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パンドラ・パンデミック  作者: Alphard
三年前
6/8

教室を出て

3年前 12.29

「じゃあね、千里」

「暗いから、紫乃も気を付けて」

 わかってる、と言って、見慣れた級友の背中に手を振る。今日は体育祭の準備があり、教室を出るのがいつもより遅かった。外はもう真っ暗だ。全員が帰宅部の病魔学級には慣れない光景だった。

 昨日までは、自転車で飛ばしていた急な下り坂を歩く。普段は自転車通学なのだが、昨日タイヤがパンクしたせいで徒歩で通う羽目になった。散々だ。

 兎に角、今の私は機嫌が悪かった。早足で海岸沿いの坂道を歩いていると、珍しく反対側の道……つまり崖側に人影がある事に気付く。少し歩調を緩めて、暗闇の中の影を食い入る様に見つめた。

 何かを海に投げ捨てている?

 それって不法投棄になるのかな、などと呑気な事を考えていると、そいつはもう一つ、何かをゴルフバッグから取り出した。

 僅かな月明かりが照らした"モノ"には、確実に四肢が付いていた。

 海面に飲まれる"モノ"。

「……え?」

 確かに、冬の海は寒い。だが、寒さとも違うそれは私の身体を竦み上がらせる。微かに漏れた声にその人影が気付くのは、そう遅くは無かった。

 悪寒がする。

 逃げろ、速く、と本能が喚くが、何かに支配されたこの脚は言う事を聞かない。

 目が合った。近付いてくる。物凄い速さで脳が危険信号を送っているのだろうが、もう遅かった。

 気が付いた時には腕を握られ、甘い香りが無理矢理、鼻腔に入り込む。

 刹那、視えたその目はまるで狼男の様で、吸血鬼の様でもあり、ハロウィンみたいだ。何だか笑えてきてさ。そして視界が淀む。

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