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パンドラ・パンデミック  作者: Alphard
プロローグ
2/8

あれから1年後、名前はもう無い

「……ハァ」

 また無駄に溜息。寿命が縮むらしいが、私にはあまり関係無い。元々、余るくらいの寿命が在るのだから。

 なぜなら、私は俗に言う。

「病魔、ねェ」

 そう呟いて、自分の掌を見る。周りのネオンには似合わない、切り揃えた青い爪。

「別に、大して変わらないだろ。普通の奴らと」

 最近、独り言ばかりだ。人肌恋しく、とでも言おうか。どうも、上手く毒が吐けない。

 去年までは、こんな事、無かったのに。

 ふと、肩に誰かがぶつかる。

「っおい」

 恐る恐る顔を上げると、酔った背広のサラリーマンがこちらを睨んでいた。

「すいません」

「……お前、病魔か」

 ぴく、と身体が強張る。まさか、薬で青く変色した爪を見られたか? それとも、とても歓楽街に来る様な服装ではないからか?

 どっちにしろ。面倒な事に、変わりはない。

「病魔かって訊いてンだよ」

 胸倉を捕まれる。止めろ、Tシャツが伸びる。……今更、誤魔化しても仕方無いか。

「病魔、ですが」

 人が群がる前に……と思っていたのも束の間、すぐに野次馬が押し寄せ、周りをぐるりと取り囲む。きちんと2メートルほど離れて。耳には、とても良い響きとは言えない言葉ばかりが響いた。

「近寄ンなよ」

 掴まれていた胸倉を、大きく突き放される。

「っ……」

 バランスを崩して、強く腰を打った。

 クラっと来て、意識が飛びそう。

 このまま収容所行きか。

「……すいません」

 只管謝るしかないか。

「収容所連れてくか」

「ホント、すいませんって」

 駄目か。もう嫌だ。嫌いだ。全部。

 それから男は散々私を罵って、殴った。

 千切れそうな意識でわかるのは、ここまでだ。

 クラっと来て、死んじゃいそう。

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