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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。

年賀状

作者: ひやしんす
掲載日:2025/12/13


「あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。」


たった二行、そう書かれた年賀状が案外嬉しかったりするものだ。

職場の同期や良くしてくれる上司、何かと慕われている後輩から届く年賀状が、俺の1年のはじまりの合図だった。

それだけじゃない。

時に大学や高校の友達から久々な便りが届くこともあり、毎年密かに楽しみにしている。

いつの間にかしれっと変わっていた宛名に驚いたり、見覚えのある字に泣かされたり。一通一通じっくり見て引き出しにしまっていく。写真の中の友人の隣に、見慣れぬ女性や元気な子供がいて、家族が増えたことを知る。


もう、俺もそんな歳か。友人がどんどん結婚していく。一緒にやんちゃしていた奴も、気づけば優しそうな顔でこちらに微笑んでいる。そういえば、結婚式に呼ばれることも増えた。

それでも自分は未だ独り身でいる。結婚願望はないわけじゃない。ただ、それが出来ないだけ。


俺が好きなのは、同性だった。


高校で同じクラスだった人。告白は、してない。ただ毎年律儀に年賀状が送られてくる。その度に忘れることが出来ず、彼から来た年賀状をじっと読んでしまう。

あまり字の綺麗な奴じゃなかった。それでも一生懸命書いたのであろう宛名と、空白にのびのびと書かれた彼らしいメッセージを見るのが好きだ。今年はこう書いてあった。


「新年も幸せいっぱいで過ごせよ!」


俺じゃなくてお前にかける言葉だよ、それは。

この間、彼にも好きな人が出来たらしい。サッカーに一途で恋愛なんか興味も無かったくせに、遅めの春が訪れていたようだ。意気揚々と興奮した彼に見せられた写真には、穏やかで、大人しそうな感じの人が映っていた。お似合いだと思い素直にそう告げたあの時の、あいつの笑顔は今までで1番輝いていた。

俺には、作れなかったものだ。


この人にも年賀状を書いたのだろうか。自分宛に来たものよりもっと時間をかけて、きっちり宛名を書いたのだろうか。写真と写真の間の空欄が埋まるほど、真剣にメッセージを書いたのだろうか。おめでたい新年に似つかわしくないことを考えてしまう。気づけば年賀状が、一点だけ滲んでいた。


じきに三十二になる。以前よりずっと、涙脆くなった。それと同時に、人の幸せを祝えるようになった。



好きな人に、幸せになって欲しい、と。


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