猫又とマタタビ
二月某日 朝
拠点には毎朝、何匹かの猫がやって来る。
間延びした声で鳴く猫たちに、洗濯物を干していたリュウは困っていた。
「お前ら、ちょっと待ってろよ……、シャム、シャム」
多分、今日一番の大きい声を出してシャムを呼んだ。猫の相手をするのは、シャムの役目だから(おそらく)だ。
「……呼んだ?」
まだ寝惚けているようで、これから三度寝に入りそうな勢いだ。
「猫来たから、残飯でもやっといてくれ」
「わかった」
また部屋に戻るシャム。この庭__といっても、此処は人里離れた深い森の中。スペースなんて使いたい放題だが、一応、柵で囲ってある__に物干し竿は無いから、枝と枝をロープで繋いで代用していた。
「リュウさん、これ、いい?」
「あぁ、どうぞご自由に」
味噌汁やら干物やらを持ってきたようだ。食べさせていいのかは謎だが、猫と話せるシャムが与える物に間違いは無いだろう。
「……なるほど」
会話が始まった。洗濯物を干しながら、彼女らの会話を聞く。すっかり楽しみになってしまっていした。
「……天気? そーなのか」
天気? 雨が降る、とかか。
「リュウさん、今日、晴れ」
「え、あぁ、そうかい」
何だ、晴れか。なら良かった。
「あと、明日は1匹、ふえる」
「ふえる?」
「新しい、仲間。仔猫」
「あぁ……またか」
残飯処理に困らないのはいいが、流石に8匹は多すぎだと思う。
……しかし、何故彼女はこんなにも猫に好かれるのか? 今までも気になってはいたが、本人に尋ねても首を傾げるだけだ。
「よし」
今日こそ、その理由を突き止めよう。
「ん? リュウさん、なに?」
「え……あ、いや、別に」
思っている事が口から出てしまうのは、悪い癖だ。
「ん、猫、帰るみたい」
「今日も全部、食い尽くしたな」
「元気で、良かった」
「そうかい」
にこりと笑い、室内に帰るシャム。……行動開始。