私にとって敵とはなんだろう
「残念ながら、女の子の地位に関して、私は特に主義主張はないんで」
私はそう答えて、滝沢の横をすり抜けて階段を上ろうとした。
「やれやれ。だからダメなのよ、女は」
滝沢の声がする。
は?
私は立ち止まった。
「少し方向性が違うと、一緒に頑張ろうっていうことが出来ないの」
へ? 方向性の違いで一緒に活動しない、ということに性差は関係ないのでは?
「男女平等のためには、多少の違いには目をつぶって一致団結しなければいけないのに、なんでそういう単純なことができないんだろう。やっぱ女はダメね」
一体、オメーは何が言いたいんだ?
女は虐げられているからなんとかしないと、と思ってるんじゃねえの?
なんで、女をdisる?
「男たちの横暴に対して、正々堂々と意見を述べたり行動したりしないのは、はっきり言って裏切り者よ」
裏切り者……。
さっき私に無礼を働いた教師、九条に対して何も言わない、むしろ笑いを堪えていた恭子の態度にイラっとしたのはそういうことか。
もし、私が恭子だったとしたら、級友を侮辱するような奴を見過ごすことはない。
「失礼じゃないですか?」くらいは言うだろうし、少なくともブス発言に笑ったりはしないだろう……。
滝沢の言によるなら、恭子は裏切り者なのかもしれない。
「男に対して、はっきり闘う姿勢を見せなさいよ」
私は目を剥いた。
闘う?
これはまた、斜め上の発想だ。
私は個別案件に対処するだけだ。
無礼な連中をぶっ潰す。
それには性別も年齢も関係ねえ。
「ならば、お前もお仕置きだな」
怒髪天を突くぅー!
私の髪は、滝沢の全身をぐるぐる巻きにすると、一階まで転がしてやった。怪我をしないようにソフトランディングである。
「やーめーてー! 助けてぇ!」
滝沢の悲鳴を背中で聞きながら、私は何事もなかったように階段を上がって行った。




