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パンドラ・パンデミック  作者: Alphard
プロローグ
1/8

少々問題のある自嘲癖

「……ハァ」

 また無駄に溜息。寿命が縮むらしいが、私にはあまり関係無い。

 なぜなら私は俗に言う。

「病魔、ねェ」

 そう小さく呟いて、自分の掌を見る。

「別に、ほとんど変わらないだろ。普通の奴らと」

 最近、独り言ばかりだ。人肌恋しく、とでも言おうか。弱小ウイルスを恐れずに近寄る者など居ないものか。どいつもこいつも! あァ、苛々する。だからウイルスをそのまんまお届けするって訳だ。自分で言うのも何だが、解せない動機。

 口ずさむのは似合わないラブソングで、夢見るのは甘いくちづけ。

「ウツルウツルうるせェっつーの」

 くちづけ=感染の方程式。愛があれば関係ないだろ? 死にやしないよ、風邪程度だよ。

 こうやって今宵も、夜の街をうろついては男を誘う。そしてカミングアウト、「私は病魔」。無理矢理くちづけ、ハイ感染。

 こんな無意味な行為!

 自分が傷つくなんて事、解ってはいるんだ、頭では。

 掲示板に貼られたポスターが目に付いた。要は病魔隔離地域設置を求むって事。

「隔離隔離うるせェっつーの」

 死にやしないよ、風邪程度だよ!

 噂では、ある病魔らは差別を恐れて病魔だけの村を山奥につくったそうだ。羨ましい。どうせ病魔じゃなくとも受け入れられない体なんだよ。

 また一部の病魔一族は、おかしな宗教団体を作り何度もデモを起こしている。

 まるでライじゃないか!

 政府の大袈裟な発表。

 マスコミのオーバーな報道。

 態とらしい口コミ。

 なぜ人は同じ過ちを繰り返す? 何度も自問自答したが、答えは出ない。まあ、当事者なのだから当たり前か。

 不満と鬱屈を飲み込んで、ネオンが眩しい夜の街を一人うろつく。

 ターゲットを絞る。よし、あいつだ。

 そしてまた、男に近寄る。そっと耳元で囁く。

 何度これをしたことか。無意味にウイルスを撒き散らしたい衝動。少なくとも理性が原動力ではない。ならば本能?

 どいつもこいつも……!

 病魔だから? なに、3日風邪を引くだけさ!

 さあくちづけを。

 愛があれば関係ないだろ?

 身体が憶えた仕返し……ある意味、還元の方法。また無意味にウイルスを撒き散らす。嗚呼なんと愚かしい。

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