心【こころ】
月野颯太【ツキノソウタ】
高校3年生
颯の幼馴染
颯大好き
立花颯【タチバナハヤテ】
高校3年生
颯太が好きだけど認めたくないツンデレ
立花春樹【タチバナハルキ】※2話目から登場
高校1年生
颯の弟
兄と颯太の中を応援してる
アイツはオレの幼馴染。端正な顔と、すらりとしたクラス1の長身、恵まれた頭脳、まあまあの運動神経で、当然のようにモテる。が、その性格はドライ極まりない。そんなアイツの唯一の例外。
それが…俺。
「蒼太、この問題できないんだけど。教えてくんない?」
「はい!颯さんっ!」
さらさらと解いていく蒼太をじっと見る。
長い睫毛にさらりと流れる柔らかそうな髪。
柔和な笑顔。
・・・・俺以外に笑ってきたのか?
ムカツク
だから
「なぁ、」
振り向かせると同時に手の甲をつねってやった。
どうだ。痛いだろ。
「っ…颯さん、一体…なにを・・・・?」
「自分だけサラサラ解いてんじゃねぇ。お前だけ理解しても俺がテストで困るんだよ。わかりやすく説明しやがれ、このアホ。わかったか?」
「・・・・はい颯さんっ!今回も颯さんを成績上位者にして見せます!」
ほら、俺が声をかければこいつの頭の中は俺でいっぱい。
言わなくても伝わるし、少しきつく当たってもこいつは文句ひとつ言わない。
それがあたりまで、続くと思っていた。
でも、
ーーーーーーーーーーーーーー
「蒼太、いつもの買ってきて」
「はい!颯さんっ!」
これが
「蒼太!準備しとけっていっただろ!それでも俺の犬か?」
「は、はい、颯さぁん…!僕は貴方の犬です!」
これがいつもの
「蒼太、帰るから早くして」
「はい!颯さんっ只今っ!!」
これがいつもの俺達で、この関係は、変わらない。
そう思っていた。
なのに。
ーーーーー
なんて日だ。
今日の体育で足くじくなんて。
ずきずきとした鈍痛が足首から全身に伝わる。
「…颯さん。足、怪我してます?」
「ん、今日の体育でやった。」
「そう・・・・よいしょっと。」
あろうことか、押していた自転車を止めて、蒼太は俺を抱きあげて近くのベンチに座らせた。
「見せて・・・颯・・・」
「なっ!」
そっと低い声で囁くもんだから、俺はなんか、あっけにとられていて。
「思った以上に腫れてる・・・・。」
壊れモンを扱うみたいな、男のくせに長くて綺麗な指が、俺の足に触れてくる。熱い。何が?身体が?足が?それともコイツの指が?
「歩ける?」
「歩けない。」
「そう・・・」
その瞬間、キスされていた。
は?そういう雰囲気じゃなかっただろ!?何なんだよこいつ・・・・!抵抗して蒼太の胸ぐらをつかむ。
「はッ・・・!な、にすんだよ・・・・!犬のくせに・・・!」
「・・・好きなんだよ。颯が」
俺の思考はフリーズした。
「僕はさ、颯が好きなんだ。好きな人を側にして、隣にいるだけで胸を高鳴らせて満足するような、昔の僕じゃない。この意味わかってる?」
「はあ!?お前意味わかんねー!」
「やだなぁ。意味わかんないなんて、簡単だよ。告白してるんじゃない。あなたが好きだ。わかってる?
」
もう意味わかんねーよ!いきなりなんなんだよコイツ!頭がぐちゃぐちゃしてて、何もわかんねー!こんな蒼太は知らない、俺が知ってる蒼太はいつだって、俺の言葉だけ聞いて、喜んで、俺だけに優しくて、俺を、好きで…
「っ!わかってるつーの!!」
「っ…」
見たこと無い、痛みを帯びた、苦痛の表情。
熱を帯びた足はとっくの昔に感覚がなくて、今は酷く胸が痛かった。呼吸すら、辛い。
「……わかってるくせに、僕の前に綺麗な足を投げ出して、触らせてっ」
「…履かせろ」
「靴を、履かせるの?」
震えた蒼太の手が、俺に靴を履かせて、泣いた。
「ホントにあなた、サディストだね…っ」
――残酷。
俺にだけ優しく
「颯のためなら、なんでもできると思ってた。」
俺の言うがまま
「あなたの我が儘は僕に甘えてるみたいで…愛しくて、愛しくて、愛しくて…!だけど僕はっ卑しい人間だから、颯に触れたくて、堪らないんだよ!僕らはもう子供じゃないんだ!もう、ただ側にはいられないっ!」
――側にはいられない――
「なんだよ・・・・それ・・・・」
ずっと長い時間息をとめたような苦しさ。そして久しぶりに体を巡る酸素に目まいを覚えるような。ふわふわとした嫌な感覚が続く。
「家まで送るから、乗って」
暫しの沈黙の後、自転車にまたがった蒼太はもういつも通りの笑顔で、少し恐怖を覚えた。
震える手でギュッと蒼太の制服を握る。
「・・・俺だって、好きなんだよ・・・・!」
切れ切れの声は、うまく風が消してくれただろうか。
この作品は、ある漫画のセリフから派生したものです。