暴力教師をぶっ潰す(下)
「よし! 行くぞー」
ガッツポーズをとって立ち上がった私は、家の壁に穴が開いたのを見て、「え? ええ!」とパニクっている母と芳を残して意気揚々と家を出た。
これもまた積年の恨みだ。
恨みはらさでおくべきか!
私は家から学校まで徒歩十三分の距離をひた走る。高校生の頃より体が軽いなあ。若いから? それとも異能力のおかげ?
夕方の校庭では、少数ではあるが子供たちがまだ遊んでいた。
「そっか。昔は学童保育が、そんなに充実してなかったもんなぁ。私はお母さんが家でいたから、鍵っ子じゃなかったけど」
鍵っ子て。ガチの死語すぎる。
私の頭の中は、懐かしい言葉でいっぱいだ。人生をもう一度繰り返している私は、見た目は小学生だが、中身はそれなりに経験値のあるBBAである。見た目は子供、頭脳は大人ってヤツ。
「そうだ! 繰り返している世界を、『死語の世界』って名付けよう。私って頭いい〜」
思わず大きな声を出してしまった。
「は? 頭いいって、お前みたいなバカが何言ってんの?」
嘲るような声に振り返ると、クラスメートの松本が立っていた。こいつはガチで頭いい。たしか東大に進学したとかなんとか。他人を見下すところがあって、大嫌いだったが特に恨みはないし、こんな雑魚キャラに拘っている暇はない。
「うっせえ! 独り言に反応すんなよ」
私はそう叫んで、松本に向かって人差し指を親指で弾いた。
「つん」
松本は、後方にある小学校の裏山までふっ飛んで行った。
「爪の先で充分」
聞こえていないだろうけど、松本に捨てゼリフを残して、私は職員室を目指した。
職員室は一階、校門からほど近い場所だったはず。
私は廊下に上がる前に、靴を脱いだ。廊下の掃除は、子供たちがやっている。泥や砂を落としたら気の毒だ。
ペタペタ、スリッパの音がして、私は顔を上げた。
なんと! 現れたのは奴だった。
「タノセン!」
「あれ、花村。忘れ物か?」
問答無用。
「ぱん」
人差し指をハンドガンに見立てて、例のポーズ!
廊下の壁に大きな穴が開き、飾られている額縁が落ちてきて、タノセンの頭を直撃する。
私の指はタノセンの体ではなく、廊下の壁に照準を当てていた。おそらく、直接狙うと、奴の体に穴が開いて悲惨なことになるから、無意識のうちに外したのであろう。
大きな音を立てて、その場に倒れたタノセンは失神している。私は振り返ることもなく、人を呼ぶこともなく、その場をあとにした。
タノセンがどうなろうと知ったこっちゃないし、奴もまさか私にやられたとは思わないだろう。そう、ただの突発的事故である。
そんなことを考えながら歩く帰り道、私はモヤモヤしたものを抱えていた。
「突発的事故じゃダメなんだよなー。思い知らせてやらないと」
事故で怪我した(と思っているであろう)のでは、自分の行いを反省しないだろう。




