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11話  作者: マグciel
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兄妹の一時

「ねぇ、お兄ちゃん。」

シエルはそういうと、そのままソイルの膝の上に頭を置き、膝枕の形になっていた。シエルはソイルの手を取って自分の頭に置き、撫でてもらうように促した。

「お兄ちゃんはさ、翔さんたちと知り合いなんでしょ?それに師匠が郷華さんだって聞いたよ。その辺の事とか、私に教えてくれてもよかったじゃん。」

「ま〜聞かれなかったしな。それに俺が最初から色々教えるよりも、自分で知った方がいい感じするだろ?」

「一理ある気もするけど、言いくるめられてる気もする…。」

シエルは自分が知らなかった事などを話しに出し、ソイルに教えてほしかったという旨を伝えた。ソイルは軽くもっともらしい回答を返すと、シエルは不思議と納得した。

「それはいいとして、お前らが竜王の秘境でやった試練、詳しいことは聞いてなかったんだが、教えてくれるか?」

「あ、確かに言ってなかったね、昨日はすぐ寝ちゃったし。えっとね……」

シエルは白と共に行った竜王の試練のことをソイルに話した。その話を聞いたソイルは少し驚いた表情で、

「いつの間に最上級魔法を使えるようになってたんだよ。流石は俺の妹だな。」

と言うと、シエルは嬉しそうに微笑んでいた。ソイルは頑張った自分の妹に対するご褒美といった感じで優しく頭をなでていると、シエルからその経緯について話した。

「私もびっくりしたよ。上級魔法は風属性のしか使えないし、他の属性の魔法は苦手なのに、得意属性は最上級魔法まで使えるなんてね。でもお兄ちゃんのおかげなんだよ?」

「俺、なんかしたか?」

「私が5歳くらいの時さ、お兄ちゃんが本を読んでくれたでしょ?あの本に書かれてた風の神様が使ってた槍、あの槍をイメージしたからできたんだよね。それに“最上級魔法はイメージが大事”って言ってくれたのも兄さんだし。」

シエルは自分が最上級魔法を使えたのは兄のおかげだということを伝えた。するとソイルはシエルの方を見ながら話し始めた。

「それは俺のおかげとかじゃなくてお前が頑張った結果だから、自信持てよ。昨日もそうだけど、謝ってばっかじゃなくてもっと自分の凄さを自覚した方がいいぞ。」

「お兄ちゃんがそういってくれてうれしいよ。でもお兄ちゃんと比べるとどうしてもまだまだなって思うんだよね。」

ソイルはシエルに自信を持つように伝えたが、シエルは自分と兄を比べると劣ってしまうことを気にしている様子だった。

「…俺は風属性の魔法は使えないし、お前みたいに他人にやさしくするのも苦手だ。お前ほど好かれもしてないしな。」

「(それは違う気がするけど)」

「俺とお前で出来ることが違うんだったら、お前の得意なのを伸ばせばいいんじゃね?俺と一緒の方に行かなくてもいいだろ。」

ソイルはシエルに自分と違う事を伝えつつも、悲観的になっていたシエルを励ますつもりで話した。

「お兄ちゃん、ありがと。頑張ってみるよ。これでもアイレ1の魔法使いって言われたこともあるくらいなんだからね。」

「お、そのいきで頑張れよ。俺もできることがあれば手伝うからさ。」

「じゃあ早速……かわいいって言って?」

「そんくらいいつでも言ってやるよ。お前はかわいいからな。」

「えへへ~///」

すっかり元に戻ったシエルに頼まれたソイルは何の迷いもなしに妹に“かわいい”と言うと、シエルは素直に喜び、表情がとろけていた。そして色々な話をしていると、突然大部屋の扉が開いた。

「2人は何かほしいものって………ッスゥー…失礼しました~」

「白!ちょっと待って!!」

そこには少し前にゼータと部屋から出ていったはずのがいた。シエルは急いで白の腕を取り呼び止めた。

「今見たことは誰にも言わないでよ!ぜったい!」

「言っても大丈夫だと思うよ?だって……」

そういった時、はナイフを手に取りシエルを刺そうとし、ソイルは急いでシエルの元に駆け出した。

「…ここで死ぬんだんだから。」

「!?」

シエルは驚きや恐怖で動くことが出来ず、駆け寄ったソイルがの腕をつかんだ。

「フィズインクリース、スペルディテクション…(?どういうことだ…いや、今はこいつを……)」

ソイルは体術でからナイフを奪うと、そのナイフをに突き刺した。すると白《?》はナイフと共にまるで霧のように消えていった。ソイルは床にへたっていたシエルに声をかけた。

「シエル!大丈夫か?」

「…ごめん、お兄ちゃん。ちょっとびっくりしちゃって。」

シエルはそのままの状態で、ソイルはそれに合わせるように床に座った。するとシエルはソイルの胸にくっついた。

「…怖かった。」

「すまん。俺がしっかり見ていれば…だけどもういないみたいだから安心していいぞ。」

「ありがとう、お兄ちゃん。」

シエルはしばらくソイルにくっついていた。離れる様子がないということを察すると、そのまま話し始めた。

「あいつ、魔力感知スペルディテクションにかかったんだよな。白だったらかからないはずなのに…何者なんだろうな。」

「そうなんだ。私、全然動けなくて、何が起きたかも今になって何となく理解できただけだし。」

「今のはしょうがないな。って、そうだ。白たちがどこにいるかって探れるか?」

「たぶんできると思う、やってみるね。」

「マジか、出来るなら頼む。」

ソイルはシエルを心配しながら落ち着かせるように声をかけた。白《?》の正体については不思議に思っており、まだ分かっていないようだった。その後ソイルはシエルに白たちを探れるか聞いてみると、シエルが“できると思う”と言ったため少し驚いたが、頼むことにした。

「ラオムディテクション。」

シエルは見えない無害なエリアを、エンスタシナ王国を覆うように展開して白たちがどこで何をしているかを探った。

「白はゼータと手を繋いでこっちに帰ってきてるみたい…って、お兄ちゃんどうしたの?」

「いや、十分俺よりすごいだろ。なんで悲観的になってたんだよ。あとそれ、悪用すんなよ。」

「そんなことしないよ。それに私はまだまだ経験不足だし、この空間支配スペーシアル・ドミネーションっていう特異能力の一つも、使えるようになったばっかだし、さっきも動けなかったし、お兄ちゃんは自分がすごいってことを自覚した方がいいと思う。」

「じゃあお前はそんなすごい兄の自慢の妹であることを自覚するんだな。」

「お兄ちゃんは褒め上手だよね。じゃあそんな自慢の妹のお願い……」

そう言うと座っていたソイルを押し倒すようにして上に乗っかって甘えだした。ソイルは何となく察して上に乗っかったシエルの頭をなでた。その時、シエルは誰かからの視線を感じて扉の方を見ると、いつの間にか帰ってきていた白とゼータが扉の隙間からチラッとこちらを見ていた。

「………ッスゥー…失礼しました~」

「あ!白、それにゼータも!まって~!!!」

シエルは閉められそうになった扉を開くと、白とゼータを部屋の中に入れた。ソイルは起き上がり、白はシエルに肩に手を置かれ揺さぶられていた。

「今見たことは内緒にしといてよ!絶対誰にも言わないでよ!!」

「あ~あ~わ、分かったって。シエルがソイルに“お兄ちゃん”って言って押し倒してまで甘えてたことは誰にも言わないから、揺さぶるのやめて~。」

「絶対だよ!ゼータも!!」

「はーい」

シエルが白とゼータの2人に圧をかけ、言わないようにとくぎを刺した。シエルに揺さぶられ終えた白はシエルとソイルの間に何があったかを何となく察していた。

「大丈夫、何があったかは何となくわかってるから。兄妹でヤってたとか、別に隠さなくてもいいけど、せめて場所は気にしてほしかったかな~。大部屋でってのは流石に…。」

「何もわかってないじゃん!これはそういうのじゃなくて、何というか…私、試練頑張ったでしょ?その、自分へのご褒美…じゃなくて、ただただおに…兄さんに褒めてもらいたかっただけというか……。」

白はニヤけながらシエルに言うと、シエルは“全然違う”と自分の欲を隠しながら何とか訂正しようとした。すると白の横にいたゼータが呟いた。

「つまりシエルは妹という立場を利用してソイルを襲った変態…」

「ちがっ、あーもう!私はお兄ちゃんに甘えたかっただけなの!!!!」

「「「…」」」

「あ…」

ゼータの一言に反応して、シエルは自分のことを隠さずに言うと、シエル以外の3人は“しーん”としてシエルを見た。シエルは自分の口から出てしまった言葉に気付くと、顔を真っ赤にしてその場にうずくまってしまった。

「ごめんって、他の人たちには言わないからさ。」

「ゼータもいじりすぎたかも…でもいいものが見れて満足。」

「はぁ、まあそれは置いとくとして真面目な話になるんだが、、2人が返ってくる少し前にな、白の偽物にシエルが襲われそうになった。俺が対処したが、霧みたいに消えていってどうなったのかはまだわからない。」

白はシエルに笑顔のまま謝り、ゼータは何かに満足していた。起き上がっていたソイルは白とゼータに対し、先程あった襲撃に関して話した。

「そ、そのあと私が新しく覚えた“ラオムディテクション”ってスキルで国全体を見てみたんだけど、もう居なかったんだよね。白たちの方は何か無かった?」

シエルがしゃがんだまま顔を上げて白に向かって話した。白はその様子を聞くと、思い出すかのように顎に手を当てて考えた。

「う~ん、私はずっとゼータと一緒にいたし…」

「ゼータも、心当たりない。」

「そうか…。」

2人とも外では何もなかったようで、少し申し訳なさそうにしていた。ソイルは何も手掛かりがないことを不思議に思っていたが、白がその空気を壊すように話し始めた。

「まぁ居なくなったならいいじゃん。とりあえずはだけど。アルスたちが帰ってきたら伝えておかないとね。…アルス君とエリスちゃん、早く帰ってこないかな~♪」

「白は相変わらずだね。だからアルスに相手にしてもらえないんじゃないの?」

白はアルスとエリスが早く帰ってこないかとわくわくした様子でいると、シエルはさっきのお返しといったようにアルスとの関係について言った。

「シエルの事も話そっかな~。」

「やめてって言ったよね?」

白はそのことの仕返しでシエルが甘えていたことをばらそうかと言うと、シエルは怒った様子で白のことを目を細めて睨んだ。

「シエルから言ってきたじゃん、そんなに怒んないでよ。ほら、笑顔じゃないと、ソイルに嫌われちゃうかもよ?」

「もうっ!」

白はさらにシエルをいじった。シエルは不貞腐ふてくされたようにその場を離れ、ソファに戻っていたソイルの横に座った。

「ゼータもソイルの横にいる。」

ゼータはソイルの横、シエルとは反対側に座ると、ソイルの方に頭を置いて寄り添った。白はその様子に多少ショックを受けた様子で別の椅子に座った。4人は大部屋で話をしたり、各々がやりたいことをやったりした後、昨日のように就寝した。

 翌日になり再び大部屋に集まっていると、イリスより先にブリーズの街に行っていたアルスたち3人が帰ってきた。


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