今度は小学生!
それにしても、毎回どこに飛ばされるかわからないとは、とても不自由である。
今いる場所は、実家の近所のようだが、今回の私は何歳だろうか?
更に、もうひとつ。気がかりなことが増えた。
それは。
今回の私は、『私』なのだろうか? ということ。
時間旅行していると思っていたが、次元移動しているみたいなのだ。
そう、私はパラレルワールドの旅人……。
って、カッコつけてる場合じゃねーや。
私がさっきまでいたのは異次元の現代だ。
本来いるべき世界に私は戻っていなかったんだから、あの世界の『私』はどこかに押し出されてしまったんじゃなかろうか? ホンモノのママちゃまは今、どこで、どうしているのだろう……。
今更ではあるが、パラレルワールド物の小説でも読んでおけばよかった。参考になるかもしれないから。
「まずいなあ、この事態は」
「なにがまずいん?」
後ろから肩を叩かれ、びっくりして振り返る。
私の背後でニコニコしているのは、実家の母だった。
「あっ、おかあちゃん!」
「おかえり、帰ってくんの遅かったな。かおりちゃん、ずっと待ってくれてるで」
「かおりちゃん?」
「うん、滝沢芳ちゃん」
「たきざわかおり⁉︎」
「ナニびっくりしてんねんな」
母が私の反応に笑う。
懐かしい、若い頃の母。意外と美人だ。母のことを、美人だとか可愛いだとか思ったことなかったけれど。今の私よりうんと若い母を見るのは感慨深い。
うんと若い……。
「あー! おかあちゃん、今って何年?」
「急にナニ言いだすん? 今は昭和五十年やないの」
「昭和五十年……」
私は十二歳、小学六年か。その頃も今も、私の人生で滝沢芳なんて人と関わりを持ったことはなかった。彼女の存在を知ったのは、初めてタイムスリップした時だ。ということは、最初から私は次元移動していたことになる。
「あちゃー」
「さっきからナンやねんな。早よ帰ろ」
母に急かされ、懐かしい実家に帰った。この実家は、もうない。
父が亡くなったあと、年老いた母は施設に入った。その際、実家は取り壊されたのだ。
しかし、次元が違っても、実家は同じ建物だし街並みも同じとは不思議である。
実家の居間の丸卓の前で、可愛い女の子が正座してカルピスを飲んでいる。子供時代の滝沢芳であろうか。
「ミキちゃん、どこ行ってたん?」
説明できない。
「ミキちゃんの部屋で遊ぼうよ!」
「あ、う。うん」
小学生時代の私って、何をして遊んでいたのか。思い出せねー!




