ここはどこ!
「は? 何が?」
「この猫脚テーブル!」
「うん、それが?」
「しかも羽毛布団!」
「え?」
「てゆーか。ここはどこ? いつのまに家をリフォームしたんだ!」
「リフォーム? どっこも直してませんが。つか。『てゆーか』ってなんだよ」
「平成レトロ女子高生じゃ!」
驚愕した私は、部屋を隅々まで眺めるためにグルグル体を回転させてしまった結果、目が回ってバタンと倒れた。
「さっきからどないしてん」
康二が私を助け起こそうと手を伸ばしてきたので、それに縋るようにして起き上がる。
「サンキュ、康二」
私は改めて息子の顔を見て言った。
「あんた、どっかお直しした? いつもよりイケメン風味なんやけど」
康二は吹き出した。
「いまさら何言うてんねんな。前からイケメンやん。お直しってなんだよ」
「ほら、プチ整形。ヒアルロン酸入れて、目ぇ二重にしたり鼻高くしたり」
「アホなこと言いなさんな。それよりまだ具合悪いなら、晩飯、オレが作ろか? それか、おとんに何か買ってきてもらおか?」
「お父さん?」
「うん。まだ会社やろ。帰りにおかんの好きなもの買ってきてもらお」
「いやいやいや。あんた何言うてんねん。お父さんは去年亡くなったやろ」
「は? 大丈夫かいな。そんなにおとんに死んでもらいたいんか? おとんは全然元気やないか」
「お父さんは去年、コロナでコロっと亡くなったやんか!」
「……。ちょ待てや、コロナでコロっとて。不謹慎すぎるやろ! それに、おとんはコロナにも罹ったことないし、ピンピンしてるやんけ!」
その時である。
「ただいま」という男性の声と、バタンとドアを閉める音がした。
しばらくして、「あー疲れた、ただいま。ママちゃまの具合はどう?」
と言いながら、私たちの目の前に中年男性が現れた。
「誰!」
私は知らない男性の出現に、驚きの声を上げる。
「おとん、おかえり。それがなぁ」
康二は何事もなかったように、男性に話しかけた。
おとん、ですと。
目の前にいる男性は、おとんと呼ぶよりパパとかお父さまと呼んだほうが良さげなイケおじだ。
「おかん、相当具合が悪いみたいやで。病院連れて行ったほうがいいかも」
「えっ! ママちゃま大丈夫?」
イケおじが驚いた様子で、私の額に手を当ててくる。ママちゃまだとぉ! 誰だ、それ。私ってこと?
「熱はないな」
「さっきからオレのことをイケメンになっただの、おとんは去年死んだだの、意味不明なことばかり言うてるんだが」
康二は明るく言うが、その言い方にはどこか不安げなニュアンスが込められていた。




