No. 1
ゲームのルール
①死神は半年以内に死ぬ人間の魂を天使から守らなければならない。
②天使は死神から半年以内に死ぬ人間の魂を奪わなければならない。
③死神が半年以内に死ぬ人間の魂を、天使から守れたら、魂は地獄へ逝く。
④天使が半年以内に死ぬ人間の魂を、死神から奪えたら、魂は天国に逝く。
⑤死神も天使も、自身の手で、人間の魂を壊してわならない。
⑥死神は天使を殺してはならない。
⑦天使は死神を殺してはならない。
⑧このルールを破ってしまった場合、創造主からペナルティが与えられる。
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「白石かほ、性別女性。体が弱く、喘息持ち。年齢は24歳。好きな物はオムライス」
薄暗い地下のトンネルを歩く。周りはシンと静まり返り、僕の足音だけが響き渡る。
自分の手に持つ資料に書かれた、情報を口に出して読む。今回も同じような条件だ。なんてことない。
「お、昨日回収したばかりなのに、もう新しい奴?」
そう言った陽気な青年は、僕の持つ資料を、上からヒョイッと取り上げる。
彼の声の大きな声は、トンネル内に大きく響く。
「へえ、結構美人じゃん」
陽気な青年は、僕から奪った資料に目を通す。
顔は70点だとか、スタイルは85点だとか、勝手に点数を付けている。
そんな彼を見上げ思ったことが一つある。
制服がダサい。
老師からスーツを支給されて入るはずなのに、青年は人間の学生が着るブレザーを着崩して着ていた。
髪だって金髪に染めているし、ピアスもバチバチに空けているし、なんというか清潔感がない。
表現は自由だと思っているが、どうも仕事をする格好じゃないため、どうしても軽蔑の目を向けてしまう。
「そんな顔するなって、ほら、返してやるよ」
陽気な少年は、僕から奪った資料を差し出す。上から目線が妙にイラつく。謝罪の一言くらいないのだろうか?
「そんな顔なら、俺の名前も知らないみたいだな」
教えられたとしても、こんな奴覚えない。友達なんていらない、付き合いが面倒になるだけだ。
「俺の名前は村瀬陸。魂の回収した数は300人だ!どうだすごいだろう?」
誇らしそうに、自分の功績を語る村瀬陸。いや、知らんがな。僕はまだ新人なんだからな。
「___それはさぞ凄いんでしょうね。天使どもが弱かったのでしょうか?」
「___っ!このクソガキ!可愛くねー」
「ガキじゃないです」
こういうバカは、自分の功績をバカにされるとすぐキレる。笑ってしまうほどに扱い易い。
「いっつもボッチだから声かけてやったのに、礼儀がなってねーぞ!クソガキ!」
顔を怒りの表情に歪め、怒りを現にする村瀬陸。なんともまあ、滑稽な姿だった。
「頼んでないので、それじゃあ、僕は老師の元に行って来ます」
僕は、老師という人物の元に行く為、村瀬陸とは逆の方向に体を向ける。
後ろで耳障りの悪い声が聞こえたが、気にせず、僕は長い廊下を歩く。
「おい、待てよ」
「…」
不思議なことに、村瀬陸は僕に付いてきた。さっき、僕に侮辱されたことに、よほど腹を立てたのだろうか?困ったものだ、これから老師に会いに行くというのに…
「…ショタコンなんですね、可哀想に」
ため息を吐きながらも、僕は心からの言葉を口にする。別に僕はショタじゃない、決してそうは思っていない。ただただ村瀬陸の性癖を哀れんだだけだ。
「は?ショタコン?なんだそりゃ」
「…なるはど」
驚いた。村瀬陸は、僕の言葉が理解できないみたいだ。可哀想に、それほどまでバカだったとは。僕はもう一度、村瀬陸を心から哀れんだ。そして願った、
(この人が、自分が馬鹿なことに気づきますように)
「それでは、老師を待たせているので___僕はこれで」
「あ、そうだったのか、引き留めて悪かったな」
村瀬陸は“老師“という言葉を聞いて、驚いた顔をした。右手を頭の後ろに持っていき、謝ってきた。この馬鹿男にも、謝ることはできるみたいだ。
僕が勝手に感心していると、村瀬陸はまた口を開いた。
「ほら、早く行けよ。老師様待たせちゃ悪いだろ」
「そうですね、心配してくださりありがとうございます」
いいよと言いながら、村瀬陸はその場を後にした。しばらくして、暗いトンネルの中、彼の姿は闇へと消えていった。
「…」
僕はまた、暗いトンネルを歩き出した。
この世界には、死神と天使が存在する。
死神と天使は長きにわたる争いを続けていたが、一向に勝敗は決まらなかった。
痺れを切らした創造主は、天使と悪魔の争いを終わらせるため、勝敗を決めるためのゲーム提案をした。
ゲームのルール
①死神は半年以内に死ぬ人間の魂を天使から守らなければならない。
②天使は死神から半年以内に死ぬ人間の魂を奪わなければならない。
③死神が半年以内に死ぬ人間の魂を、天使から守れたら、魂は地獄へ逝く。
④天使が半年以内に死ぬ人間の魂を、死神から奪えたら、魂は天国に逝く。
⑤死神も天使も、自身の手で、人間の魂を壊してわならない。
⑥死神は天使を殺してはならない。
⑦天使は死神を殺してはならない。
⑧このルールを破ってしまった場合、創造主からペナルティが与えられる。
これがゲームのルールだ。
死神と天使の勝敗はまだ決まっていない。
これはゲームじゃない、戦いだ。
死神と天使、勝敗が決まるまで、魂の取り合いは終わらないのだ。
こんにちは、石井舞香です。この小説は趣味程度でやっています。ペースもゆっくりとしているので、気長に待っててくれると幸いです。