ふとした疑問
「ただいまぁー」
「ミキ、どこ行ってたん?」
母に聞かれ、「う? まぁね」とごまかす。
居間にオレンジ色の掃除機が置かれ、母はぞうきんを手にしている。私が破壊して飛び散った土壁を片付けていたらしい。
「懐かしいなぁ。この掃除機の派手な色、モダンなデザイン。あ、そうだ。おかあちゃん、ごめんなさい。壁壊してしまって」
「え? 何て?」
そうか。やはり母は、私がやったということに気づいていない。
「ううん、なんでもない。あれ? かおりちゃんは?」
「やっぱりお医者さん行ってみる、って帰ったよ。じんましん、もう引いてたけどな」
「そう」
明日、タノセンは学校に来るだろうか? 怪我の程度はわからないが、死んではいないだろう。
「どうやったら奴を反省させることができるんだろう」
「なに? 反省させるって?」
「イヤ、こちらの話」
「さっきからナニ変なことをぶつぶつ言うてんの。それにしても、壁どないしよう。今日のところは、とりあえず紙貼っとこか」
母は、押し入れから大きな紙箱を出して来て、その中に溜め込んであるデパートの包装紙をいくつか取り出し眺めている。
この世界の母も、私の住む世界の母と同じことをしていて、少しだけ安堵した。
明日、タノセンに真実を教えてやるべきか。ここにいる私は、違う世界の住人であることを。しかし、おそらく信じないだろう。それに、また次元移動が起きたとき、次に来る『私』に迷惑をかけてしまう。違う次元の住人である『私』も、チート能力を持っているかわからないし。
私は、今後も行く先々で暴れ回りそうな予感があるが、そういう行為は『私's』を困らせることにならないか心配になってきた。
そして、この世界に住んでいた本来の私は、今どこにいるのだろう。
そこまで考えて、ふと疑問が生じた。
パラレルワールドを旅するというのは、まあいい。いや、おかしなことではあるけれど、この際その前提は無視しないと話が進まない。ではなぜ、同じ年頃の『私』にならないのだろうか。
意識だけが旅をしているとして、なぜ、過去に戻るのか?
令和まで生き延びた私が、昭和の悪しき慣習をぶっ潰すためになのか? 単に復讐するためになのか?
いきなり、十六歳の高校生になり、次は十二歳の小学生。
ということは、次はまさか『ょうじょ』⁉︎




