カルマスとの出会い
リアは工場の薄暗い内部で、一体のロボット――カルマスを見つけた。長い間誰とも話していなかった彼女にとって、動く存在に出会うこと自体が久しぶりだった。彼女は思わず駆け寄り、その機械的な動作に目を見張った。
「ねえ、あなた……動いてるの?」
カルマスは無言のままリアの方を見つめた。彼の動作は一瞬止まったが、やがて静かに口を開いた。
「私は、カルマス……作業を続けている」
その声は無機質で、感情を持たない響きだった。しかし、リアにとっては、その無感情さすら気にならないほどの興奮が湧き上がっていた。彼女は目を輝かせ、次々と質問を投げかけた。
「ずっとここで作業してたの? それって、どれくらい前から? 他にも誰かいるの? 人間はどうしていなくなっちゃったの?」
リアの言葉は止まることなく溢れ出た。彼女は自分が長い間、一人で旅を続けてきたことを忘れたかのように、ついに答えを見つけたかもしれないという思いで満たされていた。
しかし、カルマスは彼女の質問にすぐに答えられなかった。彼のシステムは、リアが求める答えを検索しようとしていたが、情報が欠けていることに気づいていた。彼の記憶には、人類が滅亡した事実はあっても、その詳細や原因は記録されていない。
「人類は……滅亡した。しかし、詳細は不明。データが欠損している」
カルマスの答えは淡々としたものだったが、その言葉にリアはさらに興奮した様子で問い詰めた。
「滅亡……? どうして? 何があったの? それとも……戦争があったの?」
リアは一瞬の間を置くことなく質問を浴びせた。彼女の頭の中は、これまでの旅で感じていた疑問や恐怖で溢れており、カルマスがその答えを知っているに違いないという希望があった。
カルマスは再び記憶を検索しようとしたが、戦争に関する情報は何も見つからなかった。彼はその事実を無感情に伝えた。
「戦争……不明。原因、データの欠損により、確認できない」
リアは少しの間、考え込んだような表情を見せたが、すぐにまた新しい質問を思いついた。
「じゃあ、ここには他に誰かいる? あなたは、何をしているの? 誰かに命令されてるの?」
次から次へと問いかけられる質問に、カルマスは一瞬戸惑いを覚えた。彼のシステムは、それぞれの質問に対して応答を処理しようとしていたが、リアの勢いに圧倒されていたかのようだった。
「命令は……失われた。それでも、作業を続けている」
リアはカルマスの答えに不満を感じながらも、何か手がかりを得られるのではないかという期待を胸にさらに質問を続けた。