第11夜 ―Unaware―
荒廃した地
誰も気付かぬままにその花は咲く
そして――
いつか地は枯れ花は尽きよう
花は気付いた
自らが枯れていない事を
誰が――
この水は誰が
花は気付かなかった
いつもいつでも切らさずに水をくれる商人がいてくれた事を
その幸せに気付きもしないでーー
「よぉ〜〜っっっす」
ドゴォ!!
「うごぁ・・・」
学園に登校して早々・・・エルボー、そんな様だ。
しかも後頭部から思いっきりだ。痛くないワケがないだろうにこのアフォ野郎!
「てめ・・・百樹、この野郎――!」
「あ〜朝の挨拶なんでご勘弁をどうかこの不甲斐ない男にご慈悲を」
全部棒読みで謝る気が無いように見えるのは一体なんでだろう。とても悔しい気がする・・・
「・・・あぁ、めんどいわ。おやすみ」
「こんなにもノリが悪いとはどうしたんだね?雅人ぼっちゃん」
「それはね・・・あぁクソ、めんどくせぇ」
「ホントにだるそうだなオイ」
「お前の無差別なノリつっこみについてくほど元気がないだけだよこんちくしょー」
クスリと、自分だけが楽しめるのだと言うように押し殺した声で百樹は笑い・・・
「丁寧な解説ありがとう」
「もういいから寝させてください・・・」
「こんちくしょー!!!」
そして一人で泣いて走っていった。
相変わらず騒々しい男だ――
「つうか今日の授業も何も担任はいないわ自習って物も無いわどうなってやがるんだこの学校はよ、なぁあん・・・」
うちの学園の売り文句としては、まぁ定番の『有名校への高い進学率』やら『恵まれた環境』などが掲げられている。
それなのにそんな学園の平日のましてや朝早くから見られるような光景とは程遠いような状態だ。これらの放任っぷりと来たら凄いものである。
そしてうちのクラス・・・いや学園の最早名物(この場合、迷惑な物と書いて迷物と読んだほうがいいのかもしれない)
となっている百樹を放っておいていいのだろうか、そこだけが気になる。
・・・・
ついでに言うと今はそんな事はどうだっていい。問題なこれだ。
ちくしょうめ・・・
やっぱり予想通りだ、杏樹の野郎・・・寝てやがる。
そして口からよだれがいつにもまして溢れてしまいそうだ。
(・・・どうせまたキャベツやらなんやらが沢山出てくるような幸せいっぱいの夢を見てんだろうな)
やる事も無く俺は机に頭を載せてただボーっと眺めていた。次に出る言葉に期待するように―
「おじさん・・・ニンニクの詰め合わせスペシャルダイエット豚骨ラーメン・・・・大盛でお願いします」
口に含んでいた物を全て吹いてしまった気がした。
笑いを堪えるには耐え難い・・・そんなメニューだったから。
どうしてくれようか・・・まずはどう突っ込んでやろう。
ニンニクの詰め合わせは・・・うん、冷静に考えてまぁ『ダメ』だめだろうな。
そもそも狼男がニンニクを好きだってケースなんて、吸血鬼がニンニクを大好きだと高々と言い張るぐらいに有り得ない事だ。しかも大胆にも詰め合わせとな・・・いきなり突っ込んでいいのだろうか。
そして次だ。スペシャルなうえに杏樹の奴は『体型』を気にしているのだろうか・・・?ダイエットと名の付くものにした・・・なのに豚骨ラーメンという矛盾。
そして――大盛
えぇ、アウトでしょう。
よって俺は口からあらぬような程の量の何かの水を吹き出すような結果になってしまった。
ご愁傷様である。
「ぶっ、ぶはぁ!?・・・てめぇ杏樹こら、一体どんな夢見ちゃってんだよ!流石の俺も吹いた・・・って・・・」
「美味しいね、雅人君・・・えへへ」
満面の笑み、夢の中の彼女は何を思っているのだろうか。到底俺には分かりもしないだろう。
だけど最後にそう俺の名前を呼んでくれた、それだけ・・・それだけは素直に嬉しいのだと思う。
「・・・なんだよ。俺も夢の中にいるわけか。ははっ」
ただこうしているくだらない事なんかで笑える時間、ただ長ったらしくグデグデとしている時間がずっと続けばいいと今はそう思えた。
(あの時は・・・そう思えたんかな)
そしてまだ芯となって残る物。俺の、あの時の・・・
チャイムが鳴り響く。
当然のように鳴るだろう授業の終わりを告げる合図。
それも、当然だと言うように聞いていただけなのだろう。
今となっては取り戻す事の出来ない、あの時も――あの瞬間も――
ただこの手から離れて、そして消えていったのだから。
男は倒れる。
その鈍い音と共に砂埃だけが舞った。いかにも高そうなスーツを着た男は口元から赤い色を垂らしそれから動く事は無い。
こうした理由で人を殴る事は久しぶりだった。アタシは何をイライラしている・・・
ーーそうだ。
雅人があんな・・・あんなに悲しい顔を見せたからだ。
なんでか、それを見てからアタシは少しだけ苦しいのだろう。こんな事までしているのだから。
「ーーこりゃあ・・・」
人の声がする。アタシはこの声を聞いた事があるのだろう。
確かコイツは雅人の・・・
それに気付くのが少しばかり遅かった。
体が反射的に動く。
飛び抜いた右の拳は先程から倒してきた『コイツら』に向けたものより遥かに早くそして重い。
そんなものを刃のように振るったはずーーすでに疑問が駆け抜け始める。
今アタシが目にしているのはいとも簡単に止められていたこの拳の姿だった。
「ダメ、っすよ。姉さん」
言葉と同時に疑問はそれ以上生まれなかった。
「シュリア・・・」
納得だ、と認め拳を収める。それは確かにコイツなら納得だ。そしてコイツに会いたいがためにやっていたのだから。
「うちの店に殴り込み、ってわけでもなさそうっすね」
シュリアがアタシに向けているもの、それは安心しての笑みなのか。
そもそもこの連中相手に『自分達人間』が脅威をふるえるのだろうか、それすら疑問に思う。
「あ〜・・・4人。少しばかりこいつらに言うの遅かったっすね」
確認するように地面に横たわっている人数を見渡す。
確かにアタシが片づけたのは4人。いや、片付けたと言う表現とは少しばかり違う。
考えていた通りの結果。
コイツにたどり着くまでに必ず現れる障害、むしろここは都合が良かった。
店員であるコイツらを倒してしまえば必ずシュリアが出て来る。
多少強引ではあるがシンプルでいて一番最善な方法ではないだろうかとアタシはいいわけをするように自分に訴えかける。
実際、『これ』は良くない。いくらアタシだろうとちょっとはいいわけも考えたくなる・・・が場合が場合だ。
「何か俺に話でも?でなきゃこんな事はいくら姉さんでもしないはずっスよね」
話がある、そう告げようとした矢先、シュリアはニヤニヤとしながら答えた。
「コワい顔・・・そんなの姉さんには似合わないっスよ。それにほら、今はあなた有名人なんだ、無理はいけないっスよねぇ?」
まさにそれはコイツの口から出て来るとは思わないぐらい正の論だった。
確かに・・・アタシの復帰戦が近付いてる今、これ以上の問題は起こすわけにはいかないだろう。そしてそれはコイツらも一緒だ。ホストクラブのド真ん前、ホストと復帰戦を控えた女格闘家のもめ事、記事としてはそれだけでさぞ楽しいものだろう。
「今うちは営業前なんすよ、だから・・・え〜と、なんだ。姉さんに言うのはなんか緊張するな。とりあえず入ります?」
そんな緊張という単語とは無関係なほどシュリアの声は・・・言うなれば間が抜けている。
人差し指で『sTiーll』と掲げられた看板を差しニヤニヤと微笑んでるあたりがまさにそれだ。
しかしそれはこの体に走る寒気に似た『本能』が吹き飛ばしてしまう。
――肉が軋む音
みしり、みしりとアタシにしか聞こえないだろうその音はおそらく、アタシだけに向けられている。
だが端から見れば何も変わらない。
そのシュリアの笑みに満ちた表情も
夜の風の寒さも
このネオンの奥に潜む果てしない闇も
全てはアタシに向けられているものなのだと、アタシの『本能』が告げていた。
今、そう理解する。
店の開店までもう時間が無いのだろうか店員が緊急態勢を取り激しく動いている。
当たり前の事だろう、欠員が出れば店側はそれをカバーするために必死になるものだ。ましてや今回は4人・・・決して楽ではないとアタシにでも分かるような事だ。
そんな中で異質を放つのがアタシらだった。
店を作った『社長』自らが手招きし『店長』であるシュリア及びアタシを店の奥側、いわゆるVIP席へと案内する。これが異質でなくてなんであると言うのだろうか、思うままに接客され思う。
「シャンパン」
席に着くやいなやシュリアが言ったのはそれだった。
キツい睨みつけるような表情に自然とアタシはなる。
それはそうだ・・・今回こうして話をしにきたというのにホストクラブそのままの仕事をしようとしているとしている、睨みたくなるのは道理だ。
「やだなぁ、ただのシャンパンっすよ!何も入れて・・・ってそうだ。姉さんは強い酒の方が好きでしたよねっ!?そりゃあ俺のうっかりっすね。ヒャ――」
瞬間・・・すぅ、と風がその身にまるで刃を帯びたようにシュリアの鼻頭を通り過ぎる。
それは見る者全てを硬直させるような剛にして一瞬で切り裂くかまいたちのような拳だった。
それを具現化する答えが数秒の後現れる。
シュリアから見て右、その壁際からガラスが割れるような音が静かに聞こえた。
場に申し合わせたホスト達はそれより数秒かかってからその変化にようやく気づき視線を音のした方へ一斉に向ける。
まるで手品師がする魔法のような手品に釘付けになるように――
よく見ると音がした位置にはあのグラスが置かれたままだった。
ただ不自然なのは、そのグラスの胴に位置する部分だけがぽっかりと削がれている。そして遅れてようやく中に入っている酒と言う液体が勢いをつけてこぼれだしたのだ。
まさにそれは見る者を魅了する手品に他ならないものに見えた。
「どうだっていいんだよ、そんなのはよ」
誰もが息を呑む――その者以外は。
「そんなのは・・・か」
シュリアの、その意外にアッサリとした返事に一瞬拍子抜けするように力が抜けた。
そう、一瞬だけでも思ってしまった自分に後悔する――
その先、その数瞬何が起こったのか分からなかった。
アタシの意識下がゆっくりとスローの中、いや意識は正常である。
そんな中『それ』は襲いかかる。
『それ』にとってはアタシらは所詮くだらないものでしかないのだろう。
地を這う餌を当然に食らいつくす猛禽のように・・・それは一片の感情を見せぬままに獲物の全てを引き裂いてしまうだろう。
まさにアタシは餌だ――そう気付くのが酷く遅すぎただけなのだ。
「ねぇ、姉さん」
首筋に這っているその牙が語りだしているような生々しい言葉だった。
少しでも動いたものであれば命は無いだろう、体を動かせないのはそのせいだと今一番自分が理解している。
「そんなの、はないでしょうや・・・こっちのもんはアンタに酷くやられちまってる。今更そんなの扱いってのは・・・どういった趣向なんすかね」
確かに――違う。
普段この身で体感してるシュリア、そのチャラチャラとした姿、言動、全てを持ってしてもこのアタシに叶う筈は皆無も無い。
しかし、どうだ。
今身に降りかかる現状。
例え指の一本でも動かした瞬間、アタシの体は四方に引き裂かれ――蹂躙され全てを奪われる、そうなる事が『解って』しまう程に神経が張り詰めてしまっている。
アタシは、山本 幸はここに痛感する
だけど――もう引き下がれない。引き下がれたらどれほど楽な事なのかはよく分かっている。
だけど――
「どうして」
永遠とも思える間が空く。
「これ以上・・・どうして雅人を傷付けるんだ、お前は」
それは言葉としても今日ここに来る事になったキッカケ、本来伝えたかった意味としてもうやむやな表現だった。
自分でも何を言っているのか分からないのだ、何一つとして伝わる筈もない・・・
「そうか・・・聞きたかった事ってのはこれの事スね。道理でなかなか聞けなかったわけだ」
それは――予想もしていない答えだった。
「俊慈の事、っすね」
ふぅ、と息を零した後シュリアは自分の後にあるソファーにもたれ掛かる。
こうして拘束状態から解放されたのだが今となってはその自由を感じるような場合ではない。
「お前・・・!?」
落ち着いて、とシュリアが放つその一言がアタシを制止させる。
よほど慌てる様子に見えたのか、だがシュリアの掛けた一言は思いの外アタシを落ち着かせた。
「姉さんの言いたい事は俺にはよく分かりますよ。勝手っすけど俺なりに調べさせて貰いました」
調べる――何を
そうだ、きっとあれしかない
怖い――怖い話だ
「兄貴の過去、聞いた奴らみんなが言ってる・・・いわゆる『あの日』に起こった出来事が」
「言うな」
――拒絶する
「それ以上、何も言わないでくれ」
シュリアはそれ以上の事は確かに言わなかった。
決して普段からは連想される事の無い、まるで子犬のように震えるアタシの姿を見て・・・
彼も理解したのだろう――心境を受け取ってか、また気遣いか、シュリアは何も言わずずっと低い所にある天をただ眺める。
ずっと――ずっと
「ねぇ、姉さん」
ただその一言を呟く。
「なんつうか・・・すんません。俺なんも分かってないし、みんなの中で何が起こったかも知らない。そんなんで説教まがいな事なんて・・・とんだお笑い者だ」
自らを笑い、まるでピエロのように言っている。
「だけど」
それでも――力強く
「だけどさ・・・俺は知ってますよ」
シュリアの顔にいつも通りの笑みが戻る。
「兄貴は強いって――どんな事があったって、どんな化けもんが来たって余裕で勝っちまうんだって」
全てを言い終える前に少し恥ずかしいのか苦笑して顔を下げる。
きっと・・・きっと彼にとっては精一杯の思いを詰めた言葉だったのだろう。
「俺は、そう信じてますから」
あぁ――
そうか
「・・・バーカ。んな事ぐらい姉のアタシだって分かってんだよ」
バカはアタシだ
アイツには・・・こんなにも信じて、支えて待ってくれる奴がいる。
今更アタシは何を恐れる。この世界で――誰がアイツを否定するんだ。
そんな馬鹿げた事によりによって・・・はは、コイツからようやく気付かされた。
「・・・シュリア」
「はい!」
即座に反応する。当然営業用に作られたような完璧な笑顔でその場に華が彩ったようだ。
普段ならこういうのはムカつくところだが・・・今は不思議とムカつかない。
それも目の前のコイツのせいだ!
それが少しだけ・・・ムッとくる。
「・・・ドンペリ・ゴールドだ。ありったけ持ってきやがれ!!」
「・・・はい!」
夜は更けていく。
今夜だけは――優しい風が吹いていた。
そんな気がする――
ドンドン、と激しく何かを叩きつける音がした。
最初は雷でもアパートの前に落ちたのかと思った・・・その音によって凍える体を布団から叩き起こされた。
「・・・んだよ、コラァッッ!!」
当然イライラして立ち上がると真っ先に音のした方向、すなわち玄関のドアに勢いよく蹴りを入れる。
しかし寝ぼけていたのか蹴り込んだ自分がその勢いによって布団の位置まで飛ばされていく。勢いは止まらずそのまま
転がり雷の音どころではない轟音をあげて床に叩きつけられた。
それこそ近所的に迷惑な話だが・・・時計を見た時、深夜2時とかだったりするから寝ぼけててもまぁしょうがないかと思ったりもする・・・所詮言い訳なのだが。
「だ〜れ〜だ〜。この純粋無垢な高校生の大事な睡眠時間を奪おうとしてるチャレンジャーは・・・」
さっきのダメージなど気にしないまま半ば寝言のように罵声をあげながら俺は千鳥足で冬の寒風吹き荒れる(誰とは言わないがムチャクチャな横暴をする暗黒大魔神がポッカリ開けた穴が原因)玄関に向かいなんとか歩を進める。
そしてガッチリとドアノブを握り締め・・・一気に引き抜こうとする。
「よ〜しと・・・偉大なるマウンテン井之鬼さんに敬礼を込めて・・・」
なんだか無駄に力が沸いてきた・・・そうだ一気に力を込めてこのドアを引けばいい!
「1!2!3!・・・あ?・・・ンダアアァオァァ!!?」
目の前に濁流として流れ込んできたのは紛れも無く・・・奴だ。
「ぐ・・・ぐるしいんだよ、てめぇ!あれ?」
どうみても・・・これは姉貴だ。
ただ違うのは、なんというか・・・
「お〜い」
凄い・・・酔っぱらっているようだ。
それは信じがたいような光景なのだ。
姉貴の酔っぱらっている姿を見たのは弟の俺でさえ初めてだった気がする。
何せ普段から酔っ払ったように狂乱して日本刀をブンブンと振り回しているのだからさながらその光景は
『殿が御乱心じゃー!』
ってな感じだった。
だからこんな定番なお土産を持って帰ってくる金曜日の疲れたお父さんスタイルな姉貴を見るのは初めてなのだ。
しかーし!問題はそこじゃねぇ!
この野郎・・・アタシに任せろ的な発言で頼りがいあるお姉様をアピールしときながらこの愚行・・・許すまじ!
「まさ〜と〜」
「酒くさぁっ!?お前っ・・・どんだけ飲んでんだコラッ!?」
返事が帰ってこない。まるで役にたたねぇ姉貴だ。
こんな鬼のような奴・・・このままここに放置してしまえば楽なのだがそれではこの寒空だ、凍えて下手をすれば凍死してしまう。まさか姉貴に関してはそんな事は決して有り得ないんだが・・・一応慈悲の心をかけてやろう。
とりあえずここまでグデグデになっている姉貴を運ぶのは正直疲れる、いや下手に運ぼうとでもすれば体が戦闘反応を起こして肘でも飛んでくる可能性すら考えられるのだからそんなのは御免だ。
よし、ここに布団でも敷いてやろう!
それが最善の策で間違い無い事は俺の中の本能がそう告げていたのだ。
実際部屋の中も玄関もたいして気温の差は感じられない。というか部屋すら穴だらけなのだからどっちにしても大差は無いはずだ。
ならここまでしてあげる弟に感謝ぐらいしてほしいものだが・・・寝ている相手に言っても仕方がない。
「よっ・・・とぉ?」
いざ布団を押し入れから持ち上げようとした時、その声は聞こえた。
「ねぇ雅人〜」
・・・・
誰だ!これはッ!?
絶対に姉貴なんかでは無い・・・こんな口調や声色なんか聞いた事が無いぞ!
しかし他には誰もいない・・・誰もいないのだッ!
「・・・え〜と、はい?」
「アタシね〜もう駄目かも知れないよほんとさぁ・・・」
重傷である
今ここにいるのは誰だ。
そう自分に聞いてみるが一向に答えは出てこないっす!
「ほんとにさぁ・・・情けないお姉ちゃんなんさ。ほんっと雅人にも迷惑かけてるしもうどうなっちゃってるんだか・・・」
十分に分かってるじゃないか。これを期に少しずつでいいから人間洗浄してくれ
とは絶対言えない。
にしてもらしくない。俺としてはこのままでいてほしい気もするがなんとなく・・・そうもいかない気がする。
「っと、何があったんだよ。姉貴らしくもねぇ」
ドンと姉貴のそばに座る。
「・・・怒られちゃった。シュリアにさぁ〜」
―――
「なんで雅人を信じてやれないんだって・・・あんなにも強いのに、誰もかなわない強い奴なのに、そんな雅人をどうして信じてあげられないんだって・・・」
初めてだ――姉貴がこんなにも
「ほんっとバカなお姉ちゃんだよ」
――悲しそうに見えるのは
「それに山本家の穀潰しだ、やれ生きる借金精製機だ暴力的最終殺戮兵器だってさぁ〜」
「そ・・・そんなに言われたのかよ」
あのシュリアから絶対に出る事の無い単語の流れに俺は思わず苦笑してしまった。
それを見て・・・伏せていた姉貴もつられて笑った。
二人で――しばらく笑った。
疲れたのか姉貴は少し落ち着き安らかな顔に戻った。
俺も少し安心した。
「なぁ・・・」
姉貴は返事を返さなかった。
疲れたのか・・・それとも耳を貸そうとしたのか言葉を発する事はない。
「なんつうかさ・・・」
ほんとなんていうかこういう事を喋るのはかなり恥ずかしい。
「一応大切な姉貴なんだからさ・・・心配かけさせたくないし家族として大事にしてるつもりだからさ・・・」
静かな、静かな真夜中に告げる
「俺は大丈夫・・・辛い事あったって何があったって頑張って乗り越えていくからさ」
「・・・ねぇ、雅人」
「は、はいッ!!」
ちゃんとしっかり聞いていたようです。
恥ずかしすぎて冷や汗と涙が溢れて止まらないよこんにゃろー・・・
「こんな姉だけど・・・これからもよろしくお願いね」
それは姉貴、いや姉から初めて聞いた素直な気持ちだった。
「あぁ、こんな事改めて言うのも恥ずかしいけどよろしくな」
少し、嬉しかった。
こんな事が嬉しいと思ったのは初めてだった。
「さって・・・アタシも部屋に戻りますか。いつまでも年頃の弟の部屋に居ちゃいけないし」
「バーカ、何が年頃だよ、ははっ。つうかそんな足取りもフラフラで大丈夫なのかよ?」
何故かそこで姉貴は完全に停止した。止まっただけでは無く停止したのだ。
どうしたのか・・・よく見ると明らかに考えごとをしているような顔だ。そして微妙に顔色が悪くなっていく。
途端!向き合ってる玄関から180度回転して俺の方にドスドスと歩み寄ってきた。
「はいッ!これプレゼントッッ!!」
そう言って姉貴はまるでハリケーンのように埃を散らし玄関から一気に去っていった・・・そこら辺は凄い迷惑だ。
そして渡されたのは、折り畳まれた一枚の白い紙。
体験談から言ってこういうのはとても『良くない』
むしろ確実に最悪なケースであると言える。
更に言える事は怖いから後で布団を被ってガタガタいいながら見ようが今あっさりと見ようが結果は――全くと言っていいほど変わらない事なのだ。
「はぁ・・・」
悲しい事に俺はもうこの手の事に慣れてしまっていた。
そして選んだ選択肢は・・・今開く事だ。
領収書
山本 幸 様
金 686,500円
備考 飲食代として。
PS・兄貴こんばんわ〜☆え〜と今晩は兄貴のお姉様がお客様として来てくださいました!盛大に盛り上げたつもりではありますが・・・感想はどうぞご本人から!あとこちらの料金ですが・・・お姉様ということで5割引のサービスを致しました!あらなんて明朗会計☆嘘偽りありませんよ〜?あと最後になりましたが兄貴!本当に愛し都合により以下略
/Club 『sTiーll』/
絶対、許せねぇ・・・
今はドス黒い感情しか生まれません
え〜と…まずはあれですよね?
明けましておめでとうございます!
今年もよろしく…って言いますか覚えてる人ほとんどいないよっ(*´Д`)=з
覚えてくれてた方へ…どうもRev crazy dreamです。
初めましての方はどうぞよろしく。
…およそ5ヶ月ぶりの更新だぁw
何をしていた(汗
答え・色々大変だったんですよ…(゜д゜`)
とまぁこれからもこんな劇的な遅筆ですがよろしくお願いしますm(゜д゜)m
どうもRevでした
追記・1月6日一部修正しました