その5 最後に勝つのは納豆戦士!!明日も三食納豆だ!!
「マスター、止めるなよ。魔物どもは俺がせん滅する」
俺は片手を上げて空中に魔法円を描く。
戦闘用の納豆、”卵黄納豆”を召喚するつもりだった。
これは破破壊力重視の納豆で、納豆の上に卵黄の醤油漬け(卵の黄身の上にだし醤油をかけて冷蔵庫で一時間置いた物)を乗せてさらにニンニク醤油をかけた食べ物だ。
「フン。ずいぶん言うようになったな、キジョ―。お前の納豆パワー、見せてもらおうか」
師匠は師匠で戦闘用の納豆、”たくわん納豆”を召喚していた。
納豆にみじん切りにしたタクワン漬けと柚子胡椒を和えた逸品だ。
食べすぎると胃が痛くなるから気をうけてくれ。
「行くぜ、納豆!!」
「納豆よ、我に力を!!」
俺と師匠は納豆を食べてからジャイアントスパイダーに襲いかかった。
化け物どもは見た目からは想像できないほどの俊敏な動作で移動した。そして口から粘着質の糸を吐いて俺たちの動きを封じ込めようとする。
だが!!
「納豆バリア!!」
納豆の糸が俺たちを守る。蜘蛛の糸は納豆の糸によって全て溶かされ、納豆の糸を浴びた化け物たちはトベトになってしまった。
「これは殺された人々のお返しだ!ひきわり納豆パンチ!!」
俺は納豆を食する事によって千倍に強化されたパンチをジャイアントスパイダーに向って放つ。
化け物どもの肉体はひきわり納豆のようにネバネバな無数のパンチが当たると爆散した。
数分後、十体以上いたジャイアントスパイダーたちは全滅、俺たちは無傷のまま勝利の余韻に浸っていた。
「上手いな、納豆餅は」
師匠はお正月の定番メニュー納豆餅を食べていた。
「ハッ!納豆を食べていないヤツと食べているヤツじゃ最初から勝負になんかならないんだよ!」
俺はキュウリのたたきに納豆を混ぜて食べていた。
野菜と発酵食品が同時に摂取できるご飯のおかずにもお酒のおつまみにもなる逸品だ。
こいつらだって納豆を食べていればもう少しまともな勝負になっていたかもしれない。
「こ、これは!我が軍団が壊滅しているではないか!」
その時、今までのジャイアントスパイダーたちよりもさらに大きなジャイアントスパイダーが街の中心部からやってくる。
そいつは建物の廃材を糸でグルグル巻きにして持ち歩いていた。
「あれは…デズモンド!?」
デズモンドは重傷を負った状態で磔にされていた。
「逃げろ、キジョ―。こいつは他の雑魚どもとは比べものにはならない…」
デズモンドは俺の姿を見ると苦悶の表情で訴える。
「おい、パンツの兄ちゃんとおっさん。この貧弱な坊やを返して欲しければこの場で自害しな」
「でかいのは態度と図体だけか、独活の大木。お前こそ俺と師匠の納豆パワーを舐めていないか?」
ジャイアントスパイダーの親分はデズモンドが括りつけられている廃材を投げてきた。
「ぎゃはははっ!返して欲しければ返してやるぜ!ただしテメーの命はもらうぜ、白ブリーフの兄ちゃんよお!」
廃材を楯にして、本体は飛び蹴りを仕掛けてくる。
「納豆バリア―!」
俺はデズモンドと自分の身体を小粒納豆で覆い尽くし、化け物の鳶蹴りを防いだ。
化け物の顔が恐怖で凍りつく。
「ま、待ってくれ。俺が悪かった、降参だ。これからは心を入れ替えて…」
「どこまでも世の中を舐めたヤツだ。そんなヤツにはお仕置きが必要だな」
ぐぐぐっ!俺は全身に大粒納豆をまとわりつかせ筋力を極限まで強化した。
ただでさえも俺は普段から納豆を食べて強化されているのでその効果は計り知れない。
「食らえ、大粒納豆パンチ!!」
がんっ!!俺の渾身のストレートがジャイアントスパイダーに当たった。
ジャイアントスパイダーの身体は防壁にぶつかり、ぐちゃぐちゃに砕けてしまった。
それまで隠れていた人々が俺と師匠の勝利を称えようとやって来る。
だが俺は息も絶え絶えとなったデズモンドの下に向った。
「俺を笑いにきたのか、キジョ―。だが俺はもうすぐ死ぬ…。残念だったな」
「違えよ、デズモンド。俺はお前に謝りたかったんだ。お前はタダのカッコつけ野郎かと思っていたが本物の勇者だったんだな」
俺はボロボロになったデズモンドを見ながら言う。
他の連中は逃げたが、コイツはたった一人で魔物どもと戦ったんだ。馬鹿野郎が…。
「キジョ―、俺はお前が恐かった。同じ転生者ならもしかして俺と同じ時代に生まれていて俺の前世の事を、いじめられっ子で駄目駄目だった事を知っているんじゃないかと思って…ごふっ!」
デズモンドが咳込んで吐血したので俺は助けようとしたが本人に止められた。
「そういう時はやはり納豆だ。キジョ―、デズモンドに納豆入りプデチゲ風ラーメンを作るぞ」
「流石マスターだぜ!よし、デズモンド。ちょっと待ってろよ!」
俺と師匠は急いで材料を用意する。
「いや、俺もうすぐ死ぬんだけど」
デズモンドは無視して俺たちは”納豆入りプデチゲ風ラーメン”を作った。
「まず、インスタントラーメンを用意する。次は白菜キムチ、納豆、ナメコ、ソーセージだ。豆もしやしなんかもあるといいぞ」
「はい。用意しました、マスター」
師匠は豆もやしを洗った後、根っこを包丁で切っていた。俺は乾燥めんを指で砕く。
次に水600mlくらいを小鍋に入れて沸騰させる。んでラーメンのスープを入れてから豆もやしを入れてくれ。豆もやしの次はナメコとソーセージと白菜キムチ。
豆もやしに火が通ったら砕いた麺を入れる。麺が茹ったら納豆を投入、さらに味噌とコチュジャンを入れて全体的に馴染んできたら最後に溶き卵を投入して出来上がりだ。
「はふはふ。流石はマスターだぜ。今年の冬はコレで決まりだな」
「おい、デズモンドにも食わせてやれ」
「いや、俺。もうすぐ死ぬし…」
確かにデズモンドの顔は土色になっている。だが俺は無理矢理デズモンドに食べさせた。
「これは…!!美味い!!タダのインスタントラーメンが滋養溢れる鍋料理になるなんて…納豆は最高だ!」
デズモンドは自力で起き上がれるようになるまで回復した。
「デズモンド。これから俺と師匠は納豆団を作り、本格的に魔物たちと戦うつもりだ。ついて来てくれるか?」
俺はデズモンドに手を伸ばす。デズモンドは涙を流しながら俺の手を強く握った。
「共に戦おう、友よ。この納豆のネバネバの糸のように俺たちの絆もまた永遠に不滅だ」
かくして俺とデズモンドと師匠は果てしなき魔物たちとの戦いに身を投じる事となる。
みんなも納豆と俺たちを応援してくれよな!!




