逆ギレする父
父は「あーあ」と、わざとらしいため息をついて見せ、「ミキ、起きなさい」と猫撫で声で言って、私の体を布団の上から揺さぶった。
「やめてよ、寝てんのに。ミキは明日も学校よ」
母が父にきつく言ったが、父はお構いなしに私を揺さぶり続ける。
仕方ない。
私は今目覚めた如く、「なに?」と不機嫌そうに答えた。
「ただいま。お土産に寿司買うてきたで。一緒に食べよか」
父は何事もなかったように、にこにこしている。
こういう時、子供はどうすればいいのか? 選択肢は三つ。
⑴「うん! 食べる。おかあちゃんも一緒に食べよ」と嬉しそうに言ってから、「おとうちゃん、ありがとう」と言う。
⑵「今、何時や思てんねん。お腹いっぱいや、要らん」と言って、再び布団に潜る。
⑶その他
さあ、どれだ?
昔の私なら、⑴を選択しただろう。
しかし、今の私は両親より歳上なのである。ここは、しっかりと父を叱らなくてはならない。つまり選んだのは、⑶のその他である。
私はしぶしぶという態で起き上がり、厳かに言ってやる。
「今、何時や思てんねんな。子供は寝かさなアカンやろ。寿司は、ふたりで仲良う食べ」
私は極めて冷静に言った。
「おとうちゃん、アンタなぁ、浮気ばっかりしてたらアカンで。おかあちゃんのこと、もっと大事にせんと。捨てられても知らんで」
「な、なんや! 急にどないした!」
「浮気される身にもなってみ? 嫌なもんやで」
「知らんがな。それを言うなら、浮気する身にもなってみ? 毎日家がつまらんのじゃ! 景気悪い顔しくさって」
逆ギレかよ。かわいそうに、母は黙ってうなだれている。父は私のほうを睨みつけて言った。
「子供のくせに親に説教するんか? 生意気な。せっかく土産まで買うてきてやったのに」
言っているうちにどんどん興奮してきたのか、
「ドタマの悪い不出来な娘を育てなあかんオレの身にもなってみろ」
そんな事まで言い放つ。
私はブチ切れた。
「なんやて!」
仕方ない。お仕置きするか。多少の怪我をさせ、しばらく入院でもしてもらおうか。
ハンドガンポーズを取ろうとした瞬間、
「怒髪天を突く!」
母の叫び声が聞こえてくる。




