1 魔法
西暦2032年。特に、未来かって行ったら、そんなこともなく、10年前になんとなく期待していたものとは程遠く、今でも市役所や、国は紙を使っている。
「暇だなー」
いまでは、YouTubeという物自体はあるが、使っている人はほぼ皆無に近かった。
まあ、他にいくらでも、暇つぶしはあるんだけど。いや、それゆえ、YouTubeというものが使われなくなったのか。
「そればっかりだよな。怜は。いつも言ってる」
「なんだよ、アカリ。いつもいつも、冷やかしに来やがって、お前はこおりタイプなのか?」
「ポケモンかよ」
「面白いことってさ、待つものじゃない! 取りに行くものだ! ってよくいうじゃん?」
「まあ、言いそうな言葉ではあるね」
「ならさ、炎でも出してみろよ。面白いことをしなさい」
「結局他人任せだし⁉」
こんな感じで、くだらない会話をしている。
くだらなくない会話なんてあるのだろうか? いや、ない!
少なくとも、好奇心のそそるような話題で盛り上がるのって難しいよな。
「あ、そういや今日も昼飯作ってきたんだよ」
「お、料理本当に好きだね」
そう言って俺は今日の朝、このときのためにわざわざ作ってきたチョコレートをアカリにあげる。
といっても、飯をあげられる彼女のようなものはいないが。
「今日は
「そうだな……アドバイスがあると、ハートのかたちじゃないな」
「なんだよハートって」
「どっちかって言うと、これは玉だな」
「ゴールデン?」
「いやいや、
「何いってんだよ。なんで、高級レストランでスイーツに皿までチョコレートでなぜ盛り付けをするか? つまり見た目が大切ってことなんだよ。なぜ、俺たちは女子に一目惚れというものをするか? それは、その人に性欲を感じているからなんだ。つまり、愛は性欲なんだよ!」
「極論っぽいけど、まあ、少なくとも俺達にとってはな。否定したら、むしろそれを事実と認めたくないみたいに見られそうだな」
「おうよ」
「まあ、別に悪いことじゃないけどな。そのおかげで、俺たちは生きているわけだし、なんで逆に俺たちはそういったことをタブー視するんだろうな}
「だな。お前、注目されてるぞ? よかったな」
「いやいや、俺じゃなくてお前でしょ?」
きっとこれはあれだ、むしろ人気になりすぎて、俺が通るときに他の人がわざわざ間を開けてくれるやつだ……言ってて悲しくなるな。
「それより、チョコ食えよ」
「お、そうだな」
その瞬間、アカリは気づく。レイが笑っている。ニヤニヤしている。面白そうなことを企んでいる顔だ。
暇とか言っているなら、自分で探しにいけ、か。
ただの迷惑じゃん。
口から火が出る。それほど辛かった。
バレンタインのときは、心が痛いほうの、辛いだが、今回は違う。ただただ辛い
「からい! てっめぇ……やってくれたな」
「いや、……? お前、今、火吹かなかった?」
こおりタイプじゃない、ほのおタイプじゃん。
「え? 今の演出じゃなくて、本当に口から炎が出てるの?」
俺の後ろの壁が焦げている。いや、この学校は意外ときれいな学校だ。トイレだって新品みたいだし、床で寝てもいいくらい。いや、よくはないのだが、この状況のほうがもっと良くない。
「ちょっと、もう一回炎出してみろよ」
「いやいや、そんなマッチ感覚で炎なんてでないって」
そう言って、人差し指を指をふる。
ゆっくり、左右に。
「……でたな」
「でちゃった」
しばらくの沈黙。
「熱くないの?」
「あつっ! いや、くないな。別に大丈夫だ」
またしてもしばらくの沈黙。
どちらも、呆然としていて、会話を始める気になんてなれない。
そんな時、空から雨が降ってくる。
「ちょっと何してんの?」
「リン……これはだな……」
「いや、ドラゴンがでてきて……」
「いやいや、なんか指燃えてたし、焦げてるし、何してたの?」
「しんぱいしてくれてもですね……」
「自業自得でしょ?」
「信用度ゼロだなお前」
俺は笑いながら、そう言うが、心は全然笑えない。
後ちょっとで死ぬかもしれないところだったのだから。
後ちょっとで、この学校がすべて燃えるところだった。
「レイも同じでしょ?」
「すいません!」
果たしてどうしたものか?
しばらくすると、リンは、先生に言われたくなかったら「早くきれいにすることね」といって立ち去る。いや、立ち去ってくれたとでも言うべきか、リンの優しさには感謝する。
口では、厳し目の言葉を言ってくるが、無理矢理止めようとすることはなく、好奇心のままに見逃してくれる。
今日の水を持ってきてくれたことも、俺たちにまで被せなくて良いんじゃない? とは思いつつも、感謝するべきことだ。
「なあ、俺たちのこれってさ、貴重なんじゃない?」
壁を雑巾で水拭きしながらその言葉を口にする。
「だろうな」
「ならさ、お金稼ごうぜ」
「どういう風の吹き回し? だが、悪くない