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桜並木の道筋で

作者: 甘木 

このお話しは、明日から連載予定の作品の第1話のプロローグ的な作品となっています

よろしければ本編もお付き合いお願いします

 高校生活も2年目、聞いた話ではすでに進学の為の勉強を始めている子もいるらしい。

 

 私はまだ少しも実感が湧かないけれど。


「今日の事忘れてないよね?」


「大丈夫、5時に集合でしょ」


結星(ゆら)って時々信用ならないし」


 同じ部活の親友からそんな連絡が来ていた。


 時々天然とか、やり過ぎとか言われる事はあるけれど、好きな事は忘れたりしない。⋯⋯多分。


 今日は夕方から宵の明星と火星の観測会が家から近い川原で開催される。


 結星と書いてゆら、星が好きなパパが名付けてくれたらしい。少し変わった読み方だけど、その影響なのか、星空や星座が好きになり、高校でも天文部に入って、部活動や近くの有志の観測会に参加したりもする。 


「キューン」


 少し甲高い甘えるような声。


 この子はパピヨンのオリー。5年前に我が家にやって来た。


「オリオン座って昇ってくる時の形、この子のお耳と同じ、蝶々みたいだよね。だからオリーにする」


 それを聞いた両親は苦笑いしていたような気もするけれど、なんとなく閃いたからいいじゃない。


 ファーストインプレッションって大事よね。


 人でいうとアラフォーみたいな感じらしい。ママより少し年下くらいかな。


 まだまだ元気だけど、時々遊び疲れて充電切れみたいになる事もある。


 今日は朝からママと一緒にこの子をカットに連れて行ってあげてランチ、ひと休みしたら夕方から天体観測。予定確認オーケー。


 


「いけない」


 朝の用事を済ませて帰ってきたら、つい春の陽気に誘われて⋯⋯ 気づけば時刻は16時を半分ほど周っていた。


 軽く身だしなみを整えて、ハネた髪はハットで誤魔化す。


 外出の準備をしていると、その気配を感じたのかオリーも甘え声を出す。


 どうやら散歩の支度だと勘違いしているようだ。


「どうしよう⋯⋯」


 こちらを期待するように見つめるその瞳に耐えきれず、私はオリーにハーネスを付け、一緒に連れて行く事にした。


「少し遅れるかも」


 それだけメッセージを送り、外へ出る。


 自転車なら10分くらいだけど、オリーと一緒ならもう少しかかりそう。


 普段の散歩コースとは違う事を感じたのか、少し戸惑うオリーと一緒に道を急いだ。


 「キューン」


 いつもはオリーのペースで散歩させているのに今日は急いだせいか、川原までもう少しの所でバテてしまったみたい。


「もう少しだから頑張って」


 そんな事を言ってみても通じる訳も無く、私は仕方なく、オリーを抱え上げて先を急ぐ事にした。


 少し重いけれど、星空を見る為には、時には空気の澄んだ場所へ行く必要があり、軽く山登りみたいな事をする時もある。


 だから体力は割とある方だと思う。




 川沿いの遊歩道に出ると、夕方の涼しい風がつぼみの膨らみかけた桜並木を揺らしていた。


 思い思いに散策している人の間をすり抜けるようにして先を急ぐ。

 

 「「あっ」」


 前方に見えてきた観測会場に気を取られたのか、私は自転車を押しながら歩いてきた男の子に少しぶつかってしまったみたいだった。


「す、すいません」


「どういたしまして。それよりワンちゃんが」


 びっくりしてオリーを強く抱きしめちゃったみたい。


「いけない」


 慌てて地面に降ろすと、少しフラつきながらも頭を降って、私を少し恨めしそうな目で見上げていた。


「可愛いですね。なんていう犬なんですか」


「オリーちゃんよ」


「コリーってこんな小さい子もいるんですね」


「あっ、そうじゃなくて。この子の名前がオリーなの、犬種はパピヨンっていうのよ」


 気づかないうちに落としたハットを男の子が拾ってくれて手渡してくれる。


 お礼を言って先を急ごうとした時、遅れかけているのを急かすようにスマホが鳴る。


「ごめんなさい、行かなくちゃ。ありがとね」


 軽く男の子に会釈をして、私は仲間からやっぱり信用ならなかったなんて言われるかなとか、今度どこかで会ったらちゃんとお礼したいな、と考えながら会場へ向かった。

読んで頂きありがとうございます

なお、本編はこの時ぶつかった少年の目線で進行しますのでご了承下さい

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