ。姉さんは、日本人にしては珍しい赤目に漆黒の髪。おまけに芸能人並みの美人で、小学生時代は、めっちゃモテた。でも、その分反感も買い、虐められていた。ところがどっこい姉さんは、天然だから虐められていること事態自覚がなかった。そのにぶちんさを少し振替ってみる…
·上靴に画鋲(王道だな)
→誰かが落としたと勘違いし、先生に報告
→学校問題に発展
→証言で加害者がばれ、怒られる
→姉さん呼び出し裏庭へGO!問い詰める
→姉さん「あれ貴方達の画鋲だったのですね!良かったです。持ち主が見つかって。では、用事があるので失礼いたします。」と笑顔で去っていく。加害者びっくり…こんなもんじゃ収まらない。
·放課後また姉さん呼び出し、加害者「あんた邪魔なのよ!消えてくれないかしら?」(思い出しただけでも苛立ちが)
→姉さん少し呆れ気味に「貴方達が呼び出しておいて邪魔だなんて。これで良いのですか?」加害者の横に移動し、そのまま教室を去る。
→またまたびっくりな加害者
…まだまだあるが、思い出したら切りがない。たまたま(?)その現場に居合わせた俺は、このままでは中学にあがったら、ヒートアップすると思い、親に頼んで通信制の中学校に通ってもらっているのだ。
「どうしたの?月くんボーッとして具合が悪いの?」
回想していると、姉さんが心配した様子で顔を覗き込んだ。
(あーホントに姉さんが可愛いー)
心の中の感情を表に出さない様にしながら、
「何でもないよ。少し考え事をしてたんだ。」
と答える。姉さんに心配かけないようにしないと!
…気を取り直して。俺は、姉さんと一緒に神社の少し奥にある自宅へと向かう。すると、向こうから神主の父さんー宮火夏目が、笑顔で手を振って近づいてきた。
(せっかく姉さんと一緒だったのに…)
少し父さんのタイミングの悪さにふて腐れてると、それに気付いたのか、笑いながら
「本当に秋月は、姉ちゃんっ子だなーおかえり秋月」
と言った。俺は、その笑顔に気をされ、
「ただいま。父さん。」
と、返した。父さんの性格は、姉さんが継いだのだろう。いつもふわふわしていて、何考えてるか分かんない。もしかしたら心の中全部見透かされてるのかもしれない…実の親だとしても、侮れない気配がする。すると、姉さんが横から抱きついてきて、
「でしょー自慢の弟なんです!父上!弟を産んでくださって有り難う御座います!」
「母さんが頑張ってくれたおかげだけどね。」
と、和気あいあいに父さんと話し始めた。俺抜きで話してるのは、気にくわないけど、あまり悪い気はしない…いやめちゃめちゃ嬉しい。結局3人で自宅に行くことになった。