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たからもの

作者: 辰ノ子ずみ
掲載日:2025/12/11

 小さな島の森の奥、うさぎ達が暮らす町がありました。

 そこで暮らす白黒模様のぶちうさぎさんは、運動はちょっぴり苦手だけど、外で遊ぶことが大好きなうさぎでした。


 ぶちうさぎさんは森の中にある、お気に入りの小高い丘の上でお昼寝をしていました。

 白詰草のじゅうたんに寝転ぶと、背中はふかふかのベッドの様で、耳の先には柔らかい草が当たって、くすぐったい。


 どこまでも広がる空には、ぷかぷか浮かぶ白い雲がゆっくりと流れていきます。

 ぶちうさぎさんはいつの間にか眠ってしまいました。



「はっ!寝ちゃった!」


 辺りはすっかり日が暮れて、空には三日月が浮かんでいます。


「急いで帰らなきゃ。」


 小高い丘を降りようとした時、ぶちうさぎさんの足元に、ぼんやりと光るものがありました。

 そっと手を伸ばし拾い上げると、それは小さな石でした。


「きれい。」


 手のひらに収まる小さな石は、月明かりを通して銀色に光っていました。

 ぶちうさぎさんは、小さく光るその石がとても気に入りました。


 ぶちうさぎさんは、その石と一緒にお昼を食べたり、空を眺める時も、川で遊ぶ時も、寝る時もいつもそばに置いていました。


 そこに、たれ耳うさぎさんがやって来ました。


「何持ってるんだ?」


 たれ耳うさぎさんは、ひそかに、ぶちうさぎさんが持っている、石のことが気になっていました。


「少しだけどね、銀色に光るんだよ。」


 ぶちうさぎさんは、あの日見た月明かりに光る様子を教えました。

 しかし、どこからどう見ても石ころにしか見えず、光ると言われても信じられなかったたれ耳うさぎさんは、友達の黒うさぎさんと、茶うさぎさんを誘ってその丘へと行きました。



 3匹が丘に着いた頃には、夕陽で空はオレンジ色に染まっていました。


「何も光ってないじゃないか!」

「何処にあるんだろう?」

「草だらけで見えないのかも。」


 同じ石を見つけるために、白詰草のじゅうたんをワシワシとむしった3匹でしたが、光る石を見つけることはできませんでした。



「探したけど、無かったよ!」

「本当はただの石なんだろう!」

「嘘つくな!」


 3匹に責め立てられたぶちうさぎさんは、再びあの丘へと行きました。

 そこには、一面に咲いていた白詰草があちこちはげて、石を掘った穴だらけの荒れた丘になっていました。


「ごめんね。今、直してあげるから。」


 掘られた穴を埋め、むしられた花達は花冠にして近くの木に引っ掛けてあげました。

 ぶちうさぎさんは、たれ耳うさぎさんに自分の石をあげることにしました。


「これをあげるよ。」

「いいの?ありがとう!」

「どういたしまして。」


 たれ耳うさぎさんは、貰った石を月に照らして見ると、ほんのりと月明かりが透けて、光っていました。

 ぶちうさぎさんは、嘘をついていなかったと分かりましたが、思っていたよりも光らず、がっかりしてしまいました。



 セミの声があちこちから聞こえる夏がやって来ました。照りつける太陽に、うさぎ達は川の水浴び場で遊んでいます。

 ひとりで、川の下流にやって来たぶちうさぎさんは、ひとつの果実を見つけました。

 それは見上げるほど背の高い木に実っています。ぶちうさぎさんは、一生懸命手を伸ばしましたが到底届きません。


 ツヤツヤで大きく、まるでお月様のような黄色い果実は、見れば見るほど素敵に見えました。


 でも、

「あの実がもっと大きくなったらどうなるんだろう?」

 そう考えたぶちうさぎさんは、その実をもぎ取ることをやめました。


 それからというもの、ぶちうさぎさんは大きな木の下から果実を見上げ、青空に浮かぶ大きな満月のように楽しんでいました。

 この木陰には、夏の暑さの中でも涼しい風が吹いて、ぶちうさぎさんは、とても心地よかったのです。


 ある時、黒うさぎさん、たれ耳うさぎさん、茶うさぎさんが遊んでいると、大きな木の下で空を見上げる、ぶちうさぎさんの姿を見つけました。


「いつもひとりぼっちで何してるんだろう?」

「いつも何考えているか分からないよね。」

「あとで見に行ってみよう。」


 ぶちうさぎさんが居なくなった後、同じ木の下から見上げると、そこには大きく輝く果実が実っていました。


 ゴクリと唾を飲み込んだ3匹。これ程までに大きな果実を見たことがありませんでした。


「もぎ取ってみよう。」


 黒うさぎさんと、たれ耳うさぎさんと、茶うさぎさんは、力を合わせ果実をもぎ取りました。


 3匹は地面に置いた大きな果実を囲み眺めました。


「採れたね。」

「大きいね。」

「どうしようか?」


 木の上で輝いて見えた、抱えられないほどの大きな果実を手に入れたのに、どうも嬉しくない3匹。


 考えた3匹は、その実を川へと捨ててしまいました。



「無い!」

 次の日、ぶちうさぎさんが木の下へ行くと、昨日まで大きく実っていた果実は、ありませんでした。


「もしかしたら、見ないうちに完熟して落ちたのかも。」


 ぶちうさぎさんは辺りを探しました。

 茂った草の中も、大きな木のうろも、誰かが掘ったトンネルも。

 しかし、どこを探しても見つかりませんでした。


「疲れた。」


 ぶちうさぎさんは、大きな木の下で少し休むことにしました。

 ふと見上げると、木の葉の隙間から真っ直ぐに降り注ぐ夕陽が、まるで星のように輝いていたのでした。


「満月の実で見えてなかったんだ。」


 ぶちうさぎさんは美しい木漏れ日に、うっとりしました。



 いつものように、森を散歩するぶちうさぎさんは、地面いっぱいの色とりどりの木の葉を拾ったり、小さなきのこを探したりしていました。

 みんなが遊んでいる広場に着くと、少し離れて、ぽつんと遊ぶグレーうさぎさんを見つけました。


「何してるの?」

「これを集めてた。」


 グレーうさぎさんは、濃い赤色の硬く甘い香りがする実を、両手いっぱいに抱えていました。


「手伝おうか?」

「大丈夫。」


 グレーうさぎさんは、ひとりで集めることが好きなようでした。

 考えたぶちうさぎさんは、細く長い葉っぱを集めてかごを編みました。


「よかったら使って?」


 グレーうさぎさんに渡すと、驚いたようでした。


「ありがとう。すごいね!かご、編めるんだ!」

「うん!」


 その日からグレーうさぎさんと、ぶちうさぎさんは一緒に遊ぶようになりました。

 たくさんの木の実を集めたり、小さな秘密基地を作ったり、ふたりでやることは、何でも楽しかったのです。

 そんな様子を見ていた、黒うさぎさんと茶うさぎさんが近付いてきました。


「グレーうさぎさん、一緒に遊ばない?」


 誘われたグレーうさぎさんは、

「ぶちうさぎさんも一緒に遊ぼう。」

 と誘ってくれました。


 グレーうさぎさんはとても人気者でした。

 高く跳べるし、足も速いし、穴掘りも得意でした。


 みんなで遊ぶのはとても楽しかったけど、帰り道はなんだか、モヤモヤした気持ちでした。


 次の日も、グレーうさぎさんは遊びに誘われていました。

 その次の日も、そのまた次の日もグレーうさぎさんは、みんなと一緒に遊んでいました。


 いつの間にか、ぶちうさぎさんはひとりぼっちでした。



 だんだんと夜が長くなってきた頃、大きな果実を見つけた木の下で、ぶちうさぎさんは空を眺めていました。

 風がぴゅーっと吹くと、耳の先がじんじんしました。


 すると、白うさぎさんが話しかけてきました。


「ぶちうさぎさん、隣に座ってもいい?」


 真っ白できれいな白うさぎさんは、ひとりのようでした。


「みんなと遊ばないの?」

「空を見るのもいいなと思って。」


 嬉しくなったぶちうさぎさんは、白うさぎさんを連れて、お気に入りの小高い丘へと行きました。


「前にここで、ちょっぴり光る石を見つけたんだけど、もう無いかな?」


 あの日見つけた、月明かりに光る石を探してみましたが、丘の上は雪に埋もれていて、見つけられません。

 ぶちうさぎさんは、どうしても白うさぎさんに石を見せてあげたくて、雪を掘ろうとしました。


「ちょっと待ってて。今見つけるから!」


 すると、白うさぎさんはカラカラに乾いた花冠を被って言いました。


「見て!素敵な王冠!」


 それは、ぶちうさぎさんが前に作って木に引っ掛けたものでした。

 もう随分と枯れてしまって、花も葉っぱもついていないのに、白うさぎさんは嬉しそうです。


 ぶちうさぎさんは、お気に入りの丘を掘るのをやめました。


「ごめん。見つけられないや。」

「大丈夫!ここは静かでいい所だね。」


 ふたりは真っ白な雪の上で、小さなかまくらを作りました。

 ぶちうさぎさんは、光る石がどんなだったのか、大きな果実を見たこと。白うさぎさんとたくさんお話しをしました。


 ぶちうさぎさんは、ふと、白うさぎさんは自分と一緒にいて楽しいのか気になりました。


「白うさぎさん、楽しい?」

「楽しいよ。ぶちうさぎさんは、綺麗なものをたくさん知っているから。見たことないものとか、知らない世界を教えてもらえるみたいで、ワクワクする。」


 ぶちうさぎさんは、白うさぎさんの言葉がとっても嬉しくて、耳がむずむずしました。


「そろそろ帰ろうか?」

「そうだね。また明日!」


 ぶちうさぎさんは、初めて遊ぶ約束をしたのでした。


 かまくらの外は、いつの間にか日が暮れて、空には大きな満月が浮かんでいます。


「うわぁ〜!!落ちてきそうなくらい大きなお月様だね。」

「手を伸ばしたら届いちゃいそう!」


 ぶちうさぎさんは、雪の冷たさを忘れるくらい、心が温かくなりました。



 ぶちうさぎさんは、一番の宝物を見つけたのでした。

 そして、ずっとずっと、大切にしました。

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― 新着の感想 ―
とても素敵なお話でした☆.。.:*・゜ きらきらが気になる、たれ耳うさぎさん達の気持ちもわかるけど、ぶちうさぎさん。・゜・(ノД`)・゜・。 途中切なく泣きそうな気持ちになりました。 ぶちうさぎさんの…
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