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君逝く朝に  作者: 杉山薫
プロローグ
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第六話

「そういや携帯買ったんだよ。連絡先入れておいてよ」


オレは貴子に携帯電話を渡す。


「なんだ。今どきスマホじゃないんだ。っと、電話とメールの連絡先入れておいたよ」


貴子はオレに携帯を返す。


なんだよ。

マイハニーって。

でも、変えたらキレるだろうし。


「そういや今夜は雪らしいよ」


貴子は窓に顔を近づけて外を確認する。貴子の吐く息が白くなっている。


「なんかパラついてるよ。今日は帰ったほうがいいよ。辰之助」


わざとそのまま居座って、泊まっちゃうっていうのもありだけど、オレはそのまま帰った。電車に乗っていると雪は次第に大粒になってきた。


 オレが家にたどり着いた時には時計の針は二十時を回っていた。家には今日は誰もいないらしい。オレはファーストキスの味をかみしめて眠りに落ちていった。


ファーストキスの味?

そんなのチョコ味に決まってんだろ!


 オレは日付が変わった一時すぎに目を覚ました。ふと、日記帳が光っていることに気づいた。オレは日記帳を開いて確認する。最後のページは今日、いや昨日の記述だ。


二月十四日 橋本辰之助と野村貴子はキスをした。


やっぱり、アイツ日記帳使ったんだな!


ん、二?


その次の行に二という数字が現れた。


えっ!


日記帳に新たに書かれた記述にオレは言葉を失った。


二月十五日 野村貴子は死亡した。


 オレは携帯電話を手に取り貴子に電話をする。時間なんて関係ない。緊急事態だ。


「お客様のお掛けになった⋯⋯」


おかしいだろ!

さっき本人が入れたんだぞ。

そうだ。

メール!


『至急電話がほしい』


よし、送信完了。

これで後は貴子からの電話がくるのを待てばいい。


十分経っても電話がこない。オレはメールの受信画面を確認する。


何、この英語の文章?


オレは家の電話に駆けていく。どうやら親は今日はいないらしい。貴子の家の電話に掛ける。


「お客様のお掛けになった⋯⋯」


ちょっと待って!

なんで?


じゃあ、タクシーで直接行って知らせよう。


オレは着替えて玄関を出た。外は一面の銀世界で雪がしんしんと降っていた。


これ、タクシー動いてるの?


オレはとりあえず駅前までダッシュした。駅前のタクシー乗り場にはこんな時間にもかかわらず長蛇の列ができていた。


これって始発で行くのとあまり変わらないんじゃ。

でも、何時に死ぬのかわからないんだから。

いや、やっぱり始発で行こう。


オレは家に引き返した。


 翌朝、いや正確にいうと帰宅した三時間後、オレは駅で始発電車を待っていた。始発電車はなんとか動いていた。ちなみに朝出る時に携帯、家電、メールに連絡したが全部同じ結果に終わった。オレは始発電車に乗り春日部駅まで移動する。


すっかり忘れてた。

ここからうちの高校への電車は北に向かって移動するんだよ!


目的の電車は大幅に遅れていた。ようやく到着して発車したが、停まる駅、停まる駅で時間調整になり目的地に到着したのは八時前。オレはダッシュして。雪ですっ転んで、ダッシュして雪ですっ転んでを繰り返し貴子の家と道路を挟んだ歩道にたどり着いたのは八時半ごろ。


確かこのくらいの時間に貴子は⋯⋯。


店先で雪かきをしている貴子を発見した。


間に合ったと思ったオレの左目の端でスリップして蛇行しかけているトラックが見え、オレは一心不乱に駆け出していた。


気が付くとオレは貴子を力の限り思いっ切り突き飛ばしていた。

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