セクハラをぶっ潰す(下)
果たして、恭子がどんな態度を取るか私は興味津々である。
確か、初めてロリ九条にキモい言葉を投げかけられた時は、ポッポーと今にも鳴き出しそうなほど目を丸くして驚いていた。しかし、それから何度もロリ九条に誘われているうちに、上手く躱す術を覚えたようだった。
しかし、九条もしつこいなあ。
恭子が入部するまで言い続けるつもりだろうか。彼女は、山登りなんぞ興味なさそうだが、見てわからんか。
人間は、ある程度歳を重ねていると、他人がどんな人か推察できるもんだろって思っていたが、九条は我々生徒の属性とかわかってないのだなあ。
いや、でも九条はまだ不惑の年くらいだろうか。それとも知命の年くらいか。私よりはだいぶ若いだろう。
なら、他人の内面なんて理解できないものかもしれん。
ましてや、昭和の男だもの。
若い女の子の意思や趣味を尊重してやろう、なんて気はさらさら無いだろうなあ。
恭子、言ってやれ。
しつこいぞ、このロリ野郎。
いいかげんキモい態度で口説いて来るのはヤメレ。
「ウゼェなあ。山登りなんて興味ねーんだわ!」
気づくと、私が恭子の代わりに、お気持ち表明してしまっていた。
その時になってようやく、九条が私の存在に気づいたが如く、
「お前、今何て言った?」
冷ややかに、そして微かな怒りを込めて言う。
「いいかげん諦メロン! それに、自分の娘みたいな歳の子に、キモいこと言うのは辞めんかい」
「な、なんだって? お前、今日は朝から失礼だぞ! それが教師に言う言葉か!」
「教師なら、余計エロ目線で生徒を見るのは辞めてください」
私の冷静な態度及び言葉に、九条が「くっ」と言って唇を噛み締めた。
勝った。今回は私の超能力を使わずに勝ったぞ!
「ははあ、わかったぞ。花村、お前、俺がいつも森ばかり誘うから頭に来てるんだな。仕方ない、お前も入部していいぞ。お前は中々面白い奴みたいだからな。見た目はブスだが」
ハア? 何言ってんだ、この野郎。
恭子も恭子だ。私と九条の間で困ったような顔をしつつ、笑いを堪えているような態度を取っているんじゃねーわ。
恭子は確かにクラスのアイドルポジであるが、対象外の異性にまで愛想良く振る舞うことが出来るからだった、ということが今わかった。
「怒髪天を衝くぅー!」
次の瞬間、九条は廊下の端まで吹っ飛んで行って、壁に思い切り体を打ちつけて倒れていた。