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☆一日目 一時間目

「ああ、大丈夫。ありがとう」


ぶつかった男が差し伸べた手を掴んで立ち上がる。

そして、改めてハッキリ男の顔を見たときに、俺は大声で叫んだ。


「これイベントだ!」


男の顔はイケメン。身体は引き締まっていて優しそうな雰囲気だ。

そして、朝にパンを加えて走る女とそれにぶつかる男……。

間違いなく初回の出会いのテンプレイベントだ!


「おい! シエルこれイベントだろ?!」


イケメン男は急に叫ぶ俺を不思議そうな顔で見ているが構わずにシエルに話しかける。


『大声で叫ばなくとも心の中で読んでいただければお答えします』

(それを早く言え。それよりこれは所謂出会いイベントで、あいつは攻略対象か?)

『その通りでございます。彼は二神優也さん。このゲームで最初に出会う攻略対象であり、攻略難度ももっとも低めでございます』

(ほう。もっとも攻略難度が低い……

か。んじゃあこいつでいいや)

『よろしいのですか? 今日は出会いのイベントが目白押しですし、皆さんを見てから決めた方がよいのでは……』

(まっ、見てろ。俺の乙女ゲーRTA新記録をその目でよ)


「あー、いったぁーい☆」

「ごめん。本当に大丈夫? 頭とかうってない?」


心配そうに顔を覗き込んでくる。まぁ、少し失礼に感じる言動をイケメンが言い放ったが、それは置いといて……。


「そうなんですぅ。頭がすっごぉく痛くてー……。よかったらぁ、少し見てもらっていいですかぁ?」

「え……うん」


そして、更にイケメンが距離を詰めてきた瞬間に思いっきり抱きつく。

そして、乙女ゲームのエンドってのは大抵キスだ。

だから、これでキスをすりゃ……。


「やっぱり無理だ! 初対面の相手に……それも男相手にファーストキスを捧げるなんて俺は嫌だー!」

「え? え?」

「悪かったな。えー、なんだっけ? 優也くんだっけか? 申し訳ないが俺と付き合うのは諦めてくれ」

「はあ?」


俺の情緒不安定さにイケメン(以下優也くん)は目をパチクリさせている。

優也くんに一言、じゃあなと声を掛けてから俺は優也くんの元を去り学校へ向かった。


————。


『翔子様。RTAを見せていただけるのでは……』

(うるせぇよ。キスなんて、できっかつっーの)

『別にキスだけが乙女ゲーの終わりではないですよ。それに乙女ゲーはオチも大事ですが、それよりも過程が大事なのです。過程がなければどんなオチにも感動や意味はありません。それになんですか先ほどの喋り方は』

(だいたい乙女ゲーの主人公なんてあんなもんだろうが)

『……なんだか、翔子様は雑に乙女ゲーと少女漫画をごった煮してそれからなにか悪い方に勘違いをしてらっしゃいます』


幸先の悪いスタートにため息をつきながら学校に到着したとき急に後ろから声を掛けられた。


「ちょっとアンタ! 今朝優也くんに抱きついたって本当!?」


声に振り返るとそこには、怒った顔をした少し意地悪そうな女の子が立っていた。でも、可愛い顔をしている。

えー、これは、所謂ライバルキャラって奴だろうか……?


「えーと、あれは事故で」

『故意ですが』

(やかまし!)

「事故でも抱きついたことには変わりないし!」


キンキンとどこか耳に痛いような声で女の子が叫んだ。でも、可愛い。


(なぁ、これって所謂悪役というかライバルキャラだよな?)

『坂本ローレンさんです。帰国子女で優也さんに対して好意を寄せています』

(当然攻略対象では……?)

『ありません』

(だよなー)


「ねえ、ローレンさん。私優也さんに興味ないの」

「信用できないわ」

「本当よ。どちらかというと貴方の方に興味が……」

「……え、それって」

「そういうこと」


俺はレズのフリをしてこの場上手くやり過ごす作戦に出た。

まっ、ローレンさんに興味があるのは嘘じゃないし。

俺の言葉を聞いて、ローレンさんはどこか身の危険を感じたのか、


「と、とにかく、次あんなことがあったら承知しないから!」


と言って、去ってしまった。


————。


「災難だったね」


と、またまた後ろから声を掛けてきたのは、長身の女の子だった。

髪はショートで先ほどのローレンさんとは違って可愛いというより美人さん。


「あの子、一年生の頃から二神にベタ惚れなの」

「なんとなく、それはわかったわ」

「で、さっきの話で気になったんだけど、あなたってレズ? 」

「違うわ。私はノーマルよ。貴方は? それと貴方と呼ぶのもあれだからお名前も教えて欲しいな」

「んー、ボクもある意味ノーマルだよ。で、失礼した名前だったね。ボクは犬風藍。変わった名前でしょ?藍って呼んで。で、 君は?」

「……翔子」

「上の名前は?」

「えっ、あっえっと、翔子」

「あっはっはっ、翔子翔子さんか。素敵な名前だ。どうせ後でクラス表を見ればわかるけど、言いたくないなら今は聞かないことにするよ」


(知らないだけだっちゅーの。おいシエル。俺の上の名前は? 現実そのままか?)

『いえ、設定されてないのでただの翔子さんですね』


なんだそれ……。まっ、多分問題はないんだろう。


「ね、クラス表見に行こうよ。こうして折角縁ができたんだ。クラス一緒になるといいね」

「ええ、そうね」


そう言って俺は藍さんと一緒にクラス表が貼ってある体育館へと向かった。

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