今時の流行り
一月某日 昼
寒い。
痛い。
「大丈夫? また休む?」
「いいよ……」
痛い、痛い。
「本当に大丈夫、ですか?」
少しカタコトの日本語が横から聞こえるが、それどころじゃない。さすがに、毎日200歩動くか動かないかの生活にこの仕打ちはきつかったか。
「大丈夫だってば」
半ばヤケになって、差し出された手を誰の物かも見ずに振り払った。膝は笑い、土踏まずが痛み、靴擦れも酷い。最低だ。
「あ、その店のパンケーキ! 今流行ってんだよ。行かない? リュウ」
「……分かった」
気を利かせた夜桜の誘いに、甘える事にする。
「ほらさ、そこの席座って!」
「リュウさん、無理、しないで」
あぁ、と気の無い返事をして、ボックス席の端にどさりと腰掛けた。
「ゆっくりお茶でもしよう」
そう言って、彼女は特大のパンケーキを頼む。私とは紅茶を頼み、ぼーっと机の上のメニューを見つめていた。
「もうそろそろ帰る? 服も買ったし、食料も当分は持つだろうし」
「いいのか? まだ昼過ぎなのに」
「リュウさん、たくさん、歩いたし」
先程買ったばかりのバレッタを着けたシャムが、少し恥ずかしそうに笑う。
「……そう、かい」
じゃあ、お言葉に甘えて。そして私達は、長い長い帰路に着いた。