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会 い た い 。

作者:   隅



会いたい。


その一心で、中学3年生、小春は終電に飛び乗った。

秋田へ行くために、

切符と財布の中の10000円だけを持って。






今日、初めて知った。



その日は小春も悪いことをしたと思っていた。

なぜなら、母の大事にしていた花瓶を割ってしまったのだ。

もちろんわざとなどではない。


ところがおだやかな性格の母は、信じられないような恐ろしい形相で

小春を罵った。初めてこんな母を見た。


「ごめんなさい ごめんなさい・・・」



どんなに謝っても、母は許さなかった。

初めてのことに、小春は大変動揺していた。


父が、小春は部屋へ行けと、ここは俺がなんとかするから、と

言ったので、ベットの中に逃げた。




そのとき、聞いてしまったのだ。

争う母と父の会話を。




「あなたは、小春の味方をするのね」

「なにも小春はわざとやったわけじゃない、君にとってあの花瓶が大事なのはわかるが・・」

「あなたになにがわかるの!」

「わからないさ!君が考えてることなんてさっぱりさ!」


「・・やっぱり。あなたはあの人の味方なのね!小春もあの人の子だから味方するんだわ!」




・・・あの人?

・・・あの人の子供?



なにを言ってるのか。さっぱり。

それっきり、母と父のケンカは聞こえてこなかった。






翌日、父になにげなく聞いたところ、

父は顔を真っ青にして、言葉を濁らせた。


だが、すべて話してくれた。

私が、今の母の子供ではないこと。

秋田に住んでいる、香川美香という人の子供だということ。


父が昔、香川美香と浮気をし、私を身ごもり

香川美香は私を生んだものの、父に押し付け、今の母とは離婚の危機にまで陥ったこと。






私は、おかしいだろうか。


小春は思った。

「こんなにも、へえ。そうなの。って理解できちゃったんだもん。

だって、お母さん、私にちっとも似てないの。

まさかとは思ったけど、こんなこともあるかなーなんて、思ってたのよ。

それより、会ってみたいの。私を生んでくれた母に。」




父は、会いに行くか?

と、小春に聞いた。

小春は、もちろんよ、さっきいったでしょ。と、首を縦に振った。




そして、今にいたる。




香川美香とは、どんな人なんだろう。

小春は、好奇心と、少しの不安を胸の中に抱いていた。

その小春をのせた電車は、秋田についた。


父から聞いていた駅についたのだ。



もう外は真っ暗。







それでも小春の決心は変わらなかった。

会いたい、ただそれだけ。




続く



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