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夜襲

ソロモン諸島 マライタ島

アメリカ海軍


真珠湾奇襲がなかったので、この世界のアメリカ軍は大量の戦艦を未だに保有する大国であった


その為、上陸作戦は艦砲射撃の支援のもと行われることが多かった


「ふん、この調子ならトウキョウまであっという間だな」

キンメル少将はそう呟き、資料を読み進める

彼が今読んでいるのはラバウルへの威力偵察の結果である


対空砲による反撃、迎撃機複数上がるも偵察隊の損害は墜落二機、損傷一機と少なく、上層部も、戦艦の装甲で敵の攻撃を弾きつつ、砲撃で敵の飛行場を粉砕。そのまま日本軍陣地を破壊する


「これでチェックメイトだな、ジャップ」

そう呟き、別の資料を見たキンメル少将は眉をしかめた


「マッカーサーのグズ野郎、アメリカの面汚しめ」

その資料は日本軍によるフィリピン陥落の報告だった


潜入工作員による破壊工作、そして空挺部隊による強襲降下により、ルソンとコレヒドールは陥落。フィリピンの要所を瞬く間に失ったアメリカ陸軍はバターンに集結し、徹底抗戦の構えだった


だが、キンメルからしたら先制攻撃したにもかかわらず、日本軍に負けた陸軍の存在が許せなかった


元々アメリカ陸軍は本土防衛の意味合いが強く、戦前の会議でも「日本迎撃は海軍に任せて、陸軍はドイツに集中しろや」的な発言が上がることもあり、陸軍と海軍の間では致命的な溝があった


実際、今回の戦争でアメリカ陸軍はやられっぱなしで、海軍は前線をソロモン諸島まで押し上げてきた実力がある


「これなら、勝てる」

キンメルは確信した。オレンジプランにより戦艦や空母の増産も開始してる。これで勝てないはずはない

日本軍の艦隊はソ連軍や中国大陸近海に展開している


「……これは、攻める時だな」

アメリカ軍上層部の見立てはソロモン諸島からパプアニューギニア、インドネシア、フィリピンを島伝いに占領、その頃には日本軍の戦力は尽きているというのが上層部の見解だった


だが、キンメルの心の内には早期講和の一言があった


日本政府の発表によると、先のフィリピンでは陸軍だけでなくアメリカ海軍にも少なくない犠牲が出ただろう


「これ以上やらせるわけにはいかん」

キンメルは決断した


この作戦は一方通行だ。ミスは許されない







*****







アメリカ軍はソロモン諸島に上陸してから僅か二週間で完全占領を宣言した


続いてアメリカ海兵隊は海軍の支援のもと、サンタイザベル、ブーゲンビルに強行上陸。日本軍は遅滞戦術に移ろうにも、艦船、航空機の支援を前に日本軍は壊滅し、対した抵抗も出来ず、ソロモン諸島から離脱していった


ここまでの一連の流れは世界でも例を見ないほどの早業で、さながらナチスドイツの電撃戦の海上版とも言えたこの活躍は、アメリカのマスメディアに大きく取り上げられた


キンメル大将(出世)発案のこの作戦はアメリカ軍の完全勝利に終わり、次弾作戦としてアメリカ海兵隊と陸海軍は日本軍の一大根拠地のラバウルに一大攻勢をかける、アパッチ作戦を立案し、実行に移った







*****







ブーゲンビル島

日本軍 地下陣地

佐伯さえき大佐


ブーゲンビル島に最初に上陸した日本人は農家であり、家を建て、農地を開墾し、この島に骨を埋めた

住民との仲も良く、食材や薬のやり取りや島の行事にも参加を許されたほどである


そして、時が流れるにつれ、ブーゲンビル島で作られる南国の果物が日本や中国で流行り、日本の農民もこの島に大勢現れた


その中に蓮部隊の人員が何人いたのか記録には無い。だが戦後の日本軍の地下陣地を調査したアメリカの学者曰く万単位の人員がいなくてはここまで掘れないだろう、と言っていた


入り口は複数箇所にわたり、そのどれもが巧妙に隠されている

食料や弾薬もかなりの量が溜め込まれており、地上には申し訳程度の野戦飛行場と部隊が展開していた


完全に罠だった


アパッチ作戦発動を現地人経由で知った日本軍は直ちに行動を開始した

深夜、潜水艦基地から発進した伝達特殊潜航艇がブーゲンビル島だけでなく、ブカ島、タロキナ、ブイン、ショートランドに潜む各大隊に行動を開始時刻をアパッチ作戦開始から2日後と伝えた


アパッチ作戦開始に伴い、海軍艦艇は数日前から拠点防御のための部隊のみ残り、数日後、ショートランド泊地やタロキナから航空機が発進し各泊地や飛行場は静まり返った


そこへ、ジャングルからにじりよった日本軍は擲弾筒と迫撃砲、それとドイツから買い取って独自に開発した擲弾連続発射機の発射準備を進めた

日本軍ゲリラの対策は主に人による見張りがなされているのだが、緒戦の結果からアメリカ軍は完全に慢心しており、それらは潜入した蓮部隊の兵士が排除していた


「少尉殿、攻撃準備、完了しました」


「よぉーし、無線」

側の無線手が受話器を佐伯に渡した

佐伯は顎髭を撫でながら受話器を取り、話し始めた


「全隊、聞こえるか、こちら満月、発射準備は出来てるか?」


《流星1、感度よし》


《流星2、聞こえます》


《流星3、大丈夫です》


《流星4、問題なし》


「よろしい、では、開戦といこう。撃ち方、始め!」

佐伯大佐が号令を下すと、あちこちの隠匿陣地から砲撃が放たれた


擲弾連続発射機は八発の砲弾を込めた発射筒を円形状に束ねた機構を有しており、砲弾は九◯式野砲の砲弾を改造した九◯式焼霰弾改を使用しており、符丁の如く、南方の夜空に流星を演出した


風切り音と共に砲弾がアメリカ軍の基地や軍港に着弾。アメリカ軍の築いた全てが真っ赤に燃えた


「次弾装填!砲撃後、速やかに離脱!」

佐伯大佐が無線機に怒鳴りつけると同時に司令部も撤収を始めた


砲撃座標はあらかじめ蓮部隊が調査してあったので、砲撃からの即時撤退に淀みはなかった

アメリカ軍が混乱から立ち直る頃には日本軍は完全に撤退しており、酷い時にはそこへ第二波の攻撃が繰り返された

それがソロモン諸島全域で、それも同時に行われておりアメリカ軍は混乱の極みに入った


日本軍への掃討の手を抜いた為にアメリカ軍は手痛い反撃を食らうことになった


地上に展開している部隊は囮。本命は地下陣地に籠る精鋭の機動砲兵大隊と強行偵察小隊、そして陸軍が誇る特殊水上打撃工作部隊による攻撃によりアメリカ軍は翻弄されるのだった

海軍艦艇は特殊水上打撃工作部隊により撃沈されており、救援信号を聞いたアメリカ海軍は一部艦艇を支援に向かわせる羽目にあった


主力がラバウルへ行っている以上、基地警備隊でどうにかしなければならず、ラバウルから帰ってきた基地航空隊を狙った攻撃も熾烈さを増していた


更に厄介なのはアメリカ軍にそれらを追撃する十分な余力がないことだ

日本軍は積極的にアメリカ軍の弾薬運搬船や兵員輸送船を狙うため、此度の夜襲でアメリカ側の戦力が枯渇してしまったのだ


いたちごっこの泥沼、アメリカ軍の戦況は一気に悪い方へ覆った






*****








ラバウル

第17任務群

フランク・J・フレッチャー少将


ラバウルはニューブリテン島の一角にある都市で、天然の良港を有するこの都市は太平洋という大海原を舞台にした戦争において、重要な意味を持つことだろう


そのラバウルの日本軍の拠点に砲撃する”ソルトレイクシティ”を艦橋から眺めつつ、フレッチャー少将は思考していた


「やはり罠か」


「どうかされましたか、少将」

幕僚の一人がフレッチャーの言葉に反応した


「日本軍もこのラバウルが重要な拠点なのを分かっているはず。なのに防衛の部隊はおろか、偵察の機体すら飛ばしてない。まるで待ち構えてるぞと言わんばかりじゃないか」


「少将殿もそう思いますか、自分もです。あのトーゴーの子孫がこんな軟弱なはずがない、きっとあの島のジャングルに潜んでいるはずだ、と考えてしまいます」


「ありうるな、ラバウルは活火山が多いから、ソロモンのように地下要塞を掘るのは無理だ。隠れるならあのジャングルしかない」

だが、そのジャングルも今から上陸する海兵隊一個師団と陸軍一個旅団を止められる程の数を隠すのは不可能に思えた


「思い過ごしだと良いのですが……」

その幕僚はそう呟いた


だが、フレッチャー少将は冷や汗が止まらなかった


あの島には何かある。フレッチャー少将はそう直感した






*****






アメリカ軍がラバウル上陸から二週間ほどしたその日、修復されたラバウルの港湾で弾薬運搬船が爆沈した


乗員の不手際で処理されたが、次の日には兵員輸送船が、その次の日には潜水艦が、毎日一隻ずつ沈んでいった


何が起きたのかさっぱりわからない。ジャングルに潜む日本軍ゲリラの仕業を疑い、幾度か偵察隊を送り込むと銃撃にあい、部隊は散り散りに帰ってきた


やはりジャングルに敵はいる。周辺住民の反対を押し切り、アメリカ軍はジャングルを焼き討ち。新しく開発された枯れ葉剤をばら撒きジャングルに潜む日本軍を探した


やがて、ジャングルに潜んだ日本軍の一個小隊を補足。爆撃により殲滅した。時に1944年の出来事である


だが、彼らが全滅しても艦船の爆沈事故は減らなかった


魚雷艇やタグボートによる監視もあざ笑うように輸送船や潜水艦、駆逐艦が沈み、港の水深は浅くなりつつあり、大型艦は入港を見送るほど事態は悪化していった


結果、アメリカ軍はラバウルを本格的に利用することは出来ずじまいだった






*****






ラバウル

蓮部隊 ラバウル駐留隊

通称”骨部隊”


「暑い」

本間中尉は首に掛けた手ぬぐいで顔を拭い、垢を削ぎ落としながらボヤいた

手回し発電機によりつけられた電気により明かりは灯されているが、火山島の地下は地熱があるし、空気も最低限の空気穴しかないので暑いことこの上ない

出撃部隊の書かれた黒板も湿気のせいか、カビが目立ってきた

個別に割り当てられた部屋、というより穴蔵には小さな裸電球と座卓に私物入れのカゴと座布団だけであり、座布団あるだけマシとも思えてるあたり、麻痺している


このラバウルはイギリスの統治下時代、多くの日本軍工作員が労働者としてこの島の開拓に参加していた


その際、港湾の一部に空間を作り、郊外の地図には載ってない下水路や民家と繋げた


初めから日本軍はジャングルには居なかった。アメリカ軍が上陸した港の下に作った巨大な地下要塞に籠っていたのだった


ちなみにジャングルの部隊はラバウルのアメリカ軍飛行場への偵察隊で、不運にも捕捉されてしまった部隊でもある


地熱を利用した水耕栽培と海の幸で食いつなぎ、秘密の通路から出撃し、アメリカ軍の艦艇に大穴をあける、骨を埋める覚悟で挑め。それがこの部隊の使命であり、後に部隊章も刀を掴んで地面から這い出る骸骨になっているほどだ


「失礼します!」


「入れぇ」

本間中尉の穴蔵に入ってきたのは宮田軍曹だ


「本間中尉殿、実は本日出撃の浅田伍長が赤痢で倒れまして、藤田軍医の診断だと作戦参加は不可能とのことです」


「そうかぁ……では、私が、行こう」

浅田伍長の診断書を物入れにしまい、本間中尉がそういった


「久々に水を浴びたいしな」

ニヤリと笑った本間中尉の笑顔は汚れと印影のせいで不気味だった


本間忠彦中尉。終戦後、アメリカ軍から”地獄からの使者”、”不死身の男”と呼ばれ、伝説になった男である







*****






フィリピン

コレヒドール基地

第三次毘島派遣軍 大森軍曹


天井がまた揺れた


砂がパラパラと降ってくる


一時期、レイテ方面にひっこんでいたアメリカ海軍がレイテに待機していた空母と共に戻ってきたのだ


その艦載機の爆撃が日本軍が占拠したコレヒドール基地に降り注いでいるのだ


大森軍曹は飯盒の飯に砂が入らないように細心の注意を払いながら食事をしていた


「やれやれ、ゆっくり飯を食う暇すらないな」


「軍曹殿、ここにアメリカ軍が来るんですかね?」

同じ分隊の機銃手の瀧が話しかけてきた


「うむ、おそらくだが、敵はバターンの残存兵を回収しに来たのだろう」


「つまり、こっちは陽動ですか?」


「決め付けは良く無いが、おそらくな」


「だったら、今頃アメ公はバターン近海の掃海ですか」


「まったく、アメ公は派手な戦いをするなぁ。こっちは弾丸一発無くしただけでも大騒ぎなのに」


「国力の差ですね」


「あまり滅多なことを言うな。そんなこと言ってる暇があったら機銃弾を貰ってこい。俺たちの堡塁は最前線なんだから、玉城ならタバコと交換してくれるだろう」


「はい、気をつけます」

そう答え、瀧は堡塁を出て行った


数日後、アメリカ軍はコレヒドールやルソンに大規模な艦砲射撃と爆撃を加え、上陸を開始し残存部隊の撤収を始めた


だが、日本軍の水陸両用部隊がアメリカ軍に襲い掛かり、尋常では無い被害を出し、アメリカ軍はそのまま居座り、島伝いに侵攻するのを諦めさせる事になったのだった







*****






サンタイザベル島

アメリカ海軍 バオロ飛行場


ここ、サンタイザベルはアメリカ海軍の一大根拠地であり、ラバウルでの日本軍の妨害が続く中、追い出された輸送船や艦艇がここに集まっていた


飛行場から少し森に入った場所に物資の集積場があり、そこの茂みに潜んだ日本兵が発行塗料で書かれた文字盤の時計を見ていた


「……時間だ、行動開始!」

小隊の指揮官の豊林少尉が小声で合図した


小隊全員が匍匐前進で物資集積場ににじりよっていく

見張りの目をかいくぐり、外しておいた有刺鉄線をくぐり、物資の入ったコンテナの影に隠れる


「よし、第三作戦。かかれ」

豊林少尉がそういうと、小隊があらかじめ、決まっていた三つに分かれ、辺りに散らばっていく


短機関銃を持った第一班が巡回の兵士を銃剣やナイフで音もなく殺し、二班と三班が物資に爆弾を仕掛けていく


膨大な補給物資に爆弾を隠し、自分達が使う分をかすめ取る

島に蓄えられた物資があるとはいえ、量も限られているので足りない分は自分達でどうにかするしか無い

故に、夜襲部隊には輜重兵とそれらを援護する選抜狙撃隊が随伴として付いていた


「第二班、小島分隊、設置完了しました、欠員なし」


「第二班付属、輜重隊、大野分隊欠員なし」


「第三班、月島分隊、設置完了しました。欠員はありません」


「第三班付属輜重隊、高部分隊、欠員なし」


「よし、後は殿の第一班だけだな、静かに来てくれるといいんだが……」

匍匐前進しながら報告のやり取りをこなした豊林少尉は腕時計を見ながら呟いた






*****






夜襲部隊 第一班 小仏分隊

牧田曹長


爆弾を仕掛けている最中、曲がり角から突如としてあらわれたアメリカ兵と遭遇した


シャツとズボンだけのラフな格好。装備を何も持ってない辺り、トイレだろうか


一瞬で考えをそう締めくくると牧田曹長は手にした銃剣を振りかざし、アメリカ兵に飛びかかった


「What fack!!」

しかし、見つかったアメリカ兵は大声で罵詈雑言を発しながら真っ先に逃げ出した為、牧田曹長の攻撃をかわしてしまった


「伏せて!」

掛け声と共に銃声が三発。逃げ出したアメリカ兵の背中に命中した弾丸はアメリカ兵の命を一瞬で刈り取った


「牧田曹長、撃ったのは自分であります!」

そういったのは九二式拳銃を持った朝田兵長だった


「追求は後だ。点呼は?」


「終わりました、全員います!」


「強硬手段にて脱出する。実弾装填確認!沖田、無線を」


「はい、どうぞ!」

イギリス製の無線機を背負った沖田一等兵が牧田曹長に受話器を渡した


「こちら第一班、牧田分隊、敵と接触、発砲しました」


《了解した、直ちに脱出せよ東から迫による支援砲撃を行う、注意されたし》


「了解、行くぞ!」

牧田曹長の号令と共に分隊が動き出した


迫撃砲の支援砲撃が兵舎の立つエリアに着弾。アメリカ兵達は着の身着のまま兵舎から飛び出し、掩蔽壕や待避壕に逃げ込む


「敵ぃー!」

先頭を走る室塚二等兵が声をはりあげると同時に百式短機関銃を短く、三回放った


弾丸は巡回のMPの兵士に体を貫き、二人組のMPは血飛沫と共に倒れた


「あと三分で予定時刻だ、走れ走れぇ!」

牧田曹長の怒鳴り声と共に分隊全員が競歩から速歩に速さが変わった


あと一分以内にこの基地から脱出せねば、自分達が仕掛けた爆弾で木っ端微塵になってしまうのである


だが、焦らない。こんな時こそ冷静になり、最善の手を尽くすのが日本軍人の本領である


「あのトラックに乗れ!」

牧田曹長が指さしたのは兵員輸送用のトラックだ


分隊が荷台に乗り込み、牧田曹長と朝田兵長が運転席と助手席に乗り込む


「曹長殿、失礼ですが、運転の経験は?」


「軍の訓練で一回。実家は自転車の修理屋だから、乗り物の運転には自信がある」


「そうですか……」

幸運にも鍵は刺しっぱなしだったのでクラッチを踏んでエンジンをスタートさせる


「基地内に味方はいない!動くものは全て撃て!」

朝田兵長が荷台の兵員に声をかけ、自身も百式に新しい弾倉を差し込む


日本兵を満載したトラックが動き出した


迫撃砲の支援砲撃はそろそろ打ち止めになり、被害確認に奔走するアメリカ兵の間を縫ってトラックは走る


「死ねぇ!死ねぇ!アメ公!」

待避壕から出てきたアメリカ兵に容赦のない掃射を食らわせる朝田兵長


「後方より四駆!機関銃あり!」


「火力を集中!」

通信要員の沖田も拳銃を引き抜き、後方より迫って来るジープに銃撃を浴びせる

戦闘を想定していないジープはあっという間に蜂の巣になり、炎上しながら横転して止まった


「検問を破る!衝撃に備え!」

トラックが検問所のフェンスに衝突し、ゲートをぶち破った


「やったぞ!脱出した!」


「万歳!万歳!万歳!」

荷台はすでに万歳三唱でお祭り騒ぎだった


「やりましたね、曹長殿」


「ああ、まだ完全に安全ではないが、こちらの勢力圏まであと少しだな」

そのとき、後方から火山の噴火を思わせる大爆発が起こった


「アメリカ軍の主要兵站基地は破壊できた。損害は0。まさに完全勝利ですな」


「うむ、あとはこの勝利を何回再現できるかだな……」

牧田曹長は憂鬱そうに呟いた


日本軍の夜間襲撃の成功には現地民の協力が必要不可欠だった


アメリカ軍が仕掛けた集音装置や地雷原を現地民が調べ上げて日本軍にリーク、または故意的に破壊したり、中には日本軍に変わりアメリカ軍の基地に爆弾を仕掛ける勇猛な人もいるほどだった


蓮部隊が行った工作が実を結ばせただけでなく、ジャングルに潜む日本軍を探すためにジャングルを焼き払ったり切り開くアメリカ軍を敵視する島民が多いのも事実だった


故に、アメリカ軍は現地民との信頼を回復させる事から始めなくてはならず、その行動を制限されての戦いを強いられることになった

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