4.壊れない機械と最強の機械
ある時、壊れない機械が住む国と、隣国との間で戦争が勃発した。
終わりの見えない、泥沼のような戦争だった。
壊れない機械は戦争機械として、出兵することになった。
壊れない機械は、同じ国に所属する最強の機械と一緒に戦った。
最強の機械はとにかく強かった。言葉では表せない程に強かった。
右腕にはビーム砲があって、一発で街が消滅した。
左手にはミサイル砲があって、これは星をも壊す事ができた。
頭部には高性能照準器があって、狙い違わず攻撃できた。
腹部には超融合動力炉があって、数千年単位で行動できた。
最強の機械は、その最強さ故に、多くの敵に狙われた。
最強の機械の所有者こそが、この戦争の勝者になると思われた。
最強の機械が倒されたら、この戦争は終結するとさえ思われた。
最強の機械は戦った。戦って戦って戦い抜いた。
最強の機械の前に、並みの戦争機械達は手も足もでなかった。
最強の機械によってガラクタと化した物言わぬ機械たちが、
山のように積み上がっていった。それでも、最強の機械は戦う事を止めなかった。
最強の機械は最善を尽くしたけども、あるとき、敵国にある最強の機械の次ぐらいに
強い機械と三日三晩戦って、ついに倒されてしまった。
最強の機械の所有者たちは落胆したけども、誰一人として最強の機械が壊れてしまったのを
悲しんだり悼いたんだりはしなかった。
最強の機械は最強だった故に価値があったのだ。敗れてしまった今となっては
最強の機械の事を、誰も気にかけたりしなかった。負けてしまった今となっては
最強の機械では無くなってしまったのだから。
一方、壊れない機械も戦っていた。その戦いっぷりは地味だった。
手に持った鉄の槍で、地道に敵を倒していった。敵に敵わず敗走する日も多かった。
10回戦って、2回勝てれば良いぐらいだった。
敵に囲まれて機関銃で蜂の巣にされた事もあった。
地雷を踏んで下半身ユニットが吹き飛ばされた事もあった。
壊れない機械は特に大活躍もしなかったけども、目の前の戦いから目を背けたりもしなかった。
自分のやることを淡々とやっていた。
そうこうしているうちに、戦争は終わった。
形の上では勝敗が着いたけども、どちらも勝者とは言えないような、
お互いに酷く傷つき、消耗し疲労疲弊した不毛な戦いだった。
戦争の立役者だった、最強の機械を修理しようという声も上がったけども、
復興優先や平和維持の観点より無視され、ついにそのまま廃棄処分になってしまった。