死ぬまでの物語
主人公セナは何かを殺す事に忌避感を持っていません。なので、話が進むにつれてスプラッタ描写が多々入ります。血の表現などが許容できない方はお帰りください。
また、退廃的な雰囲気がある世界観を目指していますので、人間の悪意や醜さなどもあります。苦情は受け付けませんので、自衛のほどよろしくお願いします。
あの衝動はいつからのものだったのか、今ではもう覚えていない。ただ、無性に喉が渇いていたことだけは思い出せる。そして、思考が真っ赤に染まり、本能に身を任せれば、事は簡単に成し遂げられた。
だが、達成した高揚感よりも、その常は好奇心に輝いている瞳が混濁していく様を見ていると頭の片隅が冷えていく気がした。
(あぁ、私はなんてことをしてしまったんだろうか。)
いつも幼い子特有の舌ったらずな声で、親しげに私の名前を呼んでいたあの子が。
私が作った料理を美味しいと言って笑顔で食べていたあの子が。
もう動かないなんて。
この町で1番仲の良かった子を殺めてしまった絶望と後悔が押し寄せてくる。
死体を前にどんな動作もしない自分は側からみれば至極冷静な様子だっただろうが、その後に行った行動により混乱を極めていたことが窺えるだろう。
そう、私は。
私の料理を好きだと言ったあの子を美味しく仕上げることにした。
それが、殺めた者の務めだと思ったからだ。
あの子と同じように食べた人が美味しいと笑って食べられるように、今までの経験を生かし最善を尽くして調理を終える。
全ての部位を余すことなく使い、人間であったことを微塵も感じさせない様々な料理へと変え終え、厨房の机の上にお皿を置く。
その時、厨房へと続く廊下から足音が聞こえた。
(ちょうど良い。私1人では食べ切れなかっただろうから、みんなに食べてもらおう。)
料理の仕込みに来たみんなに、新作料理の試作を作り過ぎたのだと説明し、スプーンとフォークを配る。
(あぁ、良かった。これで、あの子を残すことなく食べることができる。)
「いただきます。」